MotoGPスズキのチームマネージャー「プランBは考えなかった」 熱望したライダー2人との契約を語る

MotoGPに参戦するチーム・スズキ・エクスターのチームマネージャー、ダビデ・ブリビオ氏のメディア向けカンファレンスが2020年5月11日にオンラインで行われ、先ごろ発表されたアレックス・リンスとジョアン・ミルの契約更新などについて語りました。

チームと2人のライダー契約は相思相愛だった。チームマネージャーが語る

 MotoGPは世界的な流行を見せる新型コロナウイルスの感染拡大を防止する対応策により、2020年シーズンのグランプリ開催を延期しています。MotoGPをプロモートするドルナスポーツは、7月下旬から11月中旬にかけて、ヨーロッパでの開催を目指しています。

『TEAM SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)』のチームマネージャー、ダビデ・ブリビオ氏

 海を超えた移動が可能になれば、ヨーロッパ以外では12月中旬までの温暖な地域での開催を検討し、12戦から16戦の実施を目指しているとのこと。なお、ここまでの情報によればアジアでの開催は遅くとも11月下旬以降となり、ツインリンクもてぎで行われる日本GP開催に懸念が残るところではあります。

 5月7日には、スペイン政府に対し、7月19日、26日の2週連続でヘレスにおけるMotoGP開催の提案をすることを発表。その後15日には、フランスGPが10月上旬の開催を目指していると、公式ウェブサイト(MotoGPドットコム)のなかで報じられました。

 各国でこの厳しい状況を過ごし、開幕に備えるライダーたちも、イタリアのミサノや、アンドラのサーキット、パス・デ・ラ・カサで、バイクに乗ったトレーニングを行なうなど、状況が動き出しつつあります。依然として楽観的な状況ではないことは確かですが、わずかながらとはいえ光明が見えてきた、と言えそうです。

 こうした中、『TEAM SUZUKI ECSTAR(チーム・スズキ・エクスター)』は、チームマネージャーであるダビデ・ブリビオ氏のオンラインによるメディア向け取材会を実施し、ブリビオ氏が、先日発表されたアレックス・リンスとジョアン・ミルの契約更新などについて語りました。

 リンスは4月19日に、ミルは5月2日に、スズキと2021年から2022年までの2年契約を結んだことが発表されています。リンスもミルも、ともにスズキからMotoGPクラスにステップアップしたライダーで、リンスは最高峰クラス参戦3年目となった2019年シーズン、スズキに2勝をもたらしました。イギリスGPでは、王者マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)と最終ラップの最終コーナーまで争う熱戦を制し、劇的な優勝を飾っています。

「交渉はとても簡単でした」と、ブリビオ氏は語ります。

2022年までスズキとの契約を延長したリンス。「スズキで長くキャリアを続けたい、と言ってくれた」とブリビオ氏

「私は2019年の4月ごろ、ライダーとの契約更新について経営陣と会議をするために日本へ行きました。ほとんど同時に、アレックスがスズキとの契約更新を望んでくれたんです」

 リンスは先日、やはりオンライン上で行われた取材でスズキとの契約更新について、「今は一緒にいたいチームなんだ」と語り、ほかのチームとの交渉はなかったとも明かしていました。この契約更新はこうして見る限り、“相思相愛”の結果だったというわけです。

 同時にミルについても契約更新の話はスムーズに運んだようです。「ジョアンにはオプションがあり、それを行使できたので簡単でしたね」と言うブリビオ氏は、あくまでもリンス、ミルとの契約更新を最優先とし、「(それがかなわなかった場合の)プランBは考えなかった」そうです。

「リンスとミルには、できるだけ長くこのチームにいてほしいと考えています。2023年、2024年も、再びこの2人と契約更新ができればうれしいですね」

リンス、ミルとの契約更新はMotoGP活動継続の明確な意志

 各国の新型コロナウイルスの感染拡大防止対応策により、どのメーカーとしても二輪の販売状況が厳しいことは容易に推察できるところ。そしてそれがもたらすモータースポーツへの影響は、おそらく多くのMotoGPファンが懸念しているところでしょう。今後について、ブリビオ氏は次のように回答しました。

2020年シーズンには最高峰クラス2年目を迎えるミル。2022年までのファクトリーチームの座を射止めた

「おそらく、来年にはすべての会社の予算が減ってしまうのではないでしょうか。予算を削減しなければならないでしょうから、開発凍結はいい方法だと思います」

 4月16日、MotoGPクラスのエンジンについては、2020年シーズン3月に承認を受けたものを2021年シーズンも使用すること、つまり開発の凍結が決定。技術規則についてコンセッション(優遇措置)を受けるKTM、アプリリアを除き、2021年シーズン末までエンジンのアップデートは行われないことになります。

 これには予算削減が見込めることもさることながら、ロックダウンによる工場などの稼働率から生まれる差異を公平にできる、それが「開発凍結に賛同した理由のひとつ」でもあるとブリビオ氏は語りました。今後はコスト削減と時間の短縮を目的とし、レースウイークを短くすることなども考えられていくとのこと。

 スズキには2008年のリーマンショックを背景とした世界的経済状況の悪化などによる理由で、2011年シーズンをもってMotoGP参戦を休止した過去があります。その後、2015年に再び世界の舞台に舞い戻り、前述のように2019年シーズンにはリンスが2勝を挙げるまでになりました。

 ブリビオ氏は、今後さらに厳しくなるだろう予算についてとともに、明るい展望に言及しています。

「こうした中で、アレックス、ジョアンと契約を更新できたことは、すばらしいニュースです。先日、トップマネジメントの承認を得て、2022年までの契約を延長したのです。このデリケートな状況の中で、です。私はこれを、将来に向けたとてもいい兆候であるととらえました。それは、スズキがMotoGP活動を継続するという明確な意思を意味しています」

カタールで行われた事前テストでは、リンスは3日間総合で4番手タイムをマークした

“明るい”材料がそろったチーム・スズキ・エクスター。グランプリの幕開けを待つばかりです。

TEXT COOPERATION/Sonia

【了】

【画像】TEAM SUZUKI ECSTARのライダーたち(6枚)

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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