高級金属チタンでフレームを作る 優れた職人的技術で実現した自転車のフレーム

「2020ハンドメイドバイシクル展」に集まる国内の一流ビルダー(自転車を製作する職人)の中でも、異色の存在感を放っていたのがチタンフレームを専門に製作する「WELD ONE(ウェルドワン)」です。

加工困難な優れた金属を、高い技術で自転車のフレームに

 京都に本拠を置く『WELD ONE(ウェルドワン)』は、『OGRE bicycle』というブランドでチタンを利用したロードバイクやMTB(マウンテンバイク)のフレームを手掛けています。

ウェルドワン「OGRE RS-A1R」(写真/2020ハンドメイドバイシクル展)

 モーターサイクルのようなサスペンション機構を持たないロードバイクは、フレームの素材がパフォーマンスに大きな影響を与えます。現在、高性能ロードバイクのフレーム素材は軽くて強く、設計自由度の高いカーボンファイバー製が主流となっています。

 チタン合金は絶対的なパフォーマンスではカーボンに敵わないものの、金属でありながら圧倒的に錆に強く、バネ感のある独特の乗り味がラグジュアリーな“一生モノ”の高級自転車として認知されています。

 また、溶接や加工が難しいため、製造するメーカーが少ないこともマニアの所有感をくすぐる要因となっています。

「OGRE RS-A1R」と名付けられたこのモデルは、細身のチタンパイプを使用した超軽量モデルです。シートステー部だけ振動吸収性が高いカーボン素材を接着したハイブリッド構造を採用しており、完成車状態で車重6.7kgと、最新のカーボンバイクと遜色のない数値を誇っています。

 ビルダーの小西氏は優れたTIG溶接技術と成形技術で、チタン合金をまるで飴細工のように自在に操ります。自転車のフレームに使用されるチタン合金は、モーターサイクルのエキゾーストによく用いられる純チタンよりも加工が難しいと言います。

溶接でステム一体型としたチタン製ハンドルバー

「薄肉のチタン合金を曲げるのは高度な技術が必要です。機械曲げは内側に金型の跡が残ってしまうため、すべて手曲げで仕上げています」(WELD ONE代表 小西栄二氏)。

 ステムと一体に溶接され、美しいカーブを描くチタン製のハンドルバーは、他ではまず見られないディテールです。

 フレームに描かれたグラフィックは塗装ではなく、陽極酸化によって描かれたもので「自転車のグラフィックをこうしたテクニックで描くのは、おそらくウチだけだと思います」と小西氏は言います。

「OGRE RS-A1R」の価格(税別)は、フレーム単体で65万円(税別)とのことです。

【了】

【画像】チタンフレームの自転車だと!?(6枚)

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Writer: 佐藤旅宇(ライター)

オートバイ専門誌『MOTONAVI』、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経てフリーライターに。クルマ、バイク、自転車、アウトドアのメディアを中心に活動中。バイクは16歳のときに購入したヤマハRZ50(1HK)を皮切りに現在まで20台以上乗り継ぐ。自身のサイト『GoGo-GaGa!』も運営する1978年生まれ。

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