BMWモトラッド新型「F900XR」は稀有な存在!? あらゆる舗装路面をスポーティに走破するパッケージの乗り味とは?

BMW Motorradの新型「F900XR」は、並列2気筒エンジンを搭載するミドルクラスのアドベンチャーモデルです。旅先で遭遇するあらゆる舗装路面をスポーティに走破する性能とは? スペインで試乗した松井勉氏のインプレッションをお届けします。

あらゆるシーンで楽しめる、ありそうで意外と無いキャラクター

 目の前にしたBMW Motorrad(以下、BMW)新型「F900XR」をサイドスタンドから起こすと、見た目から連想するより遙かに軽く、スっと動きます。

BMW Motorrad新型「F900XR」に試乗する筆者(松井勉)

 これは、2輪では初採用という新製法の樹脂製燃料タンクが、金属製より軽量化したことが大きいと言えるでしょう。

 エンジンベースとなった並列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーモデル「F850GS」がそうであるように、燃料タンクはエンジン上、コンベンショナルな位置に搭載されてなおこの軽量感です(歴代「F」シリーズモデルはシート下に燃料タンクを配置していた)。

 試乗したモデルは、リアにダイナミックESA(電動式イニシャルプリロード調整を含む電子式セミアクティブダンパー調整サスペンション)を備えています。

 キーレスライドなどの日常域の使い勝手の良さはもちろん、ライディングモードもオプションのダイナミックプロモードを含む上級グレードです。

排気量が853ccから895ccへ拡大された水冷並列2気筒OHC4バルブエンジンを搭載

 そのほかにも、滑りやすい路面でリアタイヤがアクセルオフの際にスリップを防止する「エンジン・ドラッグ・トルク・コントロール」も新採用されています。この電子制御デバイスは、アクセルをオフにした瞬間、グリップを失うような場合に威力を見せます。わずかにスロットルバルブを開けることで後輪の回転を維持し、グリップを失わないようにするのです。

 スリッパークラッチも装備しますが、この装置はリアタイヤがグリップしている前提で作動します。

 テストが行われたスペイン、アルメリアは地中海に面した町で、海岸沿いに建つホテル周辺は、朝になると海からの霧に覆われる場面もありました。

 そんな朝、試乗テスト開始直後のホテルからの道を走ると、塩分を含んだ霧がうっすらと路面を濡らし、それが路面の埃と混ざり合い、驚くほど表面がヌルっと滑る瞬間があるのです。

 午後、帰着するときにはそれが無かったので霧による状況変化だと思うのですが、こんな場面で活躍してくれる装置だと考えます。アクセルオフ時のトラクション確保デバイス、ともでも言いましょうか。ABSなどと連携して高い安定性を保つことは間違いなさそうです。

BMW Motorrad新型「F900XR」に試乗する筆者(松井勉:身長183cm)

 街乗りでの足まわりは快適です。スピードバンプが点在する道を走るとき、前後170mmのサスペンションストロークはそれを綺麗にいなして行きます。ロータリー型の交差点を旋回しながら直進するような場面でも、切り返し時にしっかりと路面を捉える良い足です。

 エンジンのフィーリングは、同型エンジンを搭載するF850GSとの比較ではボトムエンドトルクが増え、スムーズに感じます。ECU(エンジン・コントロール・ユニット)を含め細かなアップデイトがされた部分はさすが、早速伝わってきます。何より始動直後のエンジンノイズがなく、質感向上は間違いなしです。

 試乗ルートは程なく高速道路へ。入り口から合流ではパンチのある加速が気持ち良く、900のエンジンは実力を見せつけます。50km/hで6速が使えるスムーズさも持ち合わせつつ、アクセル全開にしてもスムーズなトルクデリバリーでレッドゾーンまで素早く回りきる多面性。盛り上がりは決してドラマチックではないものの、この加速を味わえば、だれもが満足するのではないでしょうか。

 車体は安定感があり、空気の流れもスムーズで快適さが伝わります。走行中でもレバー1本で簡単に調整できるウインドスクリーンは使いやすく便利です。スムーズな乗り心地を提供するサスペンションと合わせて高いツーリング性能を味わえます。

BMW Motorrad「F900XR」(2020年型)

 海岸線と並行した高速道路から、山岳部へ向かう道に進みます。小さな集落を通り、家々の間を抜ける細い道でも機動性は抜群です。左右への切り返しにも重みやクセはなく、ハンドリングは雑味のないクリアさ。アドベンチャーバイクは重たいから、という人に是非お勧めしたい身のこなしです。

 さらに走り山岳路へ。左は開けた崖、右には山肌、というタイトで見通しと路面変化のある良路とは言えない道です。前後のブレーキは操作しやすく、減速時の車体のピッチングも適正な範囲です。

 同時に発表されたF900Rと比較すれば、前後のピッチングは大きいものの、そこはライダーの操作次第です。ダイナミックESAなら、サスペンション設定をダイナミックにすれば、その動きも格段に小さくなります。

 エンジンも適正なギアを選択しておけば、アクセル操作に集中できるフラットなトルク特性で、こうした場面ではその力強さが光ります。それでいて手強すぎないほどよいパワー、走りに集中して楽しめるタイプです。

BMW Motorrad新型「F900XR」に試乗する筆者(松井勉)

 さらに道が細く、路面の荒れたルートも走破しました。ダンパーの設定をロードに戻し、路面追従性をあげてみます。切り返しが忙しい加速と減速の連続、しかしそれがいっこうに苦にならない、いや正直最高に楽しい。ここにF900XRの真髄が見えました。

 ライダーが望む速度でそれぞれの面白さを提供してくれるバイク。ありそうで探すと意外に無い、そんな希有な1台、それが私の結論。良いバイクです。

※ ※ ※

 BMWの2020年新作「F900XR」の価格(消費税10%込み)は114万8000円から。日本での発売は2020年2月25日です。BMW Motorradのすべてのモデル(新車)にはETC2.0を標準装備しています。

【了】

【画像】BMW Motorrad「F900XR」(13枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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