船大工が手掛ける木造自転車 高級木材マホガニーを使った乗ってナンボの実践ロードバイクとは?

日本の自転車ビルダー(自転車を作る職人のこと)やマニアックな商品作りを行うメーカーの製品が見られる、毎年恒例の「2020ハンドメイドバイシクル展」で展示された自転車の中から、際立った特徴を持つ自転車をピックアップして紹介します。

一線級のパフォーマンスを誇る木造自転車

 戦後200社以上あったというバイクメーカーが、現在の4大メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)となって久しいですが、自転車の世界では、いまも小規模な製造メーカーが数多く存在しています。

ステムと一体式のハンドルバー。強度が必要な締め付け部以外は中空構造になっているというから驚きだ

 というのも、原動機を搭載しない自転車はモーターサイクルよりも遥かに構造がシンプルなので、(モーターサイクルに比べて)大規模な生産設備は必要なく、個人でも製造できるからです。そのため、オーダーメイドという贅沢な生産方式もまだまだ健在です。

 かのゴットリープ・ダイムラーが1885年に発明した世界初のモーターサイクル「リートワーゲン」は、木製の車体構造に排気量264ccの4ストロークエンジンを搭載したものでした。

 その後、モーターサイクルは鉄馬へと発展して現在に至りますが、同じ2輪車でも自転車の世界では、現在も木材を採用するモデルがいくつか存在しています。その代表とも言えるのが、佐野末四郎(さのすえしろう)氏が手掛ける「Mahogany Bike(マホガニーバイク)」です。

 その名の通り、高級木材であるマホガニーの積層材を使った自転車です。

佐野末四郎氏が手掛ける「Mahogany Bike」(写真/2020ハンドメイドバイシクル展)

 佐野氏は江戸時代から続く木造船の造船所に生まれ、まだ10代の頃から船大工として活躍してきた人物です。2008年から造船技術を応用した自転車の製作を始めると、圧倒的な技術力がたちまち多くの人々の称賛を浴び、いまやその名声はアメリカやヨーロッパといった海外にまで広まっています。

 他の木造自転車とMahogany Bikeの大きな違いは、フレームだけではなく、フロントフォークやハンドルバー、サドルシートポスト、リムといった主要パーツまで、すべてマホガニー材を使って作られていることです。

 しかも、多くのパーツは内部をくりぬいて中空構造にすることで、軽さと高い剛性が両立されているのです。ただ美しいだけではなく「速く快適に走る」というロードバイクの本義に真剣に向き合って作られた自転車なのです。

 一方で、製造には多くの手間と時間がかかるため、年産約3台、価格は1台230万円と、自転車としては超ド級のプライスですが、佐野氏曰く、それでもまったく商売にはならないと言います。

 Mahogany Bikeの特長や設計思想について、佐野氏は次のように話します。

「マホガニーバイクはペダルを踏み込んだときに車体を意図的にたわませ、その反発力で脚力をアシストするという、従来のロードバイクとはまったく異なる設計思想で作られています。しなやかな木材は体への負担も軽減させるので、ロングライドではとくにその恩恵を強く感じられます。3年半で約4万kmを走破した70代のオーナーさんもいらっしゃいます」

「Mahogany Bike」を作り続ける佐野末四郎氏(写真/2020ハンドメイドバイシクル展)

 Mahogany Bikeのパフォーマンスに絶大な自信をもつ佐野氏は、転売や投機目的の方にはいくらお金を積まれても販売するつもりは無く、すでに4年先までバックオーダーを抱えているそうです。

【了】

【画像】木造自転車だと!?(6枚)

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Writer: 佐藤旅宇(ライター)

オートバイ専門誌『MOTONAVI』、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経てフリーライターに。クルマ、バイク、自転車、アウトドアのメディアを中心に活動中。バイクは16歳のときに購入したヤマハRZ50(1HK)を皮切りに現在まで20台以上乗り継ぐ。自身のサイト『GoGo-GaGa!』も運営する1978年生まれ。

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