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イベントを通して見える日本のカスタム・シーンへの憧れと尊敬の念 マレーシアのショー「アート・オブ・スピード」とは

2019年7月27から28日の2日間に渡ってマレーシアで“アート・オブ・スピード”が開催されました。カスタムバイク/カーの展示やメーカーも出典する同イベントでは、どのような光景が広がっていたのでしょうか。

開催二日間で5万5000人を動員

 1963年に建国され、現在は約3200万人の人口(2017年統計)を誇るマレーシア、その首都であるクアラルンプールから約30km離れた場所にある Malaysia Agro Exposition Park, Serdang(マレーシア・アグロ・エクスポジションパーク・セルダン 通称MEPS)にて、2019年7月27から28日の2日間に渡って “アート・オブ・スピード”が開催されました。

 ともすれば、このイベントは日本の皆さんの想像を遥かに凌ぐスケールで展開されている催しかもしれません。

メインゲートが設置された屋外はご覧の雰囲気。二日間で5万5000人を動員するショーらしい熱気に溢れています。また気温も日本より過ごしやすいかもしれません

 来場者数は2日間で述べ5万5000人。国営の石油・ガスの供給企業である“ペトロナス”がメインスポンサーとなり、ドゥカティやトライアンフ、ハーレー・ダビッドソンなどのメーカーがブースを構え、カスタムバイクやカスタムカーが展示される様子は東南アジアのシーンの勢いを如実に表したものでしょう。

 一昨年まではカスタム車両の展示が主体だったものの、昨年よりメーカーブースが多く見受けられるようになり、今年はカスタムカーの要素が強まったように見えたアート・オブ・スピードですが、その中で強く感じさせられたのがマレーシアの人々が抱く我が国、日本のシーンへの憧れと尊敬の念です。

 実際、2019年のイベントではムーンアイズ代表Shige菅沼氏を筆頭に、愛車のフォード・ファルコンをベースにしたカスタムカー“PANTASTIC”(パンタスティック)と、ムーンアイズの角“PAN”正和氏/米国のパーツメーカーであるS&S社が2008年に開催した50周年記念カスタムコンテストで頂点に輝いたホットドックの河北啓二氏と、チャンピオン・マシンであるハーレー・ベースの“StG Nautilus”(エスティ―ジー・ノーチラス)/2018年末に開催された“ヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー”でアート・オブ・スピードからのピックを受けた広島の平和モーターサイクルの木村健吾氏と、BMW RnineTをベースにしたスクランブラーカスタムなど、世界を股にかけカスタム・カルチャーに携わる日本人とカスタム車両が例年よりも多くインバイト(招待)ゲストとして招かれました。また、日本のメディアもバイク・クルマの雑誌を中心に7社が招待されています。

2008年に米国のウィスコンシン州で開催されたカスタムコンテスト“World Largest Build-off”で頂点に輝いた東京のホットドックカスタムサイクルズの河北啓二氏と、優勝車両の“StG Nautilus”

 アメリカからはThe CutrateのOliver Jones氏やThe Mighty MotorのShaik Ridzwan氏、更にはオーストラリアからReturn of the Cafe Racers誌のGeoffrey Douglas Baldwin氏やFuel Tank誌のChris Cooper、ウェブサイトの Speedhunters.comのMatthew Everingham氏、PipeburnのMarlon Slack氏などが招かれました。

 そのほか、日本からはアメリカンテイストなバイク用品を扱うオリオンエースの長谷川健司氏/オリジナルのヘルメットをリリースするオーシャンビートルの野崎龍一郎氏/ピンストライパーブースにはM&KデザインのMAKOTO氏/宮崎県のTHE BELL氏/Ken’s Art Kustom GarageのKEN氏など多くの顔ぶれが揃い、日本人ゲストのみでも20名オーバーとなっています。
 
 そんな状況を単純に見ると、マレーシアという国で我が国のカスタム・カルチャーが、いかに注目されているかが伝わるかもしれません。

ありし日の日本のカルチャーが増加傾向に

 今年のショーに展示されている車両は、カタカナのステッカーを貼られたものが多く、日本のありし日の街道レーサーや“BOSOUZOKU”をイメージしたものが増えたように感じられたのですが、おそらくコレはインターネットによる影響とのことです。

会場の中で昨年のAOSと大きく違う部分が“カタカナ”のステッカーが貼られた車両の多さ。日本のイベントなら一発で警察から大目玉を食らうであろう“竹ヤリ・デッパ”の車両もありましたがマレーシアの人にとっては純粋な憧れとのことです

 マレーシアで“族車”がクールなものとして捉えられている部分は日本のカスタム業界の実状を鑑みると筆者個人(渡辺まこと)として複雑な気持ちもありますが、おそらくマレーシアの人々は「日本のもの=カッコいい」という単純な発想で日本のシーンを見ているような気がします。
 
ちなみに今回のアート・オブ・スピードの大幅な集客アップに関して、主催者であるAsep Ahmad Sastrawidjaja氏も“SNSによる宣伝効果が大きかった”と言います。彼曰くインターネットを介した情報の普及により多くの若者がショーに訪れたとのことですが、2019年のAOS(アート・オブ・スピード)では、スニーカーメーカーのVANSや同ショーで限定モデルを発売したミニカーのHOT WHEEL’Sなどが協賛しています。

 これらのメーカー・ブースの設置により、同ショーでは今まで以上に若者やファミリー層を取り込むことに成功しました。また、今年は巨大なステージを野外に設置し、初日である土曜の夜にはマレーシアのアーティストが演奏を披露。あたかもロックフェスのような盛り上がりを見せたのですが、そのスケール感は日本のショーにはないものです。

会場の外には一般来場者のカスタムもチラホラと確認出来るAOS。前後ワイドタイヤのカスタムは、どうやらマレーシアのトレンドと呼んでも過言ではなさそうです

 また毎年、開催されるインバイト(招待)ビルダーによるクルマを題材としたカスタム・コンテストでは、プロの審査員が選ぶ優勝者には10,000リンギット、一般の来場者が選んだ車両には5000リンギット(1リンギット=約26円)が進呈されたのですが、コンペティションで賞金が出るという部分も、日本のショーではあまり見られない光景でしょう。

 巨大なメーカーがカスタムの世界を後押しし、多くの観客が訪れるマレーシアのAOSに果たして来年はどのような光景が広がるのか……東南アジアを代表するビッグ・ショーの一角を担うイベントだけに、その方向性には注目です。

【了】

2日間で5万5000人を動員! 展示されたカスタム車両を画像でチェック

画像ギャラリー

Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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