2ストバイクの人気は根強い! 1990年代のエンデューロブームを牽引した名車たち
かつて1980年代後半から1990年代半ばにかけて、日本では“エンデューロブーム”が巻き起こりました。時代は『ジャパンスーパークロス』開催など、アメリカのオフロード、モトクロス文化が日本でも浸透し、バブル絶頂期でもあったのです。
90年代エンデューロブームと共に駆け抜けた2ストトレール
エンデューロ、つまり「エンデュランス=耐久性、持久力」を競う2輪レースのことで、日本では主に、山間部やオフロードコースなどを長時間走行して順位を決める競技を指しています。
当時の2輪専門誌(雑誌)を見て気づかされるのは、エンデューロの記事やイベントがやたら多いこと! 今ではロードバイクのみを取り上げる雑誌も、かつてはオフロードバイクの記事が多くの割合を占めていました。
『ジャパンスーパークロス』を筆頭に、観る競技としてのモトクロスも人気が高かった時代ですが、一方で、長時間自分のペースで走ったり、仲間と組んで楽しめるエンデューロが一大ブームになりました。
そのブームを支えていたのが、国内メーカーから発売されていた2ストロークエンジンを搭載するトレールバイクです。
カワサキ「KDX200SR」やスズキ「RMX250S」、ヤマハ「DT200WR」、ホンダ「CRM250R」と、国内全メーカーから発売されており、公道走行可能な車両でありながらハイパワーかつ軽量で、保安部品を外しただけでかなりの走破性を誇っていたのです。
スズキは「オートリメッサ」、ホンダは「無限」など、レーシング系のアフターパーツも揃っており、チャンバーやサイレンサー(排気系部品)、レース専用CDIなどを装備する手法もありました。
1989年に初登場となったホンダ「CRM250R」の、当時のニュースリリースでは“本格的なオフロード走行が楽しめる2サイクルランドスポーツバイク”という表現となっています。
当時は“ランドスポーツ”と呼ばれていました。
CRM250Rは、新開発された水冷2ストローク排気量246ccの単気筒エンジンを搭載し、ホンダ独自の可変排気孔バルブシステムなどが搭載される一方で、エンジン振動を低減するバランサーも配置されました。
ちなみにライバル車のスズキ「RMX250S」は1人乗りの専用設計で、バランサーを排除した極めてモトクロッサー「RM250」に近いマシンでした。今では考えられませんが「街を走ることができるレーサー」的な、過激なマシンでもあったのです。同時にエンデューロレーサーの「RMX250」も発売されています。
その後、CRM250Rはエンデューロブームを踏まえてモトクロッサー「CRシリーズ」で得た技術をフィードバックさせたモデルを1994年に発表します。排気タイミングの電子制御や排気系パーツの一新などでトルクも増大し、一躍人気モデルとなりました。
CRM250Rは1996年、燃費の向上と出力特性を高めた「AR燃焼エンジン」を搭載した「CRM250AR」を発売しましたが、1999年を最後にラインナップから姿を消しています。また「RMX250S」も、1998年が最終型となっています。
2ストロークモデルに対抗すべく、ツインカムの4ストローク空冷エンジンを搭載したヤマハ「TT250R」(1993年)や、クラス最軽量油冷エンジンを搭載したスズキ「DR250R」(1995年)など、4ストロークのトレールバイクも充実し、これらのモデルもエンデューロでは人気を誇りました。
環境問題とは切っても離せないのですが、これら4ストロークモデルの軽量化や高性能化、そしてその後のモトクロッサーにも4ストローク化の波が一気に押し寄せ、2ストトレールバイクは行き場が無くなっていきました。
しかし! 2ストロークならではの魅力が色褪せないことも事実です。日本ではヤマハ、海外ではKTMやBETAなど、2ストロークエンデューロレーサーは年々進化し、今でも人気の高さを誇っているのです。
【了】