the「燃費」フロント2輪のコミューター ヤマハ「トリシティ300」から感じたツアラーとしての素質

2020年に国内販売が開始されたヤマハ「トリシティ300」は、フロント2輪、リア1輪で傾きながら旋回するヤマハ独自のLMW機構が特徴です。そのツーリング燃費を計測してみました。

LMW+300ccスクーター、その燃費は?

 2019年の東京モーターショーで話題となったヤマハ「トリシティ300」は、それまで排気量125cc、155ccとコミューターセグメントへのプレゼンスを持っていた「トリシティ」シリーズに加わった上級モデルです。

ツーリングでの燃費はどうなのか? ヤマハ「トリシティ300」を走らせる筆者(松井勉)

 目の前にすると250ccクラスの、いわゆるビッグスクーターの前半分をリーニング・マルチ・ホイール(LMW)としたパッケージに、ヤマハの250ccクラスのスクーター「XMAX」に搭載されるブルーコアエンジンとシリンダー径は同じ70.0mmでストローク量を64.9mmから75.9mmへと11mm延長して排気量を292ccとしたもの。「XMAX」より53cc多いことになります。

「トリシティ300」と「XMAX」のエンジンスペックは、最高出力が21kW対17kW、最大トルクは29N・m対24N・mと、300cc対250ccという図式をそのまま当てはめたような拡張感です。それにフロント2輪ながら車体を傾けてコーナリングするバイク感覚を持つLMWが最大の特徴です。

 路面のギャップや左右どちらかの前輪が滑りやすいマンホールや段差などを通過しても安定感が抜群。雨の日にはさらに強みに感じます。前輪が1つ増えることのメリットをこれほどわかりやすく伝えてくれる乗り物もないでしょう。

 ただし、車重は「トリシティ300」が237kg、「XMAX」が179kgと、58kgほど増加しており、いつもタンデムでビッグスクーターを走らせているようなものでしょうか。そうなると、燃費は……。

 カタログスペックを見ると、「トリシティ300」の燃費データは国土交通省届出値(定地燃費値)が38.4km/l(60km/h走行、2名乗車時)で、WMTCモード値(クラス2、サブクラス2-2、1名乗車時)が31.5km/lとなっています。ちなみに「XMAX」のカタログ燃費は、60km/h定地燃費値が40.7km/l、WMTCモード値(同クラス)が34.5km/lとなっています。

 the「燃費」では、毎回同じルートで市街地、高速道路、快走路(ツーリング路)の燃費を計測。燃費データはメーター内にある平均燃費計の数値、距離はトリップメーターの数値をベースにしています。測定は、区間ごとにトリップメーター、平均燃費計をリセットする方法で、いわば最もお手軽な燃費計測というものです。

アーバンコミューターとしての上質な走りを実感

 市街地コースは、東京都内の青山外苑周辺をスタートし、青山一丁目から国道246号線を皇居方面へ移動、桜田門前から日比谷、銀座、晴海と移動して首都高湾岸線沿いの国道357号線までの区間で計測します。朝の通勤時間帯らしく、クルマが多く信号待ちの長い場面が含まれます。

いざ、ツーリング燃費の計測へ。都心の石畳のブティック通りから朝の通勤時間帯の大通りへ

「トリシティ300」は、エンジンを始動しただけで搭載されるブルーコアエンジンの質感の高さを伝えます。振動を低く抑え、滑らかな回転フィーリングがこのバイク全体の質感に通じます。発信時も、アクセルをわずかにひねった段階からキレイにクラッチをミートしてくれるCVTミッションで、所作レベルから麗しく、発進だけでも満足感あります。

 乗りだし直後、フロントまわりの重さが少し気になります。しかし絶大な安心感をもって走る感触に重みはスーっと溶け、広めのハンドルバーと曲がる時の手応え、という感覚にバランスしてゆきます。走りそのものは、250クラスのスクーターと同等の機動力が確認出来ました。重さによるパワー不足は全く無し。発進加速も40km/hからの増速も不満の無いものでした。いや、むしろ速い!

 前後連動となるユニファイド・ブレーキシステムを採用するのは「トリシティ」シリーズ共通で、どちらのレバーを引いても前後のブレーキが作動するという仕組みです。仕組みの関係上、先にリア(左レバー)をかけてからフロント(右レバー)を掛けるような場合、後から掛けたレバーの初期ストロークが少しスカっとするところが自然になればより良いなぁ、と感じました。
 
 燃費的には12.3kmを走行して26.0km/lという結果に。信号のタイミングもあり、状況次第ではもう少し伸びる印象でした。

チョイ足しの排気量が高速道路で功を奏する

 高速道路の計測は、千葉県木更津市からスタートします。往路はアクアライン連絡道「袖ケ浦IC」から館山道を下り、終点の「富浦IC」まで。復路は館山道の「富津中央IC」からアクア連絡道の「木更津金田IC」までの区間、全体で80km弱の行程で測っています。

ヤマハ「トリシティ300」カラー:マットグリーニッシュグレー

 往路は制限速度が80km/hから100km/hへ、また80km/hとなってから70km/hへと変化します。長いアップダウンが多くあり、復路も100km/hから80km/hと制限速度が変わり、とくに前半部分にアップダウンが連続します。

 フロントサスペンションのギャップの吸収力の見事さは市街地同様でした。スムーズに路面をなめてゆきます。その分、リアサスペンションからは普段のスクーターと同等の入力でも前後の印象差で「リアからドスンとくるね」と感じてしまうのがオシイところですが、全体として満足ゆく乗り心地でした。

 エンジンパワーは高速道路でも余裕です。追い越しも意のままに出来ました。

 燃費は往路、復路ともにぴったり34.5km/lでした。スムーズで充分な加速を見せるエンジン、快適さがある防風性など「トリシティ300」ならロングツーリングにも行けそうです。

快走路平均燃費は定地燃費値同等の38.4km/lを記録!

 ツーリングを模した一般道の燃費計測では、館山道「富浦IC」から県道、そして安房グリーンラインが主体のルートで房総半島南端エリアまでをセクター1とします。セクター2は半島南端から国道410号、県道34号を経て「大山千枚田」まで。セクター3は「大山千枚田」から「紅葉ロード」を経由し、館山道「富津中央IC」までとしています。

the「燃費」の設定ルート。房総半島最南端エリアにて

 高い山のない房総半島ですが、快走路ルートはアップダウンが続く場面が多く、交通量が少ないため流れの速度維持にアクセルを保つ印象で、ツーリング時の素の燃費が解るルートだと思います。

 ワインディングルートを走る「トリシティ300」は、楽しい! の一言。安定感があり、コーナリングも車体を傾けて曲がる感触が2輪同様ながら、独特のしっかり感、グリップ感があります。S字カーブの切り返しなど、少し排気量の大きなスポーツバイクのような重厚感もありますが、それが安心感につながっているので邪魔にはなりません。まるで、バイクなのに遊園地でゴーカートに乗っているような気分です。

 このルートで「トリシティ300」は、22.1kmを走行したセクター1と26.3kmを走行したセクター3で39.8km/l、山間部を通り39kmを走行したセクター2で35.8km/lの燃費を記録。平均では38.4km/lと、ぴったり定地燃費値と同じ数値になりました。燃料タンク13リットルを満たせば、300km以上は安心して足を伸ばせそうです。

独特の安心感とファンライド、想定外の好燃費にツーリングも楽しい

 重さとパワーのバランスが燃費に響くのでは? そんな想定を他所に「トリシティ300」は、じつにファンな乗り物でした。「TMAX」的なバキュンと加速することは出来ませんが、かたちを変えた高級車、という印象を持ちました。

いつものツーリング想定の計測ルートを走り終え、ゴール地点の千葉県木更津エリアに到着

■ヤマハ「トリシティ300」燃費結果
総合評価:☆☆☆☆★(ホシ4つ)
総走行距離:178.8km
市街地:26.0km/l
高速道路:34.5km/l
快走路:38.4km/l

【了】

【画像】ヤマハ「トリシティ300」の燃費はどれくらい? 実際に走って調査!(12枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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