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レトロかわいいのは見た目だけ!? 一筋縄ではいかない面白さが魅力のウラル・サイドカーに挑戦!!

戦前のボクサーツインをベースにしたエンジン、当時のパッケージをほとんどそのまま踏襲しながら60年以上ものロングセラーを続けるロシアのサイドカーメーカー「URAL(ウラル)」。2WD(2輪駆動)の「GEAR-UP(ギアアップ)」と1WD(1輪駆動)の「CT」に、小林ゆきが試乗しました。

後付けではなくサイドカーとして製造を続ける「ウラル」とは!?

 サイドカーといえば、既存のバイクの側面に「カー」を連結させて3輪状態にする、いわば改造車を思い浮かべますが、ウラルは世界で唯一、エンジンも含めて製造しているサイドカー専業のメーカーです。バイクも自社で製造し、わざわざ側面にカーを取り付けるという手間をかけてまで製造を続けています。

普通免許で運転できる2輪駆動のサイドカー、ウラル「ギアアップ」にぎこちない様子で試乗する筆者(小林ゆき)

 しかも累計320万台以上も生産し、世界中に送り届けられています。基本的に60年以上前からほとんどモデルチェンジすることなく作られている古風な姿は、1周どころか7周くらい回って、もはや「レトロかわいい」!

 いやしかし、基本設計が60年以上前のバイクですし……バイク生産国としてはあまり馴染みのないロシア製……などと少々いぶかるような気持ちでウラル・サイドカー認定ディーラーの「Rising Sun Racing(ライジング・サン・レーシング)」にお邪魔し、2WDのギアアップと1WDのCTに試乗してきました。

1輪駆動のサイドカー、ウラル「CT」に慣れてきた様子で試乗する筆者

 Rising Sun Racing代表の渡辺正人さんとは、2007年にマン島TTレース100周年に参戦されたことがご縁で旧知の仲。

 渡辺さんはサイドカーの世界グランプリやパイクスピークインターナショナルヒルクライムなどにも参戦経験のあるベテランドライバーです(レーシングサイドカーの世界では、運転手をドライバー、サイドカー側に乗る人をパッセンジャーと呼ぶ)。

 2017年と2018年には、このウラルでアジア最大級のクロスカントリーラリー「アジアクロスカントリーラリー」に参戦、2019年には「サイドカークロス」を自ら組み上げ、サイドカーでオフロードを駆け抜ける3度目の挑戦を続けています。

サイドカークロスでアジアクロスカントリーラリー2019に参戦する渡辺さん

 そんな渡辺さんに誘われて、サイドカーの草レースに参戦したこともあります。丁寧なレクチャーによって半日ほどでドライバーもパッセンジャーもなんとかこなせるようになったので、今回もすぐに運転できるだろうとタカをくくっていたのですが……。

カー側に乗ってお姫様気分!?

 サイドカーはもともと、バイクがまだ高価で上流階級の乗りものだった頃、ドレスを着た女性などが乗るために作られたもの。そのため、カーの側面が乗り込みやすいように凹んだ形をしていたり、ドアが付いていたりします。ウラルの場合は凹んだ形をしています。

ウラル「ギアアップ」のカー側に乗り込んだ状態の筆者

 普段は短足を生かして足つきインプレなどをやっている筆者ですが、CTもギアアップも楽々乗り込むことができました。

 まずは渡辺さんの運転で試乗場所へ移動します。カーに乗らせていただくと、さまざまな部品の上質さに目を惹かれます。座り心地の良いシートクッション、リブ仕上げや塗装、メッキなどスキなく仕上げられたスチールやメタルの部品たち。

 プラスチッキーなパーツでカモフラージュされたバイクに馴らされたいま、ウラルにはハイグレードな乗りものに乗っているという満足感が得られます。

ウラル「ギアアップ」

 ミッションは前4段/後1段というマニュアルシフトで、当然発進加速のときにギアチェンジを行うのですが、それによるショックをほとんど感じないのは、バイクとカーとサスペンションの絶妙な位置関係やセッティングによるのではないかと思います。もちろん、ベテランサイドカードライバー渡辺さんの運転によるところも大きいのですが。

 移動中、けして飽きることがなかったのは、ドライバーの手足の動きが丸見えだからでしょう。バイク側はカウルのないネイキッドなので、手足の動きがパッセンジャーからも良く見えます。

ウラル「CT」

 ドライバーとパッセンジャーの距離はけっこう近く感じ、ヘルメットをかぶったままでも会話を楽しめました。

 カーの足元はかなり広くゆったり気分。まわりのクルマや歩行者からの視線を浴びながら、しばしお姫様気分でクルージングです。

バイク感覚ではまず無理!! サイドカー独特の運転操作に四苦八苦!?

 広いスペースに到着し、いよいよ自分がドライバーとなって試乗します。渡辺さんによれば、アクセサリーがいろいろ装備しているモデルや2WDが人気だということですが、シンプルな1WDもおすすめとのこと。とくに「最初は1WDから経験すると、サイドカーの特性がつかみやすいですよ」とのことで、CTから試乗してみることにしました。

渡辺さんに乗り方を教わる筆者

 普通のバイクと違うのは、まず足を着かなくても倒れないこと。当たり前っちゃあ当たり前なのですが、長年2輪車だけに乗ってきた身体に染みついたクセはなかなか抜けることがなく、停まるたびに左足を着こうとしてしまいます。

 そして、これもサイドカーならではの特性なのですが、曲がるときはいろいろとコツがあります。

1.リーン(車体全体を左右に傾けること)できないので曲がるにはハンドルを切って曲がる

2.ハンドルを切ったときに車体がリーンせず左右にロールするので、遠心力で曲がる方と反対側に上体の重心が持っていかれる

 基本的に以上の2点に気をつけなければなりません。そしてなによりも注意しなければならないのは、ブレーキをかけて減速したときの車体の動きです。

 2輪車ならリーンと減速のバランスで同じラインをトレースしたり、より小さいカーブで曲がることができるようになりますが、サイドカーの場合はコーナリング中にブレーキをかけると、アンダーステアになって外側にふくらんでしまいます。これがじつに難しい!

サイドカーの特性に慣れないうちは曲がるのに苦労する

 つい「曲がり切れないと思ったら減速する」を無意識にやってしまい、何度もヤブに突っ込みそうになりました。

 そのたびに渡辺さん、そして編集担当Tさんに爆笑されるものの、落ち着いてバックギアに入れて脱出。何度もトライして徐々にコツをつかみます。

 練習で気付いたのですが「ハンドルを切って曲がる」といっても、かなりの力を必要とします。パワーステアリング機構などはないので、ヘルメットの中で「おぅりゃっ!!」と声を出さなければいけない場面もあるほど。でも、思い通りに運転できるようになってくると、まるでスポーツしているような気分になってきます。

カー側の右へ曲がれずヤブヘ向かって直進するもバックギアのおかげでスムーズに脱出

 もし「歳をとって体力がなくなってきたらバイクじゃなくてサイドカーに乗ろう」なんて考えている方がいらっしゃいましたら、認識をあらためていただければと存じます。サイドカーは体力のあるうちに楽しんだ方が良いのでは、と思います。

マニュアルカメラを扱うような知識とコツが必要、それが楽しい!!

 だんだん慣れてきたところで、今度は2WDのギアアップに乗ります。2WDを効かせる場面はもちろんないものの、CTより車重があるせいか、よりしっとりとした乗り心地で、ゆったりとした気分を味わいながら落ち着いて運転することができました。

 もちろんスピードは普段乗っているスーパースポーツバイクとは比べ物にならないくらい遅いスピードしか出せないのですが(サイドカーの経験的に)、普段より3倍くらいの頭を使っていることに気付き、また、それがなんとも心地よく感じるのは、必要十分なエンジンパワーやフィーリングと、まろやかなエキゾーストノートだからなのかもしれません。

ギアアップはバイクとカーの間に装備されたレバーを操作することで、バイクの後輪からドライブシャフトを介してカー側の車輪が連動し、2輪駆動に変更できる(切替式パートタイム2WD)

 スピードが出せない、というより「出す必要がない」「出さなくたって楽しい」です。そもそも車線変更だってバイクのようにはできないわけだし、ウラルに乗ったら、いままでバイクに求めていた「何か」なんてどうでもよくなっている自分に気付きました。

 たとえるなら、フルマニュアルの高級フィルムカメラを愛でるわたし……なんて言ったら大げさですね。

 今回はサイドカーの魅力をほんのちょっとかじるだけの試乗でしたが、ひと筋縄ではいかないサイドカードライビングの妙。いまとなってはアナログな乗り物ですが、根強いファンがいるのもわかります。

サイドカー独特の運転操作に面白さと魅力を発見した筆者

 ウラルは60年前の旧車ではなく、現代の技術で作られている現代の乗りもの。2輪車とも4輪車ともトライクとも違う、サイドカーの世界を知ることができました。次回もし乗れる機会があったら、2人乗り、3人乗りにも挑戦したいと思いました。

 価格(税込)は「GEAR-UP」が220万円から、「CT」が199万円からとなります。

【了】

ロシアのサイドカー専業メーカー「ウラル」とは?

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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