自転車の保険義務付けのきっかけ? 自転車活用推進法とは

自転車の保険を義務化するという地域がさらに増える動きを見せています。2017年5月に施行された自転車活用促進法では、気になる記載があり、これが自転車の保険や交通違反の対応に影響を与えている可能性があります。

自転車活用促進法とは

 自転車活用促進法は2017年5月1日に施行された法律で、自転車の活用のため国や地方公共団体の責務などを定めた法律です。基本理念として、自転車が二酸化炭素や排ガス、騒音を出さない乗り物という認識のもと、自動車への依存を減らすことが公共の利益増進に役立つとしています。

2019年5月5日に東京の明治神宮外苑で開催されたサイクルドリームフェスタ2019の様子

 具体的な活動については「重点的に検討され、及び実施されるべき施策」として自転車専用道路や駐輪場の整備をはじめ、レンタル自転車、ITによる自転車の管理、インバウンド(訪日旅行)支援などが挙げられているほか、自転車の日が5月5日であることや、自転車月間が5月1日から31日であることも法律に記されています。

附則では交通違反と保険について検討を求める

 5月5日が「自転車の日」と定められたことで、2019年5月5日に東京の明治神宮外苑で「サイクルドリームフェスタ2019」も行なわれました。自転車メーカーなども出展し、1週1.2kmの明治神宮外苑サイクリングコースでは高級スポーツバイクや電動アシスト自転車に試乗できるイベントも準備され、5000人を超える来場者を集めました。

5月5日「自転車の日」に開催された「サイクルドリームフェスタ2019」

 しかし、法律はイベントを行うためのものだけではありません。本則のほかに附則があり、そこには、日常の自転車利用に一歩踏み込んだ記載があります。

 附則抄 第三条として「政府は、自転車の運転に関し道路交通法に違反する行為への対応の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」「政府は、自転車の運行によって人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」としており、「自転車の交通違反の対応」「損害賠償を保障する制度」が求められていると読み取れます。

「自転車の交通違反の対応」についてはこの法律ができる前の2015年6月1日に「自転車運転者講習制度」が開始されるなど取締強化がなされましたが、その後の具体的な動きはまだないようです。

2019年10月から自転車の保険の加入義務付けを行った神奈川県

 一方の「損害賠償を保障する制度」については、2019年10月から自転車の保険の加入義務付けを行った神奈川県をはじめ、すでに22都府県の全域もしくはその一部で、義務化もしくは推奨がなされており、法律の効果が出ていると言えるかもしれません。

交通違反対応と自転車保険はこれから本格化か?

 身近な乗り物のなかで、自転車の手軽さにメリットを感じている人も多く、電動アシスト自転車の普及といったほか、近年の高齢者の運転免許返納の流れもあり、注目の乗り物となっています。

2019年4月から自転車の保険の加入義務付けを行っている仙台市

 こういった自転車の利用促進や自転車の高機能化にあわせ、この法律では道路交通法の自転車の走行に関する内容や、自治体や販売店の行うPR活動に目を向けてほしいという意図が読み取れます。今後は前述の「自転車の交通違反の対応」「損害賠償を保障する制度」について、新たな動きがある可能性があります。

 自転車のその利便性を損なわないためには、私たちの自転車そのものに対する認識をはじめ、走行ルールの深い理解と新しい情報の共有が必要になるのかもしれません。

【了】

【画像】自転車業界は今後どう変わる?

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