クリアからスモークへ無段階で色の濃さが変わる!! SHOEI「フォトクロミックシールド」を使ってみた
ヘルメットメーカー「SHOEI」は、紫外線の量に応じて自動的に色が変わる「フォトクロミックシールド」を展開しています。実際に使ってみました。
ライダーの手間を解消!! 紫外線の量に応じて自動的にシールドの濃さが変化
ヘルメットのシールドはクリア派? それともスモーク派? それぞれ好みやこだわりがあると思いますが「日中の日差しがまぶしいときはスモークで、夜はクリアがいい」と思ったことはありませんか? ツーリングで早朝出発して夜遅くに帰ってくる、バイク通勤で朝家を出て夜会社から帰ってくる、という場合など、そう考えることがあるのではないでしょうか。

そんな時、かつてはクリアとスモーク、2つのシールドを準備して、その都度付け替えるか、常にクリアを装着し、昼間はヘルメットの中でサングラスをかける、ということもありました。これがけっこう面倒だということで、最近ではサンバイザーを内蔵したヘルメットも増えてきました。しかしそのラインナップは限られますし、どうしても機構が複雑になるため帽体が大きめになるなど、気になる点もあります。
そんなシールドのチョイスに悩むライダーの問題を一気に解決してくれる、すごいアイテムがあったのです。それが、SHOEIの「フォトクロミックシールド」です。何がすごいかって、紫外線の量に応じて濃度が変化する、調光機能のあるシールドなのです。
紫外線が当たることによって化学変化で発色するので、日差しの強い日中は濃いスモークに、曇りの日や太陽が登りきらない早朝、日暮れ前などは薄いスモーク、そして夜間はクリアという具合に、無段階で自動的に濃さが変化するという、まるで魔法のような画期的な商品なのです。
その実力はどれほどのものなのか? 早速試してみました。まずは直射日光の当たらない室内に置いてみると、純正のクリアシールドとほぼ見分けがつかないほど、色はついていません。そこで窓際に持って行くと……あれ? 色が変わりません。おかしいなと思いながらカメラの準備をしてふと見ると、シールドの色がかなり濃くなっていました。

内蔵式のインナーバイザーだと、レバー操作でシャキンとスモークバイザーが下りてきてサッと眩しさを防いでくれます。それに対してフォトクロミックシールドの場合はすぐに色が変化するのではなく、1分ぐらいかけてゆっくり濃くなっていく感じです。例えるならテレビのクイズ番組で、映像がじわじわ変化していき「どこが変わったでしょうか?」なんて問題を見ている感じに近い印象です。
では実際に、バイクに乗って走るとどんな感じでしょうか。愛用のフルフェイスSHOEI「Z-7」に装着し、路上に繰り出してみました。
スタートは午後2時くらいでしたが、梅雨明け間近の時期のため紫外線が強いらしく、玄関でかぶった時にはクリアだったのが、外に出てバイクを押している間にすぐ濃くなっていました。バックミラーに顔を近づけるとうっすら目鼻は見えますが、遠目から写真を撮ると、完全に濃いスモークになっています。
外から見ると暗くても、中からの視界はとても明るく、外界の見え方に全く違和感はありません。もちろん、歪みやにじみもなく、視界は良好です。

トンネルに入ってもすぐに色が薄くなるわけではありませんが、視界は明るく保たれ、周囲もよく見えるので目が疲れることもありません。このあたり、非常に高い技術力を感じます。
雲間から太陽が顔を出したので仰ぎ見てみると、「Z-7」純正のスモークシールドや、いつもかぶっている「J-Cruise II」のインナーバイザーを通して見た時よりも、若干眩しく感じました。
スモークシールドが物理的に光線を遮っているのに対して、フォトクロミックシールドは、例えばアプリなどで間接的に明るさを下げている感じです(あくまでイメージです)。もっとも、あえて比べればそう感じる、という範囲なので、実用上は十分眩しさを軽減してくれるものでした。
夕方、まだ十分明るい時間帯に、葉の茂る大きな木の下で休憩した際に見ると、いつの間にかシールドの色がほぼクリアになっていました。きっと少しずつ色が薄くなっていったのでしょう。その変化には全く気が付かず、魔法にかけられたような感じです。
SHOEIのフォトクロミックシールドは、実用性十分どころか、これ1枚でいつ乗っても快適で良好な視界を提供してくれる、夢のシールドでした。この便利さは一度経験すると手放せなくなりそうです。
値段がスモークミラーレンズの倍(税抜1万8000円)するところがハードルを高くしていますが、先進技術のすごさを実感できると思えば、むしろお得かもしれません。

対応ヘルメットは、現在「Z-7」「X-Fourteen」「RYD」「HORNET ADV」「J・O」「EX-ZERO」となっています。SHOEIヘルメットを愛用している人は、検討してみるのも良いかもしれません。
【了】
Writer: 野岸“ねぎ”泰之(ライター)
30年以上バイク雑誌等に執筆しているフリーライター。ツーリング記事を中心に、近年はWebメディアで新車インプレッションやアイテムレビューも多数執筆。バイクツーリング&アウトドアを楽しむ『HUB倶楽部』運営メンバーの1人。全都道府県をバイクで走破しており、オーストラリア、タイ、中国など海外でのツーリング経験も持つ。バイクはスペックよりも実際の使い勝手や公道での走りが気になるキャンプツーリング好き。