これぞ現代のアフリカツイン!? 冒険ラリーの要素に“とっつきやすい”仕様とは?

ホンダ「CRF1000Lアフリカツイン」をより冒険仕様とした「アドベンチャースポーツ」にはパリダカマシンへのオマージュが見られますが、それをさらに“とっつきやすく”したローダウン仕様に試乗します。

アフリカツインを現代版にしたらこうなった、その先は……?

 2018年4月「CRF1000Lアフリカツイン」に加わった「アドベンチャースポーツ」は、初期型「XRV650アフリカツイン」をオマージュした(ということは、ワークスマシン「NXR750」もオマージュしています)カラーリングや、サイドカバーに小物入れがある造形、エンジンサイドまで回り込むアルミのスキッドプレート、より高いハンドル位置と80mm伸ばされたスクリーン、なにより容量18リッターから24リッターに増量された燃料タンクなど、ロングツアラーとしての魅力を大きく伸張させています。

ホンダ「CRF1000L Africa Twin Adventure Sports Type LD(DCT)」に試乗する筆者(松井勉)

 車体では、スタンダードでも高い評価を得ていたサスペンションストロークを前後とも20mm伸ばし、前252mm、後240mmとしました。最低地上高も250mmから270mmにアップしており、これなら荷物を多く積んで車高が多少下がっても余裕が生まれ、荒れ地の走破性もスポイルされない、とワールドトラベラーからは歓迎されるに違いありません。

 カタログスペックではシート高が870mmと890mm(2段階調整式シート)ですが、静的な高さよりも実際は低くなる本格ツーリング時に諸元を合わせたモデルと捉えた方が、このアドベンチャースポーツを理解するには大切です。

 とは言うもののそれでは足つきが不安、というユーザーに向けたローダウン仕様(Type LD)も合わせて用意され、今回試乗したのはアドベンチャースポーツDCT装備のローダウン仕様になります。

スタンダード(左)とアドベンチャースポーツ・ローダウン仕様(左)、2台のアフリカツインを乗り比べる筆者(松井勉)

 今回は“スタンダード”のアフリカツインと同時試乗だったので、2台を並べるとローダウン車の低さが解ります。以前、1台だけでローダウン仕様を試乗したとき、サイドスタンドでたたずむ姿から自信をもってローダウンだと断言できないほど自然なスタイルでした。ただしサイドスタンドを払って跨がると、810mmと830mm(2段階調整式シート)となるシート高は足つき性抜群で、車体全体でスタンダードよりも60mm低いだけにとっつきやすさは抜群です。

 サスペンションストロークを縮めて(前後とも180mm程度と推察)車高を落としているので、シート、ステップ、ハンドルバーで作られるポジションは通常のアドベンチャースポーツと同じ。違和感は全くありません。

 大型になったタンクも上面部がやや大型になっていますが、ニーグリップエリアはスタンダードモデルから大きく広がることもなく「太いバイク」という印象はありません。

 高速道路では80mm延長されたロングスクリーンがさらに快適な空力性能を見せてくれます。これはラクです。DCTも相まってアクセルを一定に保つクルージングではどこまでも走って行けそうです。車高が低い分、ぱっとスタンダードモデルから乗り換えると周囲の車の屋根越しに見えた前方視界がやや悪いことにも気がつきますが、許容範囲でしょう。

ホンダ「CRF1000L Africa Twin Adventure Sports Type LD(DCT)」には転倒時の車体ダメージを軽減するサイドパイプとアルミパネルを標準装備する。パールグレアホワイト、価格(消費税10%込)165万9960円 ※2019年10月生産終了

 足つき性、“とっつきやすさ”というメリット以外の特徴としては、サスペンションストロークが短くなった分、波長の大きなアスファルトのうねりなどサスペンションストロークを要する場面で、動き出しからストローク後半までのなかでスタンダードモデルのサスペンションよりも減衰圧の高まりがやや急激に感じる場面がありました。ガツンとくる印象です。

 しかし、これもオンロードバイクとして考えたら充分に許容レベルで、ソコが気になるのであれば、減衰圧やスプリングのイニシャルプリロードを自分の好みに調整すれば緩和できるでしょう。

 これはワインディングを軽快に走る場面やダート路を楽しむ場面でも同様で、ストローク前半から減衰圧を発揮するよう調整すれば、より短いサスペンションを活かしながら楽しめるはずです。

ホンダ「CRF1000L Africa Twin Adventure Sports Type LD(DCT)」に試乗する筆者(松井勉)

 ただし、ブレーキングで荷重が大きくフロントよりになったときでも何ら不安が無い路面追従性を持っていますから、むしろ低荷重時のサスペンションの動きに不満があれば、ということだと理解して下さい。

 エンジン、トランスミッションは同じCRF1000Lなので、スタンダードモデルより車体重量が増えている分を差し引いたとしても全く不満はありません。発進や右折待ちスタートでエンストの心配が無く、変速ショックがほとんど無いそれは、毎度神業的クラッチ操作を自動でこなしてくれます。

 Dレンジ(通常走行時の自動変速モード)だけでも充分ですが、私の場合、それにシフトダウン時のみ左親指でスイッチをタップしてリズムを取ります。程なく自動変速に復帰してくれるので、あとはお任せです。あえてMTモードやSモードを選択しなくても、十分な操作性を楽しめるのがアフリカツインのDCTの魅力であり、ホンダならではの技術と言えるでしょう。

 前後のブレーキも操作力と制動力のバランス、制動時の車体姿勢の変化など違和感なくなじみ、安心してその強弱をコントロールできるのも魅力です。エンジンを含め、どこも尖っていないけれど、足りないところはどこにも無い、それが大きな魅力です。

ホンダ「CRF1000L Africa Twin Adventure Sports Type LD(DCT)」パールグレアホワイト、価格(消費税10%込)165万9960円 ※2019年10月生産終了

 アドベンチャーバイクは大柄過ぎてちょっとなぁ、というライダーでも、このローダウン仕様はオススメでしょう。ただし、私のようにオフロードをもっと楽しみたい、という場合、少しショートサスペンションのネガな部分は出るはずです。我慢の範疇、とも言えるでしょうが、アフリカツインの出自を考えると、大事な性能であり魅力のスペックだと考えます。

 新型「CRF1100L」シリーズが、国内販売では全車ローダウン仕様という点が気になるのは、そんな思いからでもあります(ホンダはアフリカツインのオフロード性能をより楽しめるノーマルサスペンションモデルの受注を期間限定で予定しているとのこと)。

 現行型(2018年型)は素晴らしい。さて、新型「CRF1100Lアフリカツイン」(2019年型)はどうなのでしょうか?

【了】

【画像】ホンダ「CRF1000L Africa Twin Adventure Sport(DCT)」(2018年型)ローダウン仕様

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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