MotoGP ゼッケンナンバーよもやま話 その2 マルケス“93”ロッシ“46”の由来とは?

MotoGPライダーのパーソナルナンバーの由来をいくつかピックップし、ご紹介する。ライダーの選んだナンバーには、それぞれの理由がある!

ライダーこだわりのゼッケンナンバーとは!

 チャンピオンライダーが、王者の証であるゼッケン“1”を使わなくなってきた理由について前回触れたところで、今度は現役MotoGPライダーのパーソナルナンバーの由来をいくつか紹介していこう。憧れのライダーにあやかった番号や自分の生年月日にまつわるナンバー、それぞれのこだわりが窺える。

[現役ライダー篇]
■マルク・マルケス:#93

Repsol Honda Teamマルク・マルケス

 トレードマークの“93”は、1993年に生まれたことに由来している。“Marquez”に入っている“q”の文字が数字が“9”に、“Marc”及び“Marquez”に入っている“M”の文字が時計回りに90度回転させると数字の“3”に似ていることから「“93”には僕の名前が隠されているんだ」とお気に入りだという。2020年からMotoGPクラスに昇格した実弟のアレックスは、似たようなデザインの“73”を使用している。

■バレンティーノ・ロッシ:#46

Monster Energy Yamaha MotoGPバレンティーノ・ロッシ

“46”はロッシの父、グラツィアーノが現役のレーシングライダー時代につけていたナンバー。グラツィアーノは500ccクラスではスズキのマシンに乗って最高位2位、250ccクラスではモルビデリのファクトリー・ライダーとして3勝を挙げ、ランキング3位の成績を収めている。2001年に初めてバレンティーノがチャンピオンになった際には「オレはケニー(・ロバーツ・シニア)に全く歯が立たなかったが、息子が仇を取ってくれた(2001年、ケニー・ロバーツ・ジュニアはランキング11位)」と喜んだという話も。

■マーベリック・ビニャーレス:#12

Monster Energy Yamaha MotoGPマーベリック・ビニャーレス

 2011年に125ccでデビューしてから(スポンサーの意向で“40”をつけたMoto2時代の2014年を除く)一貫して“25”をつけてきたが、2019年に“12”に変更した。「少年時代にモトクロスを走っていた時は、いつも“12”か“100”をつけていた。チャンピオンシップに初めて参戦する際、すでに“12”が使われていたので、お気に入りのモトクロスライダーが愛用していた“25”を選んだけど、今、何かを変える必要があると感じたんだ」と当時その理由を明かしている。

■ファビオ・クアルタラロ:#20

Petronas Yamaha SRTファビオ・クアルタラロ

 自身の誕生日である1999年4月20日の日にちに由来する“20”をパーソナルナンバーに選んでいる。スペインでのCEVレプソル選手権時代に連戦連勝したことから当時のライバルたちにつけられたニックネーム「El Diablo(悪魔)」にちなんで、ゼッケンの数字は赤い文字で描かれ、両端は悪魔の角をイメージして尖ってデザインされている。

■アレックス・リンス:#42

Team SUZUKI ECSTARアレックス・リンス

 スズキのエースのパーソナルナンバーは“42”だ。6歳でレースを始め、9歳頃からは“24”をつけていたが、13歳の時に出場した選手権で他のライダーが“24”を使用していたため、数字の順番を逆にして“42”へと変更。いち時期“24”に戻したそうだが、“42”にしていた頃のほうが幸運に恵まれていたと感じたため、以降は“42”をつけている。なお、ビニャーレスと同様にMoto2時代の2015年・2016年にはスポンサーの意向で“40”をつけた経験がある。

■カル・クラッチロー:#35

LCR Honda CASTROLカル・クラッチロー

 レース活動を始めてから数年は“5”を好んで使っていたが、他のライダーが使用していたので、それからは“35”をつけているそうだ。海外メディアのインタビューには「オレは“5”が好きだし、(妻の)ルーシーは“3”が好きだから“35はちょうど良かったよ。完璧な組み合わせさ」と答えている。愛妻家で知られるクラッチローらしいエピソードだ。

■中上貴晶:#30

LCR Honda IDEMITSU中上貴晶

 MotoGPクラスに唯一参戦する日本人ライダーのパーソナルナンバー“30”は、「MotoGPアカデミー」のオーディションに合格し、2006年に14歳で参戦したスペインでのCEVレプソル選手権時代に、アカデミー・チームを率いるアルベルト・プーチ(現HRCチーム・マネージャー)に渡された番号がきっかけ。本人も気に入っており、それ以来、ハルクプロに在籍した全日本時代を除いて“30”で参戦を続けている。

■アンドレア・ドヴィツィオーゾ:#04

Ducati Teamアンドレア・ドヴィツィオーゾ

 ケビン・シュワンツに憧れるイタリアンは、125cc・250cc時代はシュワンツが長年愛用した“34”をつけていた。しかし、MotoGPクラスでは1993年チャンピオンの功績を讃え、“34”が永久欠番となっており、最高峰クラスに昇格した2008年からの2011年までのホンダ時代、2012年のヤマハ時代は下ひとケタの“4”のみを使っていた。ドゥカティに移籍して以降は、先頭に“0”をつけた“04”を使用している。

■アレイシ・エスパルガロ:#41

Aprilia Racing Team Gresiniアレイシ・エスパルガロ

 アプリリアを引っ張るエスパルガロ兄は、125ccクラスで2年連続ランキング2位と大活躍した日本人ライダーの宇井陽一に憧れ、“41”をパーソナルナンバーに選んでいる。男の子と女の子の双子を持つことから2019年からは“4”を女の子イメージとしてピンク、“1”を男の子イメージとしてイエローにカラーリングしている。2021年からレプソル・ホンダ・チームに加入する弟のポルは“44”がトレードマークだ。

 いかがだっただろう? ランキング順のゼッケンのほうがわかりやすくて良かったという声も少なくないが、ライダーごとの個性が見えるのも事実。次の機会にはレジェンド・ライダーのゼッケンナンバーの由来に触れてみたい。

【了】

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Writer: 井出ナオト

ロードレース専門誌時代にMotoGP、鈴鹿8耐、全日本ロードレース選手権などを精力的に取材。エンターテインメント系フリーペーパーの編集等を経て、現在はフリーランスとして各種媒体に寄稿している。ハンドリングに感銘を受けたヤマハFZ750がバイクの評価基準で、現在はスズキGSX-R1000とベスパLX150を所有する。
Twitter:@naoto_ide

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