ホンダ「スーパーカブ」で時速200kmオーバーを目指す “塩の平原”ボンネビルソルトフラッツに挑んだ日本人レーサー
2019年は8月24日から29日にかけて米国の塩の平原『ボンネビルソルトフラッツ』で二輪車の最高速アタック「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアルズ」が開催されました。世界各国から選手が集まる同レースには日本人ライダーもチャレンジしています。
塩の平原で行われる二輪車の最高速チャレンジ
広大な塩の平原『ボンネビルソルトフラッツ』で開催されるランドスピードレース、ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアルズ(BMST)。このレースは、1~4マイルの加速区間で最高速に達し、続く1マイルの計測区間の平均速度が記録になるレースです。2019年は8月24日から29日にかけて開催されました。

様々な排気量、ボディ形状のマシンが参戦する同レースですが、その中において2018年に続きホンダ「スーパーカブ」系エンジンを搭載したレーシングマシンで挑戦した近兼拓史さんは、50cc過給機付きパーシャルストリームライナーと、125cc過給機付きパーシャルストリームライナーの2クラスでFIMとAMAの最高速記録(50ccは63.274マイル、125ccは64.3マイル)を獲得しました。2年目の挑戦を終えた近兼さんは次のように話します。
「私達のプロジェクト“スーパーミニマムチャレンジ”は、50ccと125ccのカブ系エンジンを使ってボンネビルで世界最速を目指すプロジェクトです。昨年のマシンNSX-01(125cc)は、ホンダの市販レーサー“RS125”をベースに改造したフレームと、武川のスーパーヘッドとキャブレターに空力ボディを組み合わせて挑みましたが100マイルの壁を超えられませんでした。

目指す200kmオーバーを達成するために、今年のNSX-02(125cc)とNSX-51(50cc)は、新設計の航空機用クロモリ製フレームと、バーチャルステアリングシステムに新型の超空力カウリングを組み合わせた、究極の低車高超空力ボディを完成させました」。
新たなセットアップのエンジンで挑んだ2019年
「エンジンも高地高温のボンネビルに対応できるように、50ccはインジェクション+スーパーチャージャー、125ccはインジェクション+ターボというセットアップで望みました。しかし、新型フレームと新型エンジン導入という100%新型マシンの制作となってしまったため、時間的に本番がシェイクダウンというギリギリの状態になってしまいました。

通らねばならない試練だったのでしょう。幸い50cc+過給器、125cc+過給器の両クラスでレコードは取れましたが、数字には全く満足していません。小排気量+過給器+インジェクションのセッティングは、針の穴を通すような難しさです。
少しでも間違えると過給器無し状態よりパワーダウンしてしまいます。来年はさらにマシンの軽量化と効率化を進め、今年のデータを元にエンジンのパワーを最大限に活かしきってレコード更新、50cc+スーパーチャージャーは160kmオーバー、125cc+ターボは200kmオーバーに挑みたいと思っています」。

日本の町工場のテクノロジーを結集させて世界記録に挑む「スーパーミニマムチャレンジ」。近兼拓史さんによると、3年間の挑戦をひとつのパッケージとして考えているといいますが、いよいよ3回目の出走となる2020年の活躍に期待が掛かります。
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