価格も含むホンダ「CB650R」の総合力の高さに感服! これぞ最新版CBのスタンダード!!
「CB60周年」の節目に登場したホンダ「CB650R」は、新世代CBシリーズを象徴する凝縮感のある台形プロポーション、扱いやすい車体サイズに伸びやかな回転フィーリングを堪能できる直4エンジンを搭載し、操る楽しみに焦点を当てた開発がされています。
次世代CBシリーズ共通の台形プロポーション
凝縮感に満ちたプロポーションにラウンドシェイプ(丸型)のLEDヘッドライトは、「CB1000R」をフラッグシップに「CB250R」「CB125R」までラインナップされる、新世代CBシリーズの共通スタイルです。

前方へ向かって張り出す燃料タンクは力強く、絞り込まれたニーグリップ部と抑揚のある立体表現が存在感を強調しています。シュラウドは金属の素材感を施しつつテールエンドは大胆なまでに短く、マスの集中化を推し進めたダイナミックな動的性能をひと目で想像させるのでした。
前モデルはV字型ヘッドライトでマッシブなフォルムの「CB650F」です。楕円断面形状のスチール製ツインチューブフレームを継承しつつ、ピポットまわりやエンジンハンガーを刷新し、軽量化と高剛性化を高次元で両立しています。
乗車スペースをタイトに設定するとともに、シルエットに一層の軽快感を与えるためシート後端はCB650Fよりも約60mm短縮しています。シートレールの変更、ステーの廃止、コード類の短縮もあり、約6kgもの完成車重量低減を実現しました。
バネ下の軽量化が徹底され、アルミホイールのY字型スポークは6本から5本の新デザインとなって各部薄肉化され、ホイールだけでフロント440g、リア530gも軽くしているから、開発陣のこだわりを感じずにはいられません。

こだわりといえば、マスの集中化も妥協がありません。ショートテール化や短いマフラーなど一目瞭然ですが、灯火器など車体前後端に位置する部品をより重心近くへ再配置しています。
LEDヘッドライトは奥行きを従来より約25%短縮し、新形状のアルミダイキャスト製ヘッドライトステーによって約97mm車体中心側へ移設しています。さらにキーシリンダーの位置さえも車体重心へ近くなるよう移動していますから、この一貫性、さすがはホンダと言えるでしょう。
音でも感じる胸のすくエンジン回転の上昇感
ライディングポジションは相変わらずアップライトですが、CB650Fと比較すると、ステップ位置が後方上へ移ったため、荷重をかけやすくなりました。より軽快に操ることができ、車体との一体感も高まっている印象です。

そしてなんと言っても直4エンジンが刺激的で、走りをエキサイティングにしています。ワインディングでキビキビ走ってくれるのは、スロットル全閉から中開度領域の3000回転から8000回転あたりのスロットルレスポンスが鋭いおかげ。
それに7000回転付近からの吹け上がり感が官能的で、直4ならではと言っていいでしょう。最高出力95PSを発揮する12000回転のピークにかけ、谷間のない上昇フィーリングが味わえます。
ヘルメット越しに聞こえるサウンドも、胸のすく吹け上がり感に寄与しています。テールパイプ後端角度をCB650Fより35.4度も上向きにし、200Hzから800Hz(低・中音域)帯の音圧を上昇させ、ライダーが排気音をより楽しめる構造になっているのです。
フロントフォークは倒立式にアップグレードされ、ボトムブリッジも鉄からアルミ鍛造品に変更。リアサスペンションはスイングアームとの締結部にピロボールが新採用され、クッション作動性と路面追従性を向上させています。

ブレーキの進化も見逃せません。キャリパーがラジアルマウントとなり、直径310mmのフローティングディスクとの組み合わせで、入力に対しリニアなタッチと強力な制動力を確保しています。シフトダウンに伴う急激なエンジンブレーキも、スリッパー機構を搭載することで後輪ホッピングを軽減してくれました。
HSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)も搭載し、後輪スリップを緩和します。電子制御も加わって死角なき完成度の高さです。ミドルクラスならではの扱いやすさがあり、車体サイズもジャストフィットです。
肝心な車体価格も100万円を切る97万9000円(消費税10%込み)です。このトータルバランスの高さ、総合力こそが“CB”であり、そういう意味ではこの650こそ最新版を代表するCBのスタンダードモデルなのかもしれません。高く評価できますし、選ぶ人は賢明です。
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。