台湾キムコの軽二輪スクーター「ターセリーS150」 その乗り味や使い勝手は?

台湾No.1のバイクブランド「KYMCO(キムコ)」は、原付や原付二種、軽二輪など様々なクラスのスクーターを日本国内市場に送り込んでいます。ここではヨーロッパでも人気の高いハイホイールスクーター「ターセリーS150」の実力を検証していきます。

今後のバイク市場の主軸は原付二種と軽二輪に?

 1980年代、かつては年間で300万台を誇った我が国のバイク販売台数ですが、現在はその最盛期の10分の1、約30万台にまで落ち込んでいるといわれています。

 その理由として2006年から施行されたバイクに対する駐車違反の取り締まり強化や、『若者のバイク離れ』などがありますが、中でも50ccクラスの原付一種の販売台数の落ち込みはここ数年、特に顕著です。

KYMCO製の軽二輪スクーター「Tersely(ターセリー)S150」に乗る筆者(渡辺まこと)

 近年では125ccクラスの『原付二種』の販売台数が『原付』に迫る勢いですが、ともすれば50ccクラスのバイクがこの世から消滅するのでは? という説も出ています。たしかに世界規模で市場の動向を見ると、それもあながち的はずれではないように思えます。

 ちなみに世界のバイク市場では『50cc』というカテゴリーが存在するのは日本や世界の一部地域のみ。あたかも独自の生態系を有する『ガラパゴス』のような状況になっているのですが、我が国でも将来的には普通自動車の免許で125ccクラスの原付二種までが運転可能になるという話しもあります。そうしたことを踏まえて考えても、この先の未来は、ますます125~150ccクラスのバイクがシェアの中心になっていくことが予想出来ます。

 その世界市場で中心となる小型バイクの中で近年、販売台数を伸ばし続けているメーカーが台湾の『KYMCO』です。正直、ここ日本では、まだマイナーなイメージの同メーカーは1964年に台湾南部の高雄市で『光陽工業』として設立され、技術協力契約を締結した本田技研工業の現地法人的な立場である『光陽ホンダ』として企業活動を行っていくのですが、1992年に自社ブランドである『KYMCO』を設立。現在に至っています。

 ちなみにこの『KYMCO』、先ほど日本では「まだマイナーな存在」と書かせて頂いたのですが、母国の台湾では2000年から20年連続で販売台数1位を獲得。シェアの33%を誇るのですが、ヨーロッパ圏においてもスペインやドイツでスクーターの販売シェアで1位となり、イタリアでも3位という販売実績を誇ります。

高いシェア率を誇るKYMCOに軽二輪スクーター「ターセリーS150」

 今回はその『KYMCO』スクーターの中で『Tersely(ターセリー)S150』を拝借し、試乗することになったのですが、結論からいえばこの手のバイクで求められるべき『利便性』という部分においては、かなり優れた車両といえるのではないでしょうか。

スペックによると車体全長は2085mmという『ターセリーS150』ですが標準装備のウインドシールドやリアボックスゆえ、他の同クラスの車種より大柄に感じます。フロント16インチというハイホイールも大きく影響しているかもしれません

たとえば標準装備のウインドシールドは多少の雨風ならものともしませんし、シート下のスペースはフルフェイスのヘルメットが楽に収納できる容量を誇ります。加えてこの箇所にはUSBポートが備えられているのでスマートフォンはもちろん、タブレットやノートパソコンなどを走行中に充電することが可能です。

 ちなみにこの『ターセリーS150』にはメーター右下にもUSBポートが存在するので、ハンドルまわりにスマホホルダーを装着すれば充電およびナビゲーションとして使うことも可能なのですが、同クラスの他メーカーの車種と比較しても、こうした『便利さ』では一段上をいくものです。またリアに装着されたボックスもフルフェイスのヘルメットが収納可能な上、鍵もメインキーと共通になっています。不必要な時はワンタッチで取り外すことが可能な点も嬉しいポイントです。

 その一方で実際の乗り味はといえば、あえて言えば「可もなく不可もなく」といったところでしょうか。たとえば同じクラスのホンダPCXやヤマハN-MAXと比較すると加速は、かなり遅く感じますし、高速道路でアクセルを全開にしても最高速はメーター読みで100km/h程度。スペック上で最高出力は14ps/8500rpmとのことですが、上り勾配となればスピードは90km/h前後に落ち込みます。

 デザイン的にスリムさを優先させたフットレスト形状ゆえ、高速走行時、足元の風の巻き込みは少し気になるポイントとなっています。またフロント16インチ、リア14インチの『ハイホイール・スクーター』ゆえ、ハンドリングは「ねばつくような感覚」となっており、キビキビと動く小径ホイールのスクーターとは、かなり異なるものとなっています。
 
 とはいえ、このハンドリングは最初こそ違和感を感じるものの、トラックが頻繁に通る幹線道路などにある深いわだちなどでも車体が安定し、ハンドルがとられないというメリットもあります。こうした部分も石畳の道が多い欧州で人気を呼んでいる所以とのことです。

 また、同クラスの他メーカーの車種が販売価格35万円前後なのに対して、税込みで29万7000円という部分も大きなメリットといえるのではないでしょうか。

 たとえば、こうした小型スクーターは『趣味の乗り物』と言い難いのが正直なところですが、やはり重視されるべきは日常のアシに必要不可欠な『利便性』です。現在の日本の状況では通勤にバイクを使うことは難しいのかもしれませんが、次回はその点を踏まえたシュミレーション的レポートをお伝えできれば、と思います。

【了】

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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