特別インタビュー/参戦型の2輪耐久レースとして人気を集める『もて耐』 その魅力とは?

参加型の耐久レース『もてぎ7時間耐久ロードレース』通称“もて耐”は、“世界最大の草レース”をコンセプトに、レギュレーションの変遷を経て1998年から2020年の現在に至るまで人気を集めてきました。主催者であるモビリティランドの斎藤英輝さんに、長く人気を誇るもて耐について、詳しく伺いました。

1998年、“世界最大の草レース”を目指してスタート

 もてぎ7時間耐久ロードレース“もて耐”(以下、もて耐)が初めて開催されたのは1998年のこと。ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡)が1997年に開業し、その翌年からスタートしました。

2020年もて耐のスタートシーン。今年は決勝レースとして3時間耐久のみが行なわれた

 当時のレギュレーションは125cc以上のバイクならば参戦可能というもの。初年度のリザルトを確認してみると、ホンダ「NSR150」や「NSR250R」のような小排気量車から、ホンダ「VTR1000F」、スズキ「GSX-R1100」のような大排気量車まで混走していたことがわかります。

 耐久というレース形態をとり、さらに排気量をオープンとしたのには理由がありました。斎藤さんは次のように語ります。

「当時、これまでにない参加型レースを目指したため、参加のしやすさから耐久レースを選択しました。仲間と一緒に出て、達成感を味わう。そういう意味では、耐久レースはスプリントレースとはまた違った楽しみ方があります。楽しさを感じられるレースということで、耐久が選択肢に上がりました」

 もて耐は“世界最大の草レース”を目指して誰でも参加しやすい“参加型”レースとして、多くの参加者を呼び込みたいという狙いがありました。もて耐については、排気量に関してもオープンとし、どんなバイクでも参加しやすくしたのが成り立ちです」

 たとえば自分のバイクでも参加でき、さらに仲間と一体となって楽しむことができるレース。もて耐は、ときに200台を超えるほどのエントリーを集める人気レースとなりました。

 参加型レースではあるものの、当初のもて耐は競技性がとても高かったと言います。鈴鹿8耐に参戦しているような、たとえば『TSR』や『モリワキ』のような国内のトップチームなどもエントリーしていたのです。

 また、結果を求めコストをかけてバイクをつくり上げるチームもありました。一方で、レースに参戦すること自体を楽しみたいという参戦者もいました。バイクにかけるコストやタイムの差はもちろん、狙うところも様々で、今よりも参加者層は幅広かったそうです。

 こうした中で、2008年に大きなレギュレーションの変更が行なわれます。現行のレギュレーションに通ずる排気量115cc以上250cc以下の4ストローク2気筒以下の車両で参戦するオープンクラス、そして250cc以上のバイクで参戦するマスターズクラスに分けられたのです。

NEO STANDARDクラスのBMW Motorrad「G310R」(排気量313cc)は例外として参戦可能

「ライダーやバイクによる速度差を考え、安全性についての取り組みについて手を入れました。それからコスト面。大排気量車は1台のレーサーをつくるのにもコストがかかります。コスト面を鑑み、現在に通ずるレギュレーションに変更しました。そうすることで、参戦のハードルが下がり、間口が広がることを狙っています」

 現在ではマスターズクラスは廃され、原則として115cc以上250cc以下4ストローク2気筒以下の車両で争われる耐久レースとなっています。

もて耐初参戦ライダーに寄り添うフォローシステム

 もて耐には初めて参戦するライダーをフォローする、様々なシステムが用意されています。こうしたもて耐ビギナーライダーに寄り添うコンテンツが豊富であることも“もて耐”の魅力であり、参戦を後押しする一因でしょう。

「初めてのライダーに参戦しやすくするのが、モータースポーツの課題だと思っています」と斎藤さん。

決勝レースでは、速度が遅い車両、走行に自信のないライダーが着用するビブスも用意されている

 もて耐には決勝レース当日までに公開練習、初心者講習会が行なわれるほか、参戦に必要なライセンスを1日で取得できる“1day GET MFJライセンス”という講習会などが用意されています。

「それから、アドバイザー制度ですね。公開練習にはライディングアドバイザーに加え、技術アドバイザーなども来ていただいて、車両の耐久性や車両に関する相談に対応しています。初めてもて耐に参戦する方には、有効に活用していただければ心強いシステムになるのではないかと思います」

 初心者講習会については、操作の基本であるスラロームやブレーキング、先導走行、それからライディングアドバイザーが追走してライン取りのチェックなどを行ない、その場でアドバイスします。スムーズに参加できる流れを整えているのが、もて耐の特色であると思います」

 これらの制度は2005年に始まったそうで「参加者層の拡大という狙いとともに、参加者が安全に走っていただけるようにと始まりました。バイクのレースですから、安全に、かつ完走もしていただきたいですからね。安全面の意識なども、アドバイスしています」とのこと。

 原則として、もて耐に参戦するライダーは定められた公開練習に一度は参加する必要があります。また、もて耐に参戦するために初めてMFJのライセンスを取得したライダーなどには、初心者講習会の参加が義務付けられています。

 一見やることが増えるように感じるかもしれませんが、初心者講習会は公開練習に組み込まれるなど配慮されており、安全性を高めてもて耐の決勝レースを迎えることができるようになっているのです。

 楽しく安心感を持ってもて耐を走ってほしい。そうした思いが反映されたシステムなのです。

 また、例年のもて耐には本戦のほか、“予選落ち”のチームが参戦できるコンソレーションレースがあります。2020年のもて耐では当初、7時間のもて耐のほか、3時間耐久のコンソレーションレースへの参加だけでも選択可能としました。つまり、予選落ちのレースとしてだけではなく、3時間耐久への参戦を最初から目標としてエントリーできることになったのです。

 参加料や必要となるタイヤをはじめ、登録するライダーが少なくて済むなどチームの負担も軽くなり、また、参戦に必要なライセンスもジュニアライセンス、フレッシュマンライセンスを認めることで、より幅広いライダーが参加できる、まさにもて耐参戦の第一歩を踏み出すのに適したレースになっていました。

 2020年のもて耐では新型コロナウイルス感染症の影響により、予選落ちはなく決勝レースのみとなったため、これが実現しなかったのは残念なところです。しかし斎藤さんによれば、2021年のもて耐でも3時間耐久へのエントリーシステムは設定される予定とのこと。とくにこれからもて耐に参戦してみたいと考える参加者にとって、可能性が広がることは間違いないでしょう。

斎藤英輝さん(株式会社モビリティランド ツインリンクもてぎ支配人)。ホンダ「CBR1100XXスーパーブラックバード」所有。プライベートではツーリングを楽しんでいる。若いころはレーシングカートを走らせ、モータースポーツをこよなく愛する

 多くの施策を経て“世界最大の草レース”として地位を築いてきた“もて耐”。その将来について、斎藤さんは次のように語ります。

「もて耐はツインリンクもてぎオリジナルレースにおいて歴史が長く、参加型レースのフラッグシップです。いろいろな方にこのレースに参戦して楽しんでいただきたい、ということは今も変わっていません。

 将来的にはレースフォーマットを含め、毎年参加者の皆さん、サプライヤー、アドバイザーなど様々な方の声を聞き、その声に耳を傾けながら、もて耐の将来をつくっていきたいと思います」

 とても幅広い層のライダーが楽しめる参加型レース“もて耐”。今後ますますの発展に期待が高まります。

【了】

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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