乗ってわかった、ドゥカティ新型「パニガーレV2」の立ち位置とは?
ドゥカティ伝統のLツインエンジンが進化を遂げ、それを継承する新型「Panigale V2(パニガーレV2)」に松井勉さんが試乗しました。会場となったへレスサーキット(スペイン)で走らせた印象は?
Lツインのトップレンジ、進化の方向性が見えた
スペイン南部、ヘレスサーキットへは、マドリードでの1泊を含み2日間の旅となりました。MotoGPも開催されるこのサーキットは、やはりどこかオーラが違います。

メインストレートの真上にある円形の建物の中で行われたプロダクトプレゼンテーションでは、このサーキットを選んだ理由も語られます。パニガーレV2の良さをしっかりと試してもらえるのが、ほかならぬヘレスだというのです。
コース全長4400mちょっと、右ターンが8カ所、左ターンが5カ所で構成されるテクニカルなコースで、長いストレート区間のあとにはタイトターンが待ち構えるほか、鈴鹿で言えば、デグナーやスプーンのような、入り口から出口までをしっかり考えないといけないカーブが続きます。
今回はサーキットでの試乗のみということもあり、タイヤはOEM装着のピレリ・ディアブロ・ロッソコルサIIから、サーキット用のピレリ・ディアブロ・スーパーコルサに履き替えられ、フロントにソフト、リアにミディアムという組み合わせを装着しています。

また、ミラーやナンバープレートなど保安部品の一部も取り外された状態です。例えるなら、トランスポーターにバイクを積み、サーキットのスポーツ走行にやってきた、という想定になると思います。
ヘレス初体験の私は、冒頭10分の慣熟走行セッションでコースに慣れ、バイクの素性も確認することに集中します。3つのライディングモードからは「スポーツ」を選択します。これはエンジン特性やトラクションコントロール、ウイリーコントロール、ABSなどの介入レベルが、いわゆる峠道の走行を想定した一般道仕様です。
この段階でパニガーレV2がサーキットを攻める以前から安心して走ることができるバイクだと感じます。ブレーキング時やコーナリング中に感じるフロントフォーク、リアサスペンションが見せる荷重の受け止め方、じっくりと荷重をタイヤに伝える印象です。ハード過ぎず、しっかり動きながら動きすぎることがない、という印象でとてもわかりやすいのです。

テストは15分×4本のフリー走行です。ライディングモードは「レース」を選択します。ウイリーコントロールやトラクションコントロール、ABSもサーキット用に適した設定です。
最初はどんな尖がった走りになるのか、と緊張しましたが、「スポーツ」同様低回転からスムーズなトルクを生み出すエンジンは、5000回転あたりから10000回転付近まで扱いやすい盛り上がりで吹け上がっていきます。114kW(155PS)のパワーも右手に同調して素直に湧き上がる印象で、怖さがありません。
このエンジン統制は、パニガーレV2の魅力を身近にさせます。そして旋回力ですが、サーキット用のタイヤなので本日限定かもしれません。しかし、とにかくクセがないハンドリングは最初に感じた印象どおり、サスペンションの荷重の受け止め方がスイートかつ安心感があり、タイヤと対話をしながら走る印象です。
もちろん不慣れなコースなので、ペースを上げるほどにラインを外すこともあるのですが、次のラップにはその補正もしっかり決めやすいコントロール性の良さも確認できました。

これらはパニガーレV2に与えられた2気筒モデルのトップレンジながら、親しみやすいパッケージが嬉しいものです。だからといってヤワではありません。コントロール性の精度、質感の高さこそ大きな魅力です。
パニガーレV4や、2018年のMotoGPワークスマシンと同様の電子制御技術を搭載しただけあり、ペースが上がり、深く寝かした状態からアクセルを開け始めても、わずかにスライドしたリアタイヤのスリップコントロールも従来のようなパワーを絞る印象ではなく、まるで少しだけ滑ったリアを許容するかのように、前へ前へと進めてくれる印象です。
正直、あまりのスムーズさに電子制御が介入したと思えないほどです。そんな、人の感覚に自然なところも魅力だと感じました。

結論として、パニガーレV2と短時間で信頼関係を築くことができ、最高のコーナリングファンを楽しめたということは、エンジンの排気量、最高出力などのスペックではなく、走りの友として素晴らしいパッケージである、と言えるのです。
【了】
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。