インドネシアの新時代を感じさせるホンダ「Revo X」カスタム さり気なく技巧を凝らした珠玉の一台

小排気量車ベースのバイクを中心に熱い盛り上がりを見せるインドネシアのカスタム・シーンでは、製作されるマシンの姿にちょっとした変化が起きているようです。

アンダーボーン型バイクをベースにスタイルを一新

 あたかも回転軸がないように見えるハブレスホイールや片持ちの前後サス、そしてハンドメイドで造られた多気筒エンジンなど、我々に驚きのアイデアと技術を見せつけるインドネシアの小排気量バイクのカスタムですが、ここに紹介するハウス・オブ・チョッパーのBoni Priyundation氏による“ENTUK MLEUK”と名付けられた一台は『来る新時代』を予感させるものかもしれません。

レトロとも未来的とも取れる独特のデザインが与えられた“ENTUK MLEUK”。どことなく過去の『SUZUKI SW-1』を彷彿とさせるようなスタイルです

 ベースとなったのはスーパーカブとスクーターをミックスさせたかのようなスタイルを持つホンダ「Revo X」。いわゆる東南アジアでよく見かけるタイプのモデルなのですが、しかし、このカスタムにはストックの面影が一切ありません。

 また、これまでインドネシアのカスタムといえば美しい彫金をエンジンに施したり、原色系の派手なフレーク(金属の粒を塗料に混ぜる手法)・ペイントなどが印象に残る車両が多かったのですが、“ENTUK MLEUK”はあくまでもシンプル。ベージュ系のベースカラーに木の温もりを感じさせるウッドパネルが貼り付けられた姿はアメ車の「グランドワゴニア」や英国車であるミニの「カントリーマン」を彷彿とさせるもので、どことなく気品を感じます。
 
 全体のスタイルは1930年代の『ストリームライン・モダン』や1950年代の『レトロフューチャー』を感じさせるデザインになっており、陳腐な表現になってしまいますが、ズバリお洒落です。

“ENTUK MLEUK”のベースになったホンダ「Revo X」

 そうした外観から“分かりやすく”手が加えられた車両が多いインドネシア・カスタムの中で、どことなく大人しい印象すら感じさせるこの一台ですが、実際はあらゆる箇所がワンオフ(一品もの)となっており、前後フェンダーやヘッドライトナセル(カバー)、ハンドルやフレームも然り。またフロントフォークもカブ系のボトムリンク方式に変更され、リアサスもモノショック化されているのですが、写真をご覧いただければ如何にノーマルのRevo Xから姿を変えているかがお分かりになると思います。

「ギトギト系」から「出汁のきいた上品系」に!?

 加えてこの車両はエンジンにもハンドメイドのカバーが取り付けられ、それがベースマシンの正体が不明なムードにつながっているのですが、全体のバランスはもとより、こうした細かな技がビルダーのテクニックを感じさせるものとなっています。ある意味、メーカーのコンセプトマシンのような雰囲気には感心させられることしきりです。

フルカバードすることによって、どことなく旧いベスパのようなムードとなったエンジンは110ccのホンダRevo X。キャブ全体を覆うエアクリを兼ねたカバーも良い雰囲気です

 これまでのインドネシアのカスタムをラーメンにたとえると「味濃いめ、油多め」のギトギト系のようなイメージで、カスタム・ファン目線で見るとそれはそれで楽しかったのですが、こうした「薄味に感じるものの、しっかり出汁が効いている」マシンを見ると新たな時代の到来を感じさせます。

 ちなみにこの“ENTUK MLEUK”は、昨年10月にインドネシア・ジョグジャカルタで開催されたカスタムショー “KUSTOMFEST 2019”に出展され、日本からゲストとして招かれたムーンアイズとカスタムワークス・ゾンからのピックをダブルで受賞したのですが、そうした結果も頷ける納得のクオリティは、きっと写真からも伝わるのではないでしょうか?

 あくまでも「さり気なく」技術とセンスを取り込む……赤道直下の国のカスタム・シーンの将来が、ますます楽しみになる一台です。

【了】

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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