世界に挑んだ日本人ライダー 「不利でも挑戦したい!」ワイルドカードに賭けた想いとは

2019年10月18から20日の3日間にかけて、栃木県のツインリンクもてぎで、MotoGP16戦日本グランプリが行われました。世界を転戦しながら全19戦を争いシリーズチャンピオンを決定するMotoGPは、各グランプリそれぞれに単発で参戦するワイルドカードが認められています。

不利だとしても挑戦したい「世界」レベルの争い

 第15戦でホンダのマルク・マルケス選手がシリーズチャンピオンを決めた2019MotoGPの日本グランプリが、10月18から20日にかけて栃木県の「ツインリンクもてぎ」で開催されました。

 世界を転戦しながら全19戦を戦い、シリーズチャンピオンを決める同シリーズでは、1戦のみの単発でエントリーするワイルドカードでの参戦が認められています、今季の日本グランプリでは、2人の日本人ライダーがMoto3クラスにワイルドカードで参戦しました。

走行中の山中 琉聖 選手

 このワイルドカード参戦は、全日本ロードレース選手権でのランキングが上位のライダーや来季ロードレース世界選手権へのステップアップを見据えたライダーなど、FMN(各国モーターサイクル組織で、日本の場合はMFJ)やFIM(国際モーターサイクリズム連盟) 、またはDORNA(MotoGPの商標権を所持する会社)から認められたライダーのみがエントリーできる決まりとなっています。例外として、同クラスに過去3回以上出場経験のあるライダーはエントリーできません。
 
 そのため参戦するライダーの実力は、世界レベルではなく世界へのステップアップを目指すレベルです。また、シリーズが進むにつれて熟成を重ねてきたレギュラーチームのマシンとは違い、エントリーした1戦を戦うためだけに用意した慣れないマシンなど、かなり不利な状況でのレースとなります。

 そんな苦しい状況を全て理解した上で、それでも挑戦することを決めた2人の日本人ライダーは、世界の舞台でいったいなにを感じたのでしょうか。

●#6 山中 琉聖 選手(Estrella Galicia 0,0)

 型落ちの2018年型 ホンダ「NSF250RW」で参戦し、世界のトップライダー達を相手に15位と健闘。見事ポイントを獲得しました。

山中 琉聖 選手

そんな山中選手は現在、FIM CEVレプソルインターナショナル選手権 Moto3クラスにフル参戦中。シリーズランキング5位につけています (第7戦終了時点) 。

――今季フル参戦しているCEVと世界選手権のmoto3には、どんな違いを感じましたか?

「レース自体のやることは同じなのですが、ワイルドカードということで2018年型のマシンで少し不利なところはありました。

 ただ、そういう不利な部分も自分的に上手く改良できて、とても勉強になったなと感じました」。

――自分の母国である日本グランプリへのワイルドカードという点に特別な気持ちはありましたか?

「友達やファンの方など、たくさんの方が応援に来てくれているので、ダサいレースは絶対に見せられないと思っていました。

 そんななかで、ポイントが取れたことは良かったと思います。レースの内容には満足しています」。

――来年は世界グランプリのmoto3クラスへのフル参戦が決定していますが、今回、手ごたえは感じられましたか?

「この型落ちのマシンでもペース的には良かったので、来年もいいところを見せられると思います!」

●#36 長谷川 聖 選手 (Team Anija Club Y’s)

 ほぼノーマルのホンダNSF250Rにmoto3全車共通となるデロルト製ECUを装着しただけという不利すぎるマシンでの参戦を決めた長谷川選手は、レースWEEKに初めて装着したというECUとマシンの合わせこみに苦戦。

 2019年シーズンから導入されたレギュレーションである『クォリファイプラクティスに参加する為に、ライダーは、3 回のフリープラクティスセッション(FP1、FP2、FP3)の同一セッション内で最も速いライダーが記録したタイムの最低 107%に相当するタイムを得なければならない。』という規定をクリアすることができなかった為、予選・決勝を走ることはできませんでした。

長谷川 聖 選手

 不利すぎるハードウェアの環境とさまざまな不慮のアクシデントが重なって、悔しすぎる結果となってしまった長谷川選手ですが、今季は全日本ロードレース選手権J-GP3クラスにフル参戦。最終戦を残す、第7戦オートポリスでシリーズチャンピオンを決めた実力の持ち主です。

――マシンや状況がかなり不利ななか、ワイルドカードでの参戦を決意した理由を教えてください。

「ワイルドカードの話が出た時点では全日本のランキングは2位だったのですが、ワイルドカードの権利はもらえるだろうと思っていました。ただ、NSF250RWを用意することはできないだろうし、お金もたくさんかかるだろうし……。でも、ワイルドカードの権利が発生してから本当にこの場所に来ることができるということ自体がすごいと思うんですよ。

 だから、出られるなら出てみたかった。GPライダーと一緒に走ってみたかったです。世界で走って、ライダーとして一段階上に行きたかった。

 記録は残せないかもしれないけど、コーナーだけは誰にも負けてなかったとか、記憶に残る走りを世界にアピールできたらいいなと思い、出ることを決めました」。

――ワイルドカードでの参戦を決めてから、レースWEEKに入るまでの準備期間で一番大変だったことはなんですか?

「何もできなかったことですね。全日本の第7戦で小指に怪我をしてしまって・・・。だから、タイヤのテストができませんでした。

 あとは、レギュレーションで統一されているECUがこのレースWEEKに入らないともらえないので、どんなECUなのかもここに来るまでわかりませんでした」。

――レースWEEKを通して一番大変だったことはなんですか?

「ECUのせいで、普通に走りたくても走れなかったことですね。

 ECUを受け取ったのがレースWEEKの木曜日で、金曜日に初めて走ったら、普通に走れなかったのがつらかったです。

 せっかくのドライコンディションで、コースも結構走っているサーキットなので行けると思ったんですけど、バイクがちゃんと走ってくれなくて、速い、遅いという次元まで持っていけませんでした」。

――予選・決勝が走れないという結果になってしまいましたが、出場してよかったと思いますか?

「マシン性能などが違いすぎるので、ストレートが遅いとか離されるのは分かりきった話なのですが、コーナリングは絶対に大丈夫だという自信がありました。コーナーだけなら絶対負けないだろうなって。

 マシントラブルばかり出てしまいましたが、コーナーは自分の方が速いと感じられた部分があったので、その部分が分かったというだけで自信にもなったし、良かったと思います」。

※ ※ ※

 現在のエントリーシステムやレギュレーションでは、どうしても不利な状況に立たされるワイルドカードでの参戦。それでも世界に挑戦したいと奮闘するライダー達の戦いが、そこでは繰り広げられているのです。

MotoGP日本グランプリmoto3クラスにワイルドカード参戦した2人のライダーを写真で見る (16枚)

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