ホンダに続きカワサキも! 国産メーカーが旧車の純正部品を再販する理由とは?

近年、国内のバイク市場ではホンダ「CB750」シリーズやカワサキ「Z1」などの往年の名車が高い人気を誇っています。しかし、そうした古いモデルを所有するにあたり不安になるのが、補修パーツの調達です。

末長く旧型車を乗り続けて欲しいというホンダの想い

 旧いバイクに乗り続けるためには、補修のためのパーツ入手が絶対条件です。部品が無くなってしまえば、最悪の場合には走行することができなくなることもあり、思い入れのある愛車も手放すか、放置するしかありません。そんな残念なことにならないよう、昨今、国産バイクメーカーから旧型機種の部品再販が相次いて発表されています。

ホンダは、「CB750F」用一部純正パーツ再販を明らかにした

 2017年7月に「CB750FOUR」や「NSR250R」の一部純正部品の再生産を始めたホンダは、2019年2月25日に東京青山の本社で報道向け発表会を開催。新たに「CB750F」用のパーツ再販を明らかにしました。

 今回の部品再販モデルの追加に関して、ホンダの日本本部 部品課 国内業務課の麻生真二課長は「お客様に対して恩返ししたい」ことがその理由と語りますが、現状、「CB750F」の純正部品は59%が絶版となっています。

 そのため、この取り組みでは「走るために必要」「商品性が高い」「市販品で代替がない」「問い合わせが多い」を選定基準に検討した結果、再生産が可能なパーツ23点が選ばれました。

CB750F用エンジンパーツも多数再販される

 また、ホンダの日本本部 部品課 国内業務課の大久保尚紀主任は「旧型車にも永く乗っていただくことでお客様へ二輪車に乗る喜びを提供し、二輪市場を活性化させたい」とその胸中を語ります。

 生産設備・金型の老朽化、生産ロットの減少などにより、すべての部品を永続的に販売することはできませんが、「車両維持が困難」「社外品パーツが高価で品質にも不安がある」という声を受け、実行に移したホンダの姿勢は、旧いモデルを所有するユーザーにとっては賞賛に値するものといえるでしょう。

ユーザーからの要望に応え、カワサキも「Z1/Z2」用パーツを再販

 ホンダの報道向け発表会から4日後の2019年3月1日、同じくカワサキも同社の人気旧車「900 super4」(以下:Z1)および、「750RS」(以下:Z2)のシリンダーヘッドを再販すると発表しました。

 世界累計販売台数10万台以上(Z2は2万台以上)を記録するZ1およびZ2は、発売から約半世紀が経った現在でも多くのユーザーに愛される名車として知られています。

 今回のシリンダーヘッド再販について、川崎重工の広報担当に伺ったところ以下のように回答します。
 

世界中で大ヒットを記録したカワサキ「Z1」

「以前よりユーザー様からZ1/Z2のパーツ再販を望む声を頂いておりましたが、協議を重ねた結果、シリンダーヘッドの再販に至りました。問い合わせ頂いたユーザー数は公表しておりませんが、初回生産個数は1000個、注文の状況に応じて増産を検討しています。

 今回再生産するシリンダーヘッドは、当時の図面に規定された仕様を、現代の製造技術・製造法により実現するというコンセプトに基づいて新たに開発しています。また、初期型のウィークポイントである排気管取り付け用のスタッドボルト寸法を後期型と同じM8としてあります。

 また、大変申し訳ございませんが、カワサキプラザネットワークおよびカワサキ正規取扱店でのシリンダーヘッドの組替えはいたしかねますが、シリンダーヘッド単品の保証はいたします」

※ ※ ※

 広報部の話にもあるように、シリンダーヘッドが再販されるもののカワサキ正規取扱店での作業は不可とされていますが、その理由についてZ1/Z2を取り扱う専門店に伺ったところ「販売終了から50年近く経過するため、車両コンディションに個体差があるのが一番の理由では」といいます。

 しかし、ホンダ同様、ユーザーの目線に立って企画されたカワサキの取り組みは、旧い車両を長年持ち続けるユーザーにとってやはり嬉しいものです。

 ホンダ・カワサキに続き、他の国産メーカーがどのような動きを見せるのか期待が高まります。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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