世界GPへの挑戦から誕生したホンダ・アナザーストーリー! VFR~RC30にウットリ!!

ホンダを代表する歴代の“CB”シリーズが勢揃いし、その歴史と伝統に感服するばかりですが、その一方で筆者は“VF”にも熱視線を送らずにはいられません。

V4の市販モデルは意外にもクルーザータイプが最初だった

 ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)内のホンダコレクションホールには、歴代のレーシングマシンもずらり勢揃いしています。なかでも異彩を放っているのが「NR500(0X)」です。

NR500(0X)

 1967年シーズンをもってロードレース世界選手権(WGP)から撤退していたホンダでしたが、10年以上が経った1979年に参戦復帰を果たします。当時は2ストローク4気筒が主流でしたが、ニューマシン「NR500(0X)」の独創的なアルミモノコックフレームに積まれていたのは4ストロークV型4気筒エンジン。さらに前輪16インチの組立式コムスターホイール、ドライブスプロケット同軸マウントのスイングアームなど、ホンダの技術が集大成したものでした。

 ただし、WGPでは輝かしい結果を残せず、1982年には軽量コンパクトで高出力な2ストローク3気筒エンジンを積んだ「NS500」をホンダは投入。主力マシンの座を譲りますが、84年にはV型4気筒の「NSR500」がデビュー。2ストロークではあるものの、ホンダV4の技術は着実に受け継がれていったのです。

1984年 V型4気筒エンジンが搭載された「NSR500」

 市販車でのV4エンジンの歴史は、そんなレーシングシーンとはイメージのかけ離れたクルーザーモデルから始まっているのも、じつに興味深いところです。“VF750”シリーズで、国内向けには1982年4月に「VF750セイバー」「VF750マグナ」が発売されます。Vバンク角を90度とすることで、一次振動を理論上ゼロにし、オートバイでは油圧式クラッチを世界初採用するなど高級志向でした。

 V型は並列エンジンに比べ幅が狭く、より深く車体を寝かせられますが、前後長が長く、フロント荷重が得難いところがあるため、北米市場を視野に入れたアメリカンタイプが先行して開発されたのだと考えられます。

1982年国内で発売された「VF750セイバー」

 並列エンジンより製造コストもかかるV型エンジンですが、同年12月にはロードスポーツモデルの「VF750F」や「VF400F」もリリース。ナナハンはレーサーと同じ構造の角型断面フレームや世界初のバックトルクリミッター機構を採用するなど、サーキットからフィードバックされた技術的が惜しみなく投入されていました。デイトナ200マイルなどで勝利し、その実力を証明。1982年には「RS1000RW」のホモロゲーションモデル「VF1000R」が登場しています。

いまなお鮮明に記憶に残る「RC30」と「RC45」の衝撃!!

 レーサーレプリカ全盛期の真っ只中、1987年に登場した「VFR750R/RC30)」は、その頃を知る人にとって強烈な記憶となって今も印象に残っているでしょう。

1987年に発売された「RC30」

 極太の異形5角形断面材を用いたアルミツインチューブ・バックボーンフレームに、チタン合金製のコンロッドやクロームモリブデン浸炭鋼製のカムシャフトを採用し、カムシャフトを歯車で駆動するカムギアトレインのV4エンジンを搭載。繊維強化プラスチック(FRP)製のフルカウルに身を包み、アルミ製の燃料タンクやプロアーム(片持ち式スイングアーム)が見るからにレーシーで、正真正銘のワークスレプリカです。新車価格148万円は、当時にしてはかなりインパクトがありました。

 1994年には500台限定の「RVF/RC45」が200万円のプラスで発売されます。カムギアトレインはエンジン中央から右端に配置変更され、吸気系は電子制御の燃料噴射装置(PGM-FI)へ進化。鈴鹿8耐など世界耐久ロードレース選手権シリーズで活躍するワークスマシン「RVF750」の技術が随所に見られ、97年にはスーパーバイク世界選手権(WSB)でもタイトルを獲得しています。

 ホンダの由緒正しきもうひとつの血統を、ホンダコレクションホールでは見ることができ、CBシリーズ同様に興奮せずにはいられません。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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