カワサキ「Ninja ZX-25R」でサーキット走行! 本質は今日的なスーパースポーツそのものだった!
一般道の試乗では自然なハンドリングやスムーズな特性を見せてくれたカワサキの4気筒250cc「Ninja ZX-25R」ですが、サーキットではどのような走りを見せてくれるのでしょうか。和歌山利宏さんが試乗します。
思わず全開にしてしまう気持ちの良い吹き上がり感
大分県にあるサーキット「オートポリス」のピットロードでカワサキ「Ninja ZX-25R」を発進させるや、私(筆者:和歌山利宏)は思わずスロットルを全開、1万7000rpmのレッドゾーンまでエンジン回転を引っ張り切り、1コーナーに向けて6速まで増速していました。

通常なら、低中開度、低中回転域での特性をチャックしながら走り出していくのが身上なのに、これは一体どうしたというのでしょうか。すでに公道において常用域のチェックは終わっていたこと、45psという最高出力に親近感があることも一因にせよ、おそらくはエンジンの吹き上がり感の誘惑に負けただけのことかもしれません。
いずれにせよ、このマルチフィーリングがZX-25Rの大きな魅力であることは確かです。吹き上がりが痛快なことに加え、高回転域を保ってパワーを絞り出してやるほどに、それはサーキットでの到達スピードに如実に反映されます。それが最高に面白いのです。
速く走らせるための使用回転域は、14000rpmからレッドゾーンに入った17500rpmといった辺りで、低速コーナーで回転が落ちても9000rpmを下回ることはありません。高回転をキープしていても、神経質さはなく、至ってスムーズです。30年前の250ccマルチとは異なり、エンジンのフリクションロスが小さく、回転の変化に唐突さはないし、電子制御スロットルによってレスポンスが見事に調教されています。
トラクションコントロールとクイックシフターが高回転の走りをサポート
さらに、トラクションコントロール(以下:トラコン)とクイックシフターが、こうした高回転キープの走りをサポートしてくれます。

3段階調整式のトラコンにおいて、最も介入度の高い“3”は公道向きと考えて差し支えない(それでも私が制御介入を感じたのは砂利道だけだった)のですが、私はサーキットライディングの練習にもこれが有効ではないのかと気付かされました。
トラコンは単にスライドに対処してくれるのではなく、しっかりリヤに荷重が掛かってトラクションで曲がっていく状況でスロットルが開かれるほどに、トラコンが介入してくれるからです。スムーズに流す走りでは“3”でもほとんど介入はありませんが、上手に乗れるほどにトラコンが働き、介入したことでうまく乗れていることが分かるのです。
すると、“3”では旋回速度を高めようにも、後ろに引っ張られる感じになり始めます。そこでそうなったときに介入度を落としていけばいいのです。そうして介入度の最も低い“1”だと、私の場合、介入するのは第一ヘアピンのクリップからの立ち上がりだけになりました。

クイックシフターもすごく重宝します。特にご利益を感じるのが第一ヘアピンへの進入です。手前の左コーナーを4速で回ってきて、切り返しながら3速に落とし、さらにブレーキングしながら右に寝かし込む寸前に2速に落とす状況です。本来ならクラッチとスロットルを操作しなければならないところ、左足のペダルを動かすだけで自動的に空吹かしまで入るのですから、走りに集中しやすく、楽で、リズムを崩すこともないのです。
サーキットにおける「Ninja ZX-25R」のハンドリングは?
ハンドリングは、公道でも感じたとおり、ZX-10R譲りの寛容さとナチュラルさです。ただ、初期にマシンを寝かし始める一次旋回、クリッピングポイントに向かって深く寝かし込んでいく二次旋回への過渡期においては、リズミカルでメリハリのある身体の動きをしたいところです。漠然とフルバンクを目指すのではなく、当たり前のスポーツライディングが求められるわけです。

さらに印象的だったのは、このZX-25Rには今日的なレーシングスタイルのライディングがマッチングすることです。上体を大胆に前方イン側に入れたフォームのほうが、高速コーナーをニュートラルに旋回していけるのです。古典的な上体をリーンアウト気味に起こしたスタイルだとアンダーになりがちだったのです。
もっとも、公道ではそんな個性を感じさせず至って自然なのですが、サーキットでさらにポテンシャルを引き出すにはそうした走りが必要で、それだけスポーツライディングを楽しめる可能性も広く、走り方を教えてくれると解釈できそうです。
そして、連続する高速コーナーを抜けていく際も、単にスロットルで速度調整するのではなく、スロットルを一度閉じてフロントに仕事をさせてから、スロットルを開き、リヤに荷重を移しトラクションを与えていくというリズムに乗るほどに、到達スピードは速くなっていきます。
公道での印象として私は、「素顔はスポーティな街乗りバイク」と結論付けました。そしてサーキットで知り得た結論は、「本質は今日的なスーパースポーツそのもの」だったのです。
【了】
Writer: 和歌山利宏
1954年2月18日滋賀県大津市生まれ。1975年ヤマハ発動機(株)入社。ロードスポーツ車の開発テストにたずさわる。また自らレース活動を始め、1979年国際A級昇格。1982年より契約ライダーとして、また車体デザイナーとして「XJ750」ベースのF-1マシンの開発にあたり、その後、タイヤ開発のテストライダーとなる。現在は、フリーのジャーナリストとしてバイクの理想を求めて活躍中。