ハリウッドスターや海外アーティストも虜に チェリーズカンパニーのBMW「R nineT」カスタムとは

BMW Motorradが2014年に取り組んだプロジェクト “R nineT Custom Project”は世界のシーンで大きな話題を集めました。なかでも東京のチェリーズカンパニーが手掛けたカスタムはハリウッドスターや海外アーティストなど著名人を虜にする魅力が込められています。

メーカー主導で行われた“R nineT Custom Project”

 カーショーへのエントリーが300台、そしてバイクの出展に至っては650台を数える我が国、最大のアメリカン・カスタム・カルチャーの祭典『YOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOW』(以下:HCS)は、夢のようなカスタム・マシンが並び、参加ショップがアワードのトロフィーを目指すコンペティション(競技)的な要素を持つ一方、カスタム業界に携わる人々にとっては、純粋なプロモーションの場として重要な役割を担っています。

去る12月1日にパシフィコ横浜で開催されたYOKOHAMA HCSに出展されたチェリーズカンパニーのR nineT最新作。ペイントはもとより、ホイールやカウルのデザインなど細かな相違点が確認出来ます

 たとえば、ここに紹介するチェリーズカンパニーによるBMW 「R nineT」をベースにしたカスタムは、同店によるセミオーダー的なコンプリート・マシン(完成車両)なのですが、あえて言えば今回のHCSへの参加は、アワードのトロフィーを狙うというよりは、ショップの一つの方向性を示す為のプロモーション活動といえるものかもしれません。

 2014年、メーカーであるBMWモトラッドが先導する形で46ワークスの中嶋志朗氏/ブラットスタイルの高嶺剛氏/ヒデモーターサイクルの富樫秀哉氏/チェリーズカンパニーの黒須嘉一郎氏に新車発表のタイミングに合わせてR nineTが供給され、それぞれが自由にカスタムマシンを製作する“R nineT Custom Project”というプロモーション活動が行われました。

2014年のBMW“R nineT Custom Project”で製作された一号機がコチラ。この一台はタンクやカウルなどがアルミ製の一品ものとなっています

 今回のHCSでチェリーズが披露したマシンは、明らかにその当時に製作された“Highway Fighter”が雛型となったもの。プロジェクトで製作された車両はワンオフ(一品もの)のアルミタンクやミニカウルを装着したものでしたが、パシフィコ横浜で開催されたHCSの会場で披露されたマシンは、外装にFRPを用いたキットバイク的な仕様となっています。

すべてを手作業で組み上げるチェリーズカンパニー製R nineTカスタム

 とはいえ、このマシンがパーツ単体で販売されることはなく、あくまでも“セミオーダー的なコンプリート”とするのは、ビルダーの黒須嘉一郎氏が必ず自らの手で製作に携わるがゆえ。日本国内はもとより、過去にアメリカの有名ハリウッドスターやタイの有名シンガーから“R nineTカスタム”のオーダーを受けた際も、黒須氏自身が現地にパーツを持ち込み、それぞれを組み上げたそうです。

タイの人気シンガー、“J”ジェットリンが、このマシンのオーナー。バンコク・ホットロッド・カスタムショーでもゲストとしてライドインを果たします

 また、FRP製のタンクカバーやミニカウルなどは“型”から起こしたものですが、フロントグリルやテールカウルなどは、オーダーにより一品モノとして製作。2014年から発売された初期型と2017年以降の現行R nineTではフレーム形状や細かな仕様も異なるそうですが、そうした部分はハンドメイドで対応し、完全なクオリティ・コントロールが果たされています。

BMW“R nineT Custom Project”で製作中の“Highway Fighter”。チェリーズ、黒須嘉一郎氏の優れた板金技術が伺えます

 実際、筆者(渡辺まこと)も2014年の“R nineT Custom Project”でのオリジナルマシンやタイの有名シンガーが乗る車両、そしてHCSに出展された車両をそれぞれ目にしましたが、ペイントのパターンや灯火類の配置など細かな違いはあるものの、良い意味で見分けがつかないほど高いクオリティに仕上げられている点は見事です。

目指すのはメルセデスAMG やBMWアルピナ?

 また筆者自身、過去にチェリーズのR nineTを試乗させて頂いたことがあるのですが、フロントを2インチ・ローダウンした上で純正より1.5倍、硬めのバネレートとなったフォークスプリングを内蔵する以外は、基本的に純正の走行性能をキープ。110ps/7550rpmを発揮するDOHC4バルブのボクサーツインの性能がいかんなく発揮されています。ここもスタイルとパフォーマンスを両立するチェリーズカンパニーというショップの姿勢を如実に表すものです。

ベースであるR nineTのパフォーマンスを、まったくスポイルすることなくカスタム化が果たされたこのマシン。当然、スタイルと走りを両立します

 たとえばビジネス的な話をさせて頂けば、ワンオフ(一品もの)のパーツで固められたカスタムマシンというものは作業時間や手間などを考えるとビジネスとして成り立ちにくい面があるのも現実なのです。

 しかし、そうした中、チェリーズカンパニーの黒須嘉一郎氏が行っているアプローチは多くのビルダーにとって光明をもたらすものかもしれません。

 チェリーズでは、これまで8台の“R nineT”を製作したとのことですが、ともすればこの先、さらにオーダー数を伸ばし、四輪のメルセデスAMGやBMWアルピナ、ケーニッヒのような存在に成り得る可能性を秘めています。見る人や乗る人に“夢”を与えるカスタムバイクですが、今や日本のみならず、海外からのオーダーも舞い込むチェリーズカンパニーのアプローチは、創り手たるビルダーにも夢を与えるものかもしれません。

【了】

【画像】チェリーズ製 BMW「R nineT」カスタム

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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