サーキット最速を追求し上質感まで漂うヤマハ「YZF-R1M」 速さだけじゃない所有欲をも満たすスーパースポーツモデルだった

ヤマハ「YZF-R1M/YZF-R1」は、サーキット最速を追求したヤマハモーターサイクルを象徴するスーパースポーツモデルです。オーリンズ製電子制御サスペンションの装備とカーボン外装を纏った「YZF-R1M」に伊丹孝裕さんが試乗します。

衝撃のデビューを飾ったヤマハモーターサイクルのシンボル

 速さだけじゃなく、上質さも大切。そう考えているライダーならこれ一択! ヤマハ渾身のスーパースポーツ「YZF-R1M」をオススメします。

ヤマハ「YZF-R1M」に試乗する筆者(伊丹孝裕)

 このモデルは「サーキット最速」という、じつに分かりやすいコンセプトを掲げて2015年にデビューしました。以来、それにふさわしいリザルトを残し、ベースモデルの「YZF-R1」は鈴鹿8時間耐久ロードレースを4連覇(2015年から18年)、全日本ロードレース選手権も2017年を除いて4度制するなど、連戦連勝を記録しています。先頃(2020年5月発表)、そんな「YZF-R1/YZF-R1M」に改良が加えられたのですが、一体どこが変わったのか? ここからはそのインプレッションをお届けしましょう。

 試乗した「YZF-R1M」(以下、R1M)は、YZF-R1(以下、R1)の上位機種という位置づけです。主な違いは足まわりと外装にあり、R1がKYB製の機械調整式サスペンションなのに対して、R1Mはオーリンズ製の電子制御式サスペンションを装備。カウルはプラスチック樹脂ではなく、ドライカーボンで成形され、見た目の高級感がまるで異なっています。また、燃料タンク上面とスイングアームはアルミの地肌がそのまま見えるように処理されるなど、武骨さも演出されているところがポイントです。

 今回の改良はいわゆるマイナーチェンジに相当し、エンジンスペックに目立った変更点は見られません。200PS/13500rpmの最高出力も113N・m/11500rpmの最大トルクも従来モデルと同じなのですが、そこに至るまでの扱いやすさが向上。サーキットで高回転を多用してもパワーロスを抑えられるよう、バルブやオイルの供給システムが見直されています。

ヤマハ「YZF-R1M/YZF-R1」は排気量997ccの水冷直列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載

 そんなR1Mの魅力は、スロットルの開けやすさに集約されています。ホンダ、カワサキ、スズキ、BMWといったライバルメーカーと同じ並列4気筒エンジンを搭載しているのですが、それらと決定的に異なるのが、特殊な爆発間隔の設定にあります。

 一般的なエンジンが「ドンドンドンドン」と180度ずつ等間隔で爆発していくのに対し、R1Mは「ドン……ドン…ドンドン」(270度→180度→90度→180度)という不等間隔になっているのです。

 これによってなにが違うのか? その違いを他のもので表現するなら、例えば一定のリズムで走るジョギングが等間隔爆発だとすると、スキップが不等間隔爆発。綱引きの時、一気に綱を引っ張るのが等間隔爆発だとすると、「オーエス、オーエス」と強弱をつけるのが不等間隔爆発。つまり、力の緩急が分かりやすいエンジンなのです。

 実際、一気に吹け上がる等間隔爆発エンジンと違い、R1Mのスロットルレスポンスは穏やかに感じられて「ホントに200PSもある?」と思うほど。8000rpmあたりから一気にパワーが炸裂するホンダ「CBR1000RR-R」あたりとは対照的に、R1Mのそれはまろやかに、そして心地よく回っていくのです。

「R1M」ロゴにも反映されるブルー、ブラック、シルバーの塗り分けを採用したカラーリング。外装のカーボンの織目もはっきりと分かる仕上げ

 もちろん穏やかな気がするだけで、直線区間が少しでもあれば凄まじい速度が出ます。ただし、今回のマイナーチェンジでブレーキパッドが最適化され、制動力も強化。このほか、サスペンションのリセッティングによって、しなやかさが増しています。この効果は大きく、少々凹凸があってもタイヤはしっかりと路面を追従し、乗り心地がよくなるなど、街乗りにおける快適性が改善されているのが印象的でした。

 とはいえ、サーキット走行ありきで開発されたモデルですから、新型だからといって単に優しいだけではありません。その片鱗を感じさせるのが、新たに追加された「ブレーキコントロール」と「エンジンブレーキマネジメント」と呼ばれる電子デバイスです。

 ブレーキコントロールはフルバンク中のブレーキングや、急激なスライドが起きた時にブレーキ圧を自動的にコントロールしてくれる制御で、車体の安定性に貢献。もうひとつのエンジンブレーキマネジメントは、その名の通り、エンジンブレーキの強弱を調整するものですが、追加された理由のひとつが、スリックタイヤの装着に備えてのことだそうです。

 どういうことかと言うと、スリックタイヤによってグリップが格段によくなるということは、摩擦抵抗が増えることを意味します。その時、エンジンブレーキが強いとさらに抵抗になるため、エキスパートライダーから出た「弱められるようにして欲しい」というリクエストに応えた結果だそうです。

「YZF-R1M/YZF-R1」は“サーキット最速マシン”をコンセプトに開発されたヤマハモーターサイクルを象徴するモデル

 普通のライダーが体感するレベルではないでしょうが、速さに対する本気度が詰まったヤマハの自信作であり、着実な進化が見て取れます。単に高スペックなだけでなく、それを活かすための機能、そしてなにより所有欲を満たしてくれる上質さがバランスしているモデルが、「YZF-R1M」なのです。

■価格(消費税10%込み)
YZF-R1M ABS 319万円
YZF-R1 ABS 236万5000円

【了】

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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