またがったときの「足つき」に不安? シート位置が高いバイクが多い理由とは

バイクの車体サイズのひとつに、地面からシートの着座位置までの高さを示す「シート高」があります。大型バイクに限らずシート高によって「足つき」に不安を覚えるバイクが多いのはなぜでしょう?

バイクのシート位置、なんであんなに高いの?

 身長161cmで、女性の平均身長よりは高いけれど足が短い筆者(小林ゆき)は、新型車などのインプレッションをするときは必ず「足つき」(またがった状態で両足がどれだけ地面に届くか)のチェックも行ないます。

シート高835mmのハスクバーナ(スウェーデン)「VITPILEN 401(2019年型)」にまたがる女性ライダーのサトウマキさん。「おしりをヨコにずらさないと片足で支えられない……」とのコメント

 つま先が地面に届くかどうかだけではなく、仮にまたがった状態でサイドスタンドをはらえるか、シフトペダル操作のために左足から右足へ踏み替えるとき、ステップが邪魔にならないか、などをチェックしています。

「足つきチェック」をすると毎回思うのが、なぜ多くのバイクはあんなにシート位置が高いのか、ということです。一部のクルーザーモデルを除いてほとんどのバイクは両足が地面にべったり着くことはなく、ベストセラーと呼ばれる排気量250ccや400ccクラスのスポーツバイクでも、片足つくのがやっと、なんてことが少なくありません。

 バイクメーカーの方から「開発基準としているライダーの身長がけっこう高い」ということは聞いたことがありますが、それにしてもなぜ多くのバイクのシート位置は高いのか……?

 バイク工学の第一人者である景山一郎先生(日本大学生産工学部機械工学科教授、日本大学自動車工学リサーチ・センター 主席研究戦略アドバイザー)にお話しをうかがいました。

「一番の理由は、日本の市場が小さいからでしょうね。つまり、マーケティング的に日本人の体型に合わせる必要がないわけです。一番売れている市場の一番売れる層、つまり日本人に比べると大柄な男性に合わせているのです」

タイのバイクメーカー、GPXが作るスポーツモデル「DEMON 150GR」にまたがるバイク女子の梅本まどかさん。小柄な車体で780mmのシート高に不安はない様子

「もうひとつの理由は、昔の2輪開発の考え方がいまでも残っているのではないかと考えられます。以前は、重心を高くすると運動性能としては安定させやすいという考え方がありました。その名残で、結果的にシート位置も高い傾向のままなのではないかと。

 究極には、テクノロジーの進化で停まったときだけシート位置が下がる、そんなバイクが普及すればいいですね。

 あとは比較的欧米人より小柄な人が多いASEAN市場がメインになれば、シート位置の高さに対する考え方が変わっていくかもしれません」

※ ※ ※

 前述のとおり、筆者はバイクにまたがった際の足つきに関しては一般的な日本人女性よりも不利な状況になりますが、よほどのことがない限り(人の手を借りなければ乗り降り、発進と停車ができない)、これまで「シート高」で自分が所有するバイクを選んだことはありません。

 ともあれ、市場の活性化とともに製品がついてくる、そんな状況になることを期待してもいいかもしれませんね。

【了】

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