カワサキ「Ninja ZX-25R」は今日的なスポーツライディングの基本を学ばせてくれる存在だった!

カワサキのスポーツモデルのフラッグシップ「Ninja ZX-10R」に通じるハンドリング特性が与えられた250ccの4気筒スーパースポーツ「Ninja ZX-25R」。ここではジャーナリストの和歌山利宏さんにそのコーナリング性能を引き出す秘訣を語ってもらいました。

クランク軸の位置が「ZX」らしさを生み出すポイント

 カワサキ「Ninja ZX-25R」のハンドリングの基本特性は、公道での試乗記で触れたように、大型スーパースポーツの「Ninja ZX-10R」に通じるものがあります。車体ディメンジョンや重量バランスなど10Rのノウハウを落とし込んだとのことですが、ここで私が注目したいのはクランク軸の位置です。

カワサキ「Ninja ZX-25R」は優れた足つき性を実現しつつ今日的なライディングを学ぶことが出来る一台です(筆者:和歌山利宏は身長161cm)

 バイクがバンクしていくときにどこを中心に寝ていくかを考えた際に、前後輪を結ぶ路面上に軸、つまりローリングセンターがあると考えるのが自然です。でも、寝かし始め期には舵角が入っていくことを考慮しなければなりません。そのため、一次旋回においては後輪と接地点からフロントフォークに直角に交わう線をローリングセンターとする考え方が成り立ちます。

 そこで、寝かし込み特性を論じるとき、その仮想ローリングセンターに対しどこにジャイロ効果を発生するクランク軸があって、ローリングにどう影響を与えるかが、一つのポイントになります。

 現在の多くのモデルではクランク軸が仮想ローリングセンターのいくらか上側にあり、寝かし込みの軽さを狙った設定になっていますが、ZXシリーズでは仮想ローリングセンター上、もしくはそれよりわずか下側に位置しています。このこともハンドリングがZXシリーズに通じていることの一要因ではないかと考える次第です。

マシンコントロールを心底楽しめるNinja ZX-25R

 さて、そうした基本特性に関するうんちくはさておき、私が注目したいのは、25Rはハンドリング面でもマシンコントロールを心底楽めることです。まさにスポーツバイクなのです。

カワサキの4気筒250ccスーパースポーツ「Ninja ZX-25R」。スポーツライディングの基本に加え、今日的なスーパースポーツを乗りこなしていく可能性に満ちています

 オートポリスで開催されたジャーナリスト向きの試乗会では、私も含め社会一般では年配となる50~60代のライダーが、サーキットでの試乗の合間にライディング談義をし始めたのです。それも25Rのテストライダー、野崎浩司さんを巻き込んでです。

 正直なところ、試乗会におけるこうした光景は、ここ何年かあまり見掛けることはありませんでした。超高性能マシンだと自身の葛藤と闘うのに精一杯で、人との垣根を超える余裕も生まれにくいわけで、その意味でもスポーツツールとして大変に魅力的なのです。

 何より、このバイクには、スポーツライディングの基本に加え、今日的なスーパースポーツを乗りこなしていく可能性に満ちています。決してイージーではなく、だからと言って小難しくもありません。乗り方がいい加減だったら、マシンはそれなりにしか応えてくれませんが、やっただけのことを返してくれます。ですから、マシンコントロールを学習することもできます。

Ninja ZX-25Rのコーナリング性能を最大限に引き出すには?

 造り込まれたライディングは、今日的なレーシングスタイルよろしく、上体を大きく前方イン側に入れたスタイル(肘を擦るようなイメージ)です。昔のように上体がリーンアウト気味だと、アンダーが出てアウトにはらみがちです。そうやってマシンの旋回力とバランスさせるとともに、フロントに荷重を与えてよく曲がる状態にしてやるのがいいのです。

「Ninja ZX-25R」を上手に操る場合、一次旋回から二次旋回への移行期にタメ(ゴルフや野球で骨盤が動き腰を入れ、上体が追随するまでに一拍入るようなもの)を作るのもポイントでしょう

 この大胆なリーンインに至るには、寝かし込みながら漠然とフォームを決めればいいわけではありません。一次旋回から二次旋回への移行期にタメ(ゴルフや野球で骨盤が動き腰を入れ、上体が追随するまでに一拍入るようなもの)を作り、そのことで舵角を入れてから、上体を飛び込ませていくのです。

 その際、一次旋回でフロントに移動させた体重を、タイミング良くリヤに(シートと外足に)戻してやらなければなりません。でないと、荷重が残ったフロントにいつまでも負担を掛けたままになってしまいます。かく言う私も、上体を前方イン側に移動することに意識が向き過ぎたあまり、荷重の戻しが疎かになり、野崎さんにアドバイスを仰ぎながら修正していったものです。

「Ninja ZX-25R」を上手に操る場合、一次旋回でフロントに移動させた体重を、タイミング良くリヤに(シートと外足に)戻すのもポイントです

 また、こうした走りのリズムはサスペンションの動きによるピッチングモーションとシンクロさせなければなりません。全開のまま通過できない高速コーナーで、ただスロットルで速度調整をするのではなく、サスをうまく動かし、走りにピッチングモーションを組み立てれば、はるかにニュートラルで速いコーナリングができるようになります。

 標準装着のダンロップGPR300は、サーキットを攻め始めて間もなくは前後ともに滑り出す場面もあって、マシンのポテンシャルに負けているとの印象を持ったのですが、リズムに乗るほどに限界を如実に教えてくれる特性だと気付かされました。レースに出場するならハイグリップタイヤもいいですが、走りを学習するには最適と言えそうです。今回の試乗会で転倒者が誰一人いなかったことも付け加えておきます。

 そもそもスポーツ性とは、高水準に発揮される「走り、曲がり、止まる」の基本性能に酔うことではなく、いかにマシンコントロールを堪能できるかのはずです。リッタークラスのスーパースポーツだと、その凄さの衝撃を楽しむことに終始しがちでも、Ninja ZX-25Rなら多くの人が操ることを純粋に楽しめると思ったのでした。

【了】

【画像】操ることを純粋に楽しめるカワサキ「Ninja ZX-25R SE」(11枚)

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Writer: 和歌山利宏

1954年2月18日滋賀県大津市生まれ。1975年ヤマハ発動機(株)入社。ロードスポーツ車の開発テストにたずさわる。また自らレース活動を始め、1979年国際A級昇格。1982年より契約ライダーとして、また車体デザイナーとして「XJ750」ベースのF-1マシンの開発にあたり、その後、タイヤ開発のテストライダーとなる。現在は、フリーのジャーナリストとしてバイクの理想を求めて活躍中。

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