鈴鹿8耐にハーレーで参戦した唯一のショップ『サンダンス』 創業37年を迎えた今も変わらないカスタムに対峙する姿勢
ハーレー・ダビッドソンのカスタムやチューニングを行う『サンダンス』は、鈴鹿8耐やデイトナでのレース経験をフィードバックすることで、優れた走行性能を発揮するカスタムバイクを手掛けてきました。ここに紹介する「サンダンス・キッドII」もまさにそうしたマシンの代表格といえる一台です。
今から33年前に製作されたスーパーチャージャーを搭載するロードゴーイング・ドラッグレーサー
1982年に東京は港区高輪で創業され、『ハーレー・ダビッドソンにパフォーマンスを与える』というアプローチで、それまでにない『道』を切り拓いてきたショップ『サンダンス』。

同店は1984年に、それまでの日本のシーンには存在しなかったステンレスやアルミの質感を生かしたトリプルツリーやマフラーなどの『シュア・マテリアルシリーズ』をリリースしました。また、翌年に本来は鉄製であるショベルヘッド用のアルミシリンダーを開発したサンダンスは、1989年からレース活動をスタートし、1995年にはオリジナル・エンジンを搭載した『スーパーXR』を発表します。
1998年には、そのパワーユニットを強化して搭載したロードレーサー『デイトナウエポンII』で鈴鹿8時間耐久ロードレースへ挑戦するなど、その足跡を辿れば、それこそ枚挙に暇がありません。

そんなサンダンスが創業間もない1986年、『サンダンス・カスタムサイクルズ』という屋号時代に製作した「サンダンス・キッドII」は、まさにそのショップ名に相応しく凄まじい仕様のマシンとなっています。
サンダンスは、1985年に1/4マイルの直線を走るバイク『ドラッグレーサー』をイメージした空冷OHV4バルブ(当時の純正ハーレーは2バルブ)の『サンダンスキッドI』に着手し、翌年にはこの『II』も製作。1986年のモーターサイクルショーに二台同時で出展を果たしましたが、アメリカのドラッグレーサー的なスタイルと「金属の質感を活かした」その姿は当時、かなり斬新なアプローチだったとビルダーの柴崎“ZAK”武彦氏は語ります。
通勤にも使用されていた『サンダンスキッドII』
『サンダンスキッドII』は、アーレン・ネス製フレームにオリジナルの80mm角パイプスイングアームを組み合わせた車体構成なのですが、当時としては珍しく200幅のワイドタイヤ(ドゥカティ・モンジュイ用カットスリック)を装着。

1984年まで生産されていたショベルヘッドをベースにし、1438ccまで排気量が高められたエンジン(ショベルヘッドのノーマル排気量は1200ccと1340ccの2種類)に目をやると車体右側に備えられたマグナチャージャー製のブロワー(過給器)が否応なしに視界に入りますが、このパーツがもたらす暴力的なトルクに対応する為に、フロントにはスズキGSX-R用のフォークを装着するなど、一連の足周りパーツがチョイスされているといいます。
このマシンのあまりに強烈な姿は「カスタムショーを念頭に置いたコンセプトバイク」という誤解を与えるかもしれませんが、当時のサンダンスも今と変わらず「走らないバイクは創らない」というのが信条です。
実際にこのマシンのオーナーは1986年当時、通勤にこのバイクを使っていたそうで、タンクのガソリン容量が5リットル程度ゆえ、何度か『ガス欠』の憂き目にあったこと以外は至って普通に(といっても強烈な加速とトルクでしょうが)走っていたとのこと。今から33年前にこんなマシンが東京の街中を走っていたという光景を想像するだけでも強烈です。

その後、サンダンスの柴崎氏は米国の著名なチューナーである“ジェリー・ブランチ”氏と出会い、ハーレーエンジンを搭載したロードバイク『ビューエル』の開発を兼ねたレース活動をスタート。
H-D社のワークスレーサーである『XR750』を開発したエンジニア“ディック・オブライエン”氏や『XR1000』の開発者である“ジョン・ワード”氏らとの交流を経て、ルックスに重きが置かれる『カスタムショー』の舞台から、あえて姿を消すことになったのですが、『走りを追求する』という姿勢は創業から37年を経た今も尚、一貫しています。
それはサスペンションやホイールなどハーレーの足周りをスープアップする『トラックテック』シリーズをはじめとするパーツ類や、オリジナルのスーパーXRヘッドにビッグツインの腰下を組み合わせたエンジンの開発などを見る限りでも明らかでしょう。
現在は『サンダンスエンタープライズ』となった同店が『カスタムサイクルズ』を名乗っていた時代に生み出された『サンダンスキッドⅡ』……我が国のハーレー・カスタムシーンを振り返った時、この車両も確実に歴史に名を刻むべき一台です。
【了】
Writer: 渡辺まこと
ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。




