美しいペイントワークと彫金でクオリティを追及 インドネシアのカブ・チョッパー事情に迫る

スーパーカブなどの小排気量車をベースにしたカスタムバイクは現在、アジア圏を中心に熱い盛り上がりを見せています。なかでもインドネシアで製作された車両は大排気量のカスタムバイクに負けない高いクオリティが与えられていることも少なくありません。

カブらしいシルエットはそのままにインドネシアらしいテイストを加味

 中国にインド、そしてアメリカに次ぎ世界の人口4位(出展:外務省/2017年の統計)に位置するインドネシア……ジャワ島を中心に1万3466もの大小の島により構成されるこの国には2億6400万人を超える人々が暮らしているのですが、『みずほ総研』のデータによるとその中の約65%の家庭がバイクを所有しています。

インドネシア現地生産の1986年式HONDA ASTREA C800がこのマシンのベース。フロントのスプリンガーフォークやハンドシフトによって「チョッパー感」が高められています

 つまりは国民の二人に一人がバイクに乗っている計算になるのですが、その中での主力となるのが日本製、もしくは日本の現地法人で生産された100~125ccクラスのモデルたちです。四輪の価格が100~200百万ルピアなのに対して約1/10となる10~15百万ルピア(日本円で8~12万円くらい)で購入できる小排気量バイクは、多くの市民にとって「日常のアシ」となっているのですが、実際に現地のカスタム・ショーに出展される車両を見ても、やはりこのクラスのモデルが中心になっています。

 毎年10月の第一週、インドネシアの古都『ジョグジャカルタ』で開催される『KUSTOMFEST』は、他のアジア圏で行われるカスタムイベントの例に漏れず「小排気車カスタムの宝庫」といえる催しなのですが、ここに紹介する「PRIWE CUSTOM WORKS」というショップによる一台は、まさに典型的な『インドネシアン・スタイル』のマシンと呼べるかもしれません。

 ベースとなったのはホンダ「ASTREA C800」という現地生産のカブ系85ccモデルなのですが、ご覧のとおり、その姿はノーマルからガラリと変えたもの。「JAY AIRBRUSH」というショップが手掛けたメタルフレーク(金属の粒を塗料に混ぜる手法)のペイントワークや金属部分に施された彫金の細かさなどは見事に尽きるものとなっています。

 またフロントに取り付けられたフォークにしてもノーマルのボトムリンクを改造し、モノサス(一本サス)スタイルのスプリンガーにモデファイ。ハンドシフトに変更された変速方式やリアサスペンションの変わりに装着されたリジッドバーと相まって「チョッパーらしさ」を強調します。

細部の統一感にも徹底して拘ったカスタム・カブ

 LEDが内蔵されたヘッドライトやテールライト周りのボディ、前後ホイールのハブにも車体と同系色のペイントが施されており、一台のカスタムとしての完成度が高められていることも見逃せないポイントです。こうして見る者に「分かりやすく」手が加えられている部分は、インドネシアのマシンらしいフィニッシュといえるでしょう。

心臓部は日本が誇る85ccのホリゾンタル(水平)単気筒。エンジンの随所に施されたエングービング(彫金)も見事です

 たとえば現在、我が国、日本のカスタムマシンやチョッパーは世界から注目を集め、高い人気を博しているのですが、あえていえば小排気量車系のマシンに関しては既に赤道直下の島国であるインドネシアが世界トップレベルにあると思います。もちろん、ビジネス的な側面を考えると大排気量車のカスタムが中心にある日本の中で、ここまで「カブ系」の車両に手を加えることは現実的に難しいのかもしれませんが、限られた状況の中でこれだけのクオリティのマシンを創り上げるインドネシアのカスタムビルダーの情熱には感服させられるのが正直なところです。

 願わくばこの先、インドネシアが経済的に発展し関税の状況が変わり、大排気量車がカスタムの中心軸になったとしても、個人的にはこのマシンのような「ミニ・チョッパー」のカルチャーが未来に残り続けていってほしいと思う次第です。

【了】

【画像】圧巻のクオリティ! インドネシアらしさあふれるカスタム・カブ(8枚)

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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