チョッパー雑誌の編集長が乗って感じた ヤマハのアメリカン「ボルト」に対して求めることとは

ヤマハが販売する「ボルト」は、ハーレー・ダビッドソンなどに見られる「アメリカン・スタイル」を踏襲したクルーザーモデルです。これまで歴代の様々なハーレーに試乗してきたカスタムバイク専門誌「チョッパージャーナル」編集長、渡辺まこと氏はこの1台に乗り、どのようなことを感じたのでしょうか。

ヤマハ「ボルト」には「ハーレーの影」がちらつく?

 足を前に投げ出すようなポジションになるフォワードコントロールや椅子にそのまま腰かけたような乗車姿勢となるミッドコントロール、さほど前傾姿勢とならないハンドルポジションなどを採用した、いわゆる『アメリカン』にカテゴライズされる車両は、この世に数多くありますが、その基準となる存在として『ハーレー・ダビッドソン』(以下:ハーレー)があるのは否めない事実ではないでしょうか?

ヤマハ「ボルト」に乗る筆者(渡辺まこと)

 1903年に創業し、1936年に『ナックルヘッド』が登場して以来、頑なに『OHV』と挟角45度の『Vツイン』という構造を(一部にVロッドやXGなどの60度ツインもありますが)守り続けてきた、このメーカーのモデルが、良くも悪くも日本の『国産アメリカン』のひとつの基準となっていると思います。

 そうした中、今回はヤマハの『ボルト』を試乗させて頂いたのですが、あらゆる部分で良くも悪くも「ハーレーのスポーツスターに似ている」と感じたのも本音です。もちろん、OHV・45度VツインのスポーツスターとSOHC・60度のボルトではエンジンの構造が根本的に違うのですが、エンジンをかけ、クラッチを繋ぎ、アクセルをひねった時に感じる加速は、アメリカンらしい『トルク』と『鼓動』を感じさせるものです。

 走らせた際は「お、なんかスポーツスターをチューニングしたみたいな感じかも」と筆者(渡辺まこと)も素直に思ったのですが、「スポーツスターみたいな」と、とっさに感じた部分には、やはり『ハーレーの影』がチラつきます。これは車体のスタイル的な部分においてもしかりではないでしょうか。

かつての国産アメリカンにはない楽しさを持つヤマハ「ボルト」

 とはいえ、この『ボルト』がツマラナイバイクかと聞かれると、決してそうではありません。先に述べさせて頂いた『鼓動感』や『トルク感』は、『アメリカン』らしさを感じさせるもので、排気量941ccのエンジンは鋭い加速も感じさせます。

アメリカンモデルらしい鼓動感をかんじさせるヤマハ「ボルト」のエンジン

 また、最新のモデルでも何となく信用できないハーレーのOHV45度のVツインよりもエンジンは「壊れなさそう」な印象です。たとえば、ハーレーという『ブランド』ではなく、純粋に「モーターのようなエンジンを搭載したものではなく、鼓動を感じるようなバイク」を求めているという人にはオススメ出来るモデルであると素直に感じます。

 1990年代、世の中でハーレーが一種のブームになり、多くの国産アメリカンが生産されましたが、それらはソフテイルに似たフレームの構造やライディングポジションなどスタイルこそ似てはいましたが、正直、エンジン自体がツマラナカッタ記憶があります。その多くが単純に400ccクラスだったからといえばそれまでですが、やはりエンジンの“テイスト”という部分では今回、試乗させて頂いた『ボルト』に軍配が上がります。

 たとえばバイクに絶対的な性能を求める場合、『速度』や『快適性』などが追及されて然るべきなのかもしれませんが、それよりも重視されるべきは『面白さ』なのでは? と個人的に思います。そうした意味で『ボルト』は合格といえるでしょう。

エンジンのテイストは合格点。しかし足周りは……

 ただ、絶対的な性能がすべてではないと言ったものの、ヤマハ『ボルト』のリアサスの動きの悪さは、改善すべきポイントといえます。

ヤマハ「ボルト」のリアサスペンション。かなり硬い乗り心地は改善の余地あり!?

 まぁ、気に入らない箇所があればカスタムしてしまえばいいというのも普段、筆者がバイクに対して考えるところなのですが、路面のギャップはもとより、マンホールのフタでも通過時に「ゴツッ」と感じるくらいの、リアサスがないリジッドのような乗り心地は「国産メーカーのモデルとしてどうなんだろう」と感じてしまったのも本音です。それもあえての味のうちと言われてしまえばそれまでですが……。

 そうした部分を差し引いても、この『ボルト』に乗り、感じさせられたのが、スペック上の絶対的な性能ではなく『テイスト』や『面白さ』を重視して生産されたものであるという部分と、日本メーカーの姿勢の変化のような気がします。

 たとえば数十年前なら、「よりスムースに」という部分を目指して『アメリカン・クルーザー』も作られたのでしょうが、ある意味、ゴツゴツと荒々しさを感じる乗り味には、ひとつの『深化』すら感じます。

 この先、ユーザーが求める限り、『アメリカン』モデルは各メーカーから生み出されるのでしょうが、たとえば同じヤマハの“V-MAX”のようにオリジナリティを感じるデザインのものが生産されることを個人的には希望する次第です。実際に乗ってみて『悪くない』『面白い』と感じるからこそ、そこに『独自性』があれば……と願ってやみません。

【了】

【画像】ヤマハ「ボルト」を徹底解明!

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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