「CT125・ハンターカブ」のオフロード性能に満足し気づいた! 「クロスカブ」との決定的違い
2019年秋の東京モーターショーで世界初披露されて以来、大きな反響を呼び、2020年6月26日の発売より前に、年間生産台数8000台を超える予約が入ったホンダ『CT125・ハンターカブ』。原付2種を愛車に持ち、現行ラインナップの試乗をほぼすべて網羅しているバイクジャーナリスト青木タカオさんが早速試乗しました。
自然と共生、そんな生き方にピッタリ
アウトドアのアクティビティは、いつの時代も人気ですが、バイク乗りたちの間でもレース経験者を含むベテランやリターンライダーら“大人のオートバイ好き”たちが、カブなど小排気量のバイクでショートツーリングやソロキャンプなど、ノンビリゆったりバイクと自然を楽しんでいる様子が多く見られます。
そんな使い方や価値観にピッタリなのが、ホンダのニューモデル『CT125・ハンターカブ』ではないでしょうか。CTシリーズは「スーパーカブ」をベースにアメリカで生まれ、育ちました。ホンダがグローバルな企業活動を展開させて間もない1961年、北米市場の要望に応じ、「スーパーカブ」の派生モデル『CA100T トレール50』をリリース。64年には『CT200 トレール90』へと進化しました。
ひと目で「CT=ハンターカブ」とわかる特徴は、60年代ほぼ完成されていて、ロングライドに適したアップライトな乗車姿勢や積載力抜群の大型キャリア、トルクフルなエンジン、悪路も走破可能な頑丈な装備などです。『CT125・ハンターカブ』はそうした伝統的なアイコンたちを受け継ぎつつ、現代のニーズにマッチするようブラッシュアップされました。
キビキビ走って身のこなしが軽い!
『スーパーカブC125』をベースに、アンダーボーンフレームはヘッドパイプまわりを補強し、ピポットプレートを追加。リヤフレームを延長し、ホイールベースは1245→1255mmに。一般的なモーターサイクルと同様に、トップブリッジ付きのテレスコピック式フロントフォークを採用し、サスペンションストロークも100→110mmに伸ばしています。最低地上高は40mmアップし、125→165mmとなりました。
車体の挙動は車速が上がっても落ち着いていて、一気にオートバイらしくなり、入力に対するレスポンスを飛躍的に向上。軽快なハンドリングをそのままに、接地感も増えて旋回力をアップ。ダンパーのしっかり効いた前後サスのおかげで乗り心地が良く、乗り心地も快適です。ブレーキは前後ディスク式で、フロントは2ポットキャリパーと220mmローターの組み合わせとし、効きやコントロール性は申し分ありません。1チェンネルABSも前輪ブレーキに搭載され、濡れた路面も安心してブレーキレバーを強く握り込めます。
エンジンはお馴染み、左手のクラッチレバー操作の要らない自動遠心クラッチ採用の空冷SOHC単気筒。歯切れのよいパルス感が味わえ、全域スムーズで一定の加速感を保ち、とても扱いやすい。ピックアップが鋭いのはドリブンスプロケットをC125の36Tから39Tへと変更し、登板力や低中速域のトルクを上げているからで、手応えがダイレクトなエンジンフィーリングを獲得しています。
オフロード遊びが面白い!!
期待以上だったのが、ダートでのコントロール性の高さです。前後17インチのスポークホイールにセミブロックパターンのタイヤを履きますが、フロントまわりの剛性がアップし、足まわりもしっかり働いてくれるため、前寄りにしっかりと荷重をかけられ、カウンターステアを当てるようなハードな走りも楽しめてしまうから楽しくて仕方ありません。
大きな段差を乗り越えても車体と足まわりは持ちこたえますし、不意に前輪を溝や地面の裂け目に落としても破綻しません。シートを両足の内側で挟み込んでマシンホールドでき、左右45度と広いハンドル切れ角も操作性を高めています。この運動性能の高さこそが『CT125・ハンターカブ』の持ち味です。
アウトドアテイストという意味では、同じ原付2種モデルの『クロスカブ110』(スーパーカブ110ベース)に「キャラクターが重複しているのでは!?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、決定的に異なるのは走りの次元でしょう。
■CT125・ハンターカブ
スタイル:タフ&モダン
燃料タンク容量:5.3リットル
ブレーキ:前後ディスク
車両重量:120kg
車両本体価格(税抜):44万円
■クロスカブ110
スタイル:アクティブ&カジュアル
燃料タンク容量:4.3リットル
ブレーキ:前後ドラム
車両重量:106kg
車両本体価格(税抜):34万1000円
つまり、どこまでライディング性能を求めるかで『CT125・ハンターカブ』か『クロスカブ110』かが、決まってくるということです。同じ「カブ」とネーミングされますが、両者ははっきりと差別化されていて、モーターサイクル的ファンライドを郊外でとことん満喫するならハンターカブ、都市でカジュアルにコミューターとして使うならクロスカブとなりそうです。
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。