インディアンモーターサイクル「FTR1200S」 見た目も乗り味もパンチの効いたストリートモデル

2019年10月にポラリスジャパンも設立され、販売網の整備も進んでいる『インディアンモーターサイクル』。注目モデルは全米フラットトラックレースで無敵を誇る「FTR750」のスタイリングとレーシングスピリットを踏襲した「FTR1200/S」です。

フラットトラック常勝の実力をフィードバック

 米国のバイクブランド『インディアンモーターサイクル』は、2017年にアメリカ2輪モータースポーツのメジャーシリーズである全米フラットトラックレース選手権へワークスチームが復帰すると、破竹の勢いで勝利を積み重ね、初年度から2019年シーズンまでに3連覇を果たしました。

インディアンモーターサイクル「FTR1200S」に試乗する筆者(青木タカオ)

 1950年代までアメリカンモーターサイクルレーシングで活躍しましたが、1953年に事業を終了し、全モデルの生産を停止しました。その後、再建や倒産を繰り返しますが、2011年にスノーモービルやATVなどのリーディングカンパニーであるポラリス・インダストリーズ社によって完全復活しました。

 そしてフラットトラックレースで頂点に返り咲き、新体制の実力の高さを見せつけています。

 そのファクトリーレーサー「FTR750」のネーミングを受け継いだ公道向け市販モデルだけに、どれほどのポテンシャルを秘めているのか発表時から興味は尽きませんでした。スタイリングからもフラットトラックレーサーのムードがムンムンと漂い見とれてしまうばかりですが、ついに乗ることができました。

パンチの効いた60度Vツイン

 まずエンジンは、Vバンク角60度のスカウト用DOHC4バルブ水冷V型2気筒をベースに、マウント位置や後部短縮など完全新作と言えるほどに隅々まで設計し直されています。スカウトではボア99mm×ストローク73.6mmで排気量1133ccとしていましたが、「FTR1200/S」ではボアを3mm拡大し、排気量1203ccを獲得したのです。

新設計となる排気量1203ccの水冷V型2気筒エンジンを搭載

 ちなみにFTR750の心臓部は、挟角53度のVツインエンジンです。フレームもセミダブルクレードルで、トラス状のFTR1200/Sとは異なりますから、ワークスマシンそのまんまのレーサーレプリカではなく、市販版FTR開発にあたって、すべてを新設計としているのでした。

 アップライトなライディングポジションをもたらすプロテーパー製のアルミテーパーハンドルを握り、軽い操作感のクラッチレバーを操って発進すると、ピックアップ鋭いパンチの効いたエンジンに心ときめきます。

 2000rpm以下でノンビリ流すこともできますが、3000rpmからピークトルク120Nmを発揮する6000rpmあたりまでが特に力強く、ただアクセルを開けるだけでもうエキサイティングです。最高出力120hpに達する8250rpmまで回せば、怒濤の加速ですべてを置き去りにしてしまいます。

レーストラックで生まれたスタイリングをストリートモデルへ反映

 軽量化されたクランクマスによってスロットルレスポンスに優れ、上質なタッチのシフトフィールを含め、乗ればレーサーレプリカモデルであることに納得。常勝軍団レッキングクルーのレーシングスピリットはしっかり受け継がれているのでした。

 なお、今回は上級仕様となる「S」に乗りましたが、ザックス製の前後サスペンションがフルアジャスタブル式に、フロントキャリパーがブレンボM4.32モノブロック・ラジアルマウントにグレードアップされ、4.3インチライドコマンドタッチスクリーンや3つのライドモード、リーンを感知するトラクションコントロールもSだけの装備となっています。

 ライドモードはレイン、スタンダード、スポーツの3段階を設定するほか、トラック(レース)モードもあり、ABSをキャンセルすることも可能です。フラットトラックレーサーをルーツとしていることは、電子制御からも伝わってきます。

大らかさもあるアメリカンスポーツのハンドリング

 軽量スチールフレームを骨格とした車体は、充分な剛性を確保しつつしなやかさも残し、減速から初期旋回までの軽快性、素直なハンドリングによるコーナリング性能の高さも実現しています。

直線でつながるようにデザインされたトラスフレームとリアスイングアーム

 燃料タンクがカバー後部からシート下にかけて配置されるなどマスの集中化も図られ、乗り手の荷重移動にも反応が良く、身のこなしも軽くて自在に操れるのが好印象です。

 フロント19インチ、リア18インチの大径ホイールに、前後150mmのストローク量を確保した前後サスペンションの組み合わせは、路面状況に神経質にならずに済み、大らかさも内包したアメリカンスポーツの長所と言っていいでしょう。

 リラックスした姿勢のまま思い通りのラインでコーナーを駆け抜け、元気のいいエンジンが病みつきとなるスポーティさがFTR1200/Sにはあります。

 カスタムパーツも豊富に用意され、ラリーコレクション、トラッカーコレクション、ツーリングコレクション、スポーツコレクションというようにテイストを変えられ、筆者ならフラットトラックスタイルでFTR750に似せたいなと、思わず想像を膨らましてしまう楽しさがあるのも魅力です。

ナンバープレート、ウインカーはスイングアームマウントとして車体後半部分をすっきりしたデザインに

 インディアンモーターサイクル「FTR1200」の価格(消費税10%込み)は189万9000円から、「FTR1200S」は209万9000円からとなります。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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