「カスタム」と「改造」、言い方ひとつで話が合わない!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.68~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、バイクのカスタムショップに立ち寄ったところ店主と話がかみ合わなかったと言います。どういうことなのでしょうか?

アレ? もしかして話がかみ合ってない?

 先日、とある山深い森の中をスポーツカーでドライブしていたら、なかなか雰囲気のあるカスタムショップが目に飛び込んできた。緑が深い避暑地に溶け込むような、ウッド基調の小さな店だった。バイクを売る……と言うより、一緒にカスタムを楽しむ……といった雰囲気の、気の利いたカフェのようなショップだった。

ホンダ「モンキー」を愛車とするレーシングドライバー木下隆之(筆者/写真左)。モンキー乗り同士だと話は弾むが……

 入店すると、奥から品の良い店主が姿を現した。

 店主「うちはバイクショップですが……」

 クルマでやってきた僕(筆者:木下隆之)を見て、怪訝な顔をした。

 木下「はい、素敵なお店だと思ったもので……」

 レトロ感を意識したカスタムが得意のようで、シートやガソリンタンクは60年代のレースマシン風のオリジナルであり、時代が遡ったようなオシャレなバイクが並んでいた。高橋国光がマン島を戦ったかのようなレーサータイプも展示されていた。

 しげしげと眺める僕に店主がこういった。

 店主「うちはSR専門ですが?」

 木下「はい、カスタムですよね」

 一見さんお断りのような、壁を感じた。

 店主「普段は何にお乗りですか?」

 木下「はい、モンキーに乗っています」

 店主「それはカスタムのしがいがありますね」

 木下「はい、でもフルノーマルです」

 店主「フルノーマル? モンキーなのに?」

 木下「はい、まったく改造していません」

 店主「珍しいですね。モンキーをカスタムしないなんて……」

 木下「そのうち改造しようかと考えているんですけどね」

 店主「改造ですか? うちはカスタム専門です。改造はしません」

 木下「でもタンクを変えたり、シートを載せ替えたり……」

 店主「カスタムです。改造ではありません」

森の中をドライブしていたら雰囲気の良いカスタムショップを見つけたので立ち寄ってみたのだが……

 いつしか“カスタム”と“改造”の違いに話が及んでしまった。面倒になって、早々に店を離れた。こだわりの店主にとっては、違法改造を想像させる“改造”と、時代を遡って雰囲気とオシャレを追求する“カスタム”は、まったく意味合いが異なるのだろう。

 なんとなくわかるような気がしたけれど、ちょっと面倒だったね。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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