女子高生とハーレーを題材にした映画『セブンティーンモータース』 作品を引き立てるカスタム・ハーレーとは
17歳の女子高生とハーレーというミスマッチな題材をテーマにした青春映画『セブンティーンモータース』の無料上映イベントが2019年6月2日に群馬県前橋市で開催されます。劇中に登場するカスタム・ハーレーはどのような基準で選ばたのでしょうか。
女子高生とハーレーの青春ストーリーに華を添えるハーレーダビッドソン・カスタム
ある女子高生が父親のガレージで見つけたボロボロのハーレーを修理することを通して成長する姿を描く青春ストーリー。そんな意外な組み合わせが題材となった映画『セブンティーンモータース』ですが、主演した「アップアップガールズ(仮)」の新井愛瞳さんと並び、劇中で欠かせない存在となっているのが彼女の手によって再生されたハーレー・ダビッドソンのカスタムです。

車両を製作したのは映画の舞台となった群馬県に店舗を構える「ジェーナスマインドカスタムサイクルズ」の福田知行さんですが、実際にこのカスタムを手がけたのは25年前といいます。
まだプロショップとして店をスタートする以前、家業の縫製工場に勤めていた時代、ガレージでコツコツと組み上げたものとのことですが、長らくショップの片隅にあったハーレーを再生し、今回の作品に登場させるに至ったそうです。
今回、ジェーナスマインドのカスタムバイクが使用された経緯について、福田さんは以下のように話します。
「監督の伊藤(拓也)さんがウチの店に来た時、登場するハーレーの相談を受けたんです。そこでスマートフォンの中に入っている写真を見せたんですけど、『コレがいい』ということになって。

この一台は自分が素人だった時に自分で乗るためのバイクとして製作したカスタムで、だいたい13年くらいの間、店の片隅に放置していたんですけど、そこも監督さんのイメージに合ったみたいです。『13年間放置されたボロボロのハーレーを女子高生が再生していく』というストーリーのとおり、このカスタムも、かなりヤレてましたから(苦笑)。だから、あえて汚れた状態から撮影をスタートして、バラして、磨いて、再生させることになったんです」。
※ ※ ※
実際、このカスタムを製作した際、福田さんはそのほとんどを手作業で行い、2年半の月日を費やしたそうですが、車両は今見ても旧さをいささかも感じさせないクオリティに仕上げられています。
ベースとなったのは1989年式ハーレー・ダビッドソンのソフテイルで立体的な造形が与えられたタンクやフェンダーはワンオフ(一点物)製作。あえてマフラー的なデザインを取り入れると共に冷却効果も狙ったオイルタンクやスロット(穴開け)加工が施されたプライマリーカバー、そして、この一台の車名であると同時に後にショップ名ともなった『Janus Mind』(ジェーナス・マインド)を表現する為、左右にセットされたSUキャブレターなど各部のディテールは目を見張るものとなっています。
ちなみに『Janus』とはローマ神話に登場する前後、反対向きに二つの顔を持つ双面神とのことで、そのイメージがデュアルキャブレターや左右対象のデザインとなったオイルタンクなどに巧みに取り入れられています。

また、福田さんがこのカスタムバイクを手掛けた1994年といえば、巷ではまだリアに懸架装置を持たないリジッドフレームの車両を目にする機会もなく、パンヘッドやナックルヘッドといった旧車も少ない日本のハーレー・カスタムシーンの黎明期といえる時代だったのですが、そんな現実を忘れてしまう程に『Janus Mind』は一台のカスタムとして高い完成度を誇っています。
2019年6月2日に群馬県前橋市の『ベイシア文化ホール』で無料上映イベントが開催され、その後はクラウドファンディングで全国上映を目指す、映画『セブンティーンモータース』。
新井愛瞳さん演じる主人公の“くるみ”が、父親のハーレーに心惹かれ再生の手を施したように、人が情熱を傾けたカスタムは時代を超えてもなお、色あせないものなのかもしれません。
【了】
Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。