新時代の電動バイクBMW Motorrad「Cエボリューション」 環境性能を優先しただけのバイクでない!

BMW Motorrad「Cエボリューション」は、未来を予感させる新時代の電動バイクです。少なくとも環境性能を優先しただけのバイクでないことは試乗前から伝わります。

もとは二輪メーカーのBMWが送り出す電動バイクとは?

 4輪メーカーとしても成功を収めたBMWはもともとバイクメーカーだったのをご存じでしょうか。その昔は航空機を生産するメーカーでしたが、その後2輪産業に進出。今では4輪メーカーとしても有名ですが、バイクから発展したメーカーなのです。

BMW Motorrad「Cエボリューション」を試乗中の筆者(木下隆之)

 だからというわけではありませんが、BMWのバイクラインナップは、4輪に負けず劣らず充実しています。ガソリンバイクだけではなく、電動スクーターをもリリースしています。その名も「Cエボリューション」。未来を予感させる新時代の電動バイクなのですね。

 いやはや、現車を前にして僕は、しばらく頭が混乱してしまいました。確かにバイクというよりスクーターであることは、ガソリンタンクを抱えるような姿勢ではなく、椅子に腰掛けるようにして操縦できそうなドライビングポジションだったことから想像できます。

 ですが、電動バイクという穏やかな響きとは裏腹に、デザインは攻撃的なものでした。試乗バイクは黒基調だったこともあり、少なくとも、環境性能を優先しただけのバイクでないことはすぐにわかりました。ブラックアウトされたホイールや、剥き出しのディスクブレーキなどからも走りの性能を予感させたのです。

最大トルクはクランクシャフトで理論上72Nm、実質的にはリアホイールで600Nm近くを発生

 実際に走らせてみれば、それが走りのための電気モーターであることがわかります。モーター出力は35kW。馬力にすると48psです。しかもカタログには怖ろしい文言がつづきます「リアホイールでは600Nm近くを発生」これはもう、大排気量ハイパワーカーの世界なのです。

 モーターは回転初期から最大トルクを炸裂させます。ですので、その加速が桁外れなことは、乗る前からしてわかっていたことなのです。そしてそれは現実なものになりました。スロットルをわずかに捻っただけで、無音のまま投げ飛ばされそうになる程の加速感に襲われたのです。実際には無音ではなく、キーンっといったモーター特有の金属質なサウンドが響くのですが、その獰猛な加速力の前ではほとんどサウンドを耳にしている余裕などなく、無音に聞こえるのです。

Cエボリューションに車重は275kg、リチウムイオン電池バッテリーは決して軽くはない

 特徴的なのは、驚くほどバイクが重いことです。94Ahのリチウムイオン電池バッテリーはけして軽くはありません。車重は275kgにも達します。ですので、慣れるまではヒラヒラと舞うように走れませんでした。

 駐車場での取回しはなかなか困難です。ちょっとした傾斜道では、数人がかりで押したり引いたりする必要があります。それを見越してなのか、Cエボリューションはバックで走ることができます。ガソリンエンジンではバックギアを組み込む必要がありますが、電気モーターですので、ただ単純に逆回転させれば良いのです。重宝ですね。

 ただ、重いことには違いがありませんが、重心点は低いので不安定ではありません。止まるか止まらないかのような極低速走行でも、フラフラすることはありませんでした。

 取り回しにしても、電気モーターですが、バイクを跨がずにもスロットル操作で走らせることも可能です。バックもありますから、狭い敷地での切り返しも容易です。跨ったまま足をついていても前後に走らせられるのですから楽なのです。

環境性能だけではなく、低重心の感覚を得たいがための電動化

 それにしても、これほど早くバイクの世界に電気モーターがやってくるとは思いませんでした。もともと絶対的な燃料消費量が少ないのですから、環境性の要求がバイクにまで押し寄せるのはまだまだ先のことなのだろうと予測していたのです。

 ですが、Cエボリューションを転がして、少しわかったことがあります。環境性能の為だけではなく、低重心感覚を得たいがための電動化もありなのではないかと。それも一つのアプローチなのでしょう。

 C evolutionの価格(税込)は、159万円です。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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