スタイルと走りを両立する 現在の日本の技術が息づいたディガー・カスタムの乗り味は?

米国で誕生したチョッパーやディガーなどのカスタムバイクは、歴史を積み重ねることで進化をとげてきました。山梨のショップ「バイクガレージKOKORO」が創りあげた一台はまさに積み重ねた歴史の本質を感じさせる一台でした。

ターボを備えたディガーカスタム

 一見すると同じように思えても、実際に触れてみるとまったく別モノと呼べるマシン……人間が手を入れてカスタムする以上、ロングフォークのチョッパーやディガーは、”創り手”によってまったく違うものになる側面を持っています。

実際の走りは、強烈なルックスとは裏腹に至って従順に感じるこの一台。とはいえ、ターボならではの加速が強烈です(撮影は私道にて行っています)

 たとえば1970年代当時、「とにかくカッコいいから改造してしまおう(あくまでも推測ですが)」というノリで作られたロングフォーク・チョッパーなどは、スタイルこそクールですが、異常に重いハンドリングなど辟易するものがほとんどです。

 おそらくは多くの方が想像するとおり、「バイクとして乗れたものじゃない」という類のものが多くを占めるのが現実なのですが、これは極端にネック角が寝たディガースタイルも然りです。
 
 しかし、その一方で今の世の中なら、「マトモに走る」チョッパーというものも数多く存在します。チョッパーが米国で生み出された60~70年代は確かに「ノリ」で造られていたことは否めませんが、現在ではバイクとして真っ当に機能する「ネック角」や「トレール量」などの数値が理論として確立されているゆえ、それに準じたものなら、おそらくは想像よりも真っ当に、「バイクとして」の機能が確保されています。

 そうした中、我が国、日本のシーンでは「スタイルと走り」を両立したカスタムが多く存在し、それが世界的な評価を集める要因になっているのですが、山梨県の「バイクガレージKOKORO」が製作したこのマシンも、まさしくそんな一台です。

 以前、筆者(渡辺まこと)はバイクのニュースにて「ディガー」スタイルの歴史について簡単に触れさせて頂きましたが、2009年にその始祖であるアーレン・ネス氏とロン・シムズ氏にインタビューしたところ、当時のディガーは装飾性に重きを置いていたことは否めなかったとのことで、装着された「ターボ」や「スーパーチャージャー」などの過給機も、あくまでも「スタイル重視」で取り付けたものだったそうです。

 一方でバイクガレージKOKOROによるスポーツスターベースのディガーにもIHI製タービンが装着されているのですが、排気の流れを利用してエンジンに空気を押し込むこのパーツが、しっかりと機能している部分も「当時モノ」のディガーと大きく異なる点かもしれません。

気になるターボ付きエンジンの詳細は?

 ちなみにこのマシンは883ccのスポーツスターを1200ccにボアアップした上、ローコンプ(低圧縮)仕様の鍛造ピストンが組み込まれ、圧縮比も8:1程度に抑えられているのですが、これは過給圧によって高くなってしまうエンジン内部のコンプレッション(圧縮)を見据えてのもの。

インプレッションを終えて筆者(左)と談笑するバイクガレージKOKOROの代表、内田朝好氏。スタイルのみならず、走りに重きをおいたカスタム・ビルドにも定評のある人物です(撮影は2015年)

 一般的に「高圧縮」「低圧縮」と書くと後者の方がパワーダウンするような印象を受ける方も多いかもしれませんが、肝心なのはガソリンのオクタン価に対しての「適切な圧縮」であり、「高効率」なエンジンがパワーとトルクを生むということ。詳細まで説明するとなると、かなりの文字量が必要ゆえ、あえて割愛させて頂きますが、ともかく「適切」なセッティングがパワーとトルクに繋がるということは覚えておいておきたいところです。
 
 実際、このバイクガレージKOKOROのディガーを走らせる(撮影は2015年に行ったものです)と、やはり、その乗り味はNA(自然吸気)のマシンと異なるもので、ある一定の回転域を超えると「ドヒューン」という吸気音がキャブ&タービンあたりから鳴り響き、まるでワープのような感覚をおぼえます。たとえば2ストのマシンでも低回転域と高回転域で、まったく違う印象を受けますが、このディガーの場合、低速ではハーレーらしい鼓動を感じる上、高回転域では暴力的な加速を見せるに至っています。ストレートにいえば乗り物として、かなり面白い味付けです。

 また車体にしてもディガーらしくネック角を寝かしたセッティングとなっているゆえ、優れた直進安定性となっているのも、このマシンの特筆すべき点かもしれません。往年のドラッグレーサーがモチーフとなったカスタムジャンルゆえ、あえて言えば「直線番長」であることは否めないのですが、こうして一つのポイントに特化させることが出来るのもカスタムバイクが持つ醍醐味ではないでしょうか。

 今から半世紀前、スタイルを重視して生まれたディガーですが、正しくディメンションを突き詰め、過給機も正しくセッティングすれば楽しく走らせることが可能です。

 米国で生まれたカスタムカルチャーが長い年月を経て、極東の島国で熟成を重ねた結果の完成度を誇るバイクガレージKOKOROによるディガー……積み重ねた歴史の本質を感じさせる一台です。

【了】

【画像】ターボを装着したハーレー・カスタムの画像を見る(8枚)

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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