ピレリの2つの新タイヤ「ディアブロ・ロッソスポーツ」「ディアブロ・ロッソIII」の魅力に技術面から迫る

ピレリ・ジャパンは、250ccロードスポーツ用の新タイヤ、バイアスの「ディアブロ・ロッソスポーツ」とラジアルの「ディアブロ・ロッソIII」の発売に当たり、タイヤを販売する2りんかんのスタッフ向きに、白糸スピードウェイで試乗会を開催。ここではジャーナリストの和歌山利宏に技術面から解説してもらいます。

バイアス、ラジアルそれぞれの特徴が昇華された新タイヤ

 ピレリの250ccロードスポーツ用タイヤ、バイアスの「ディアブロ・ロッソスポーツ」とラジアルの「ディアブロ・ロッソIII」は、コーナーをさらに攻め込んでみようというライダーに応えてくれます。そんなスポーツ性には、それぞれにバイアスとラジアルの特徴が明確に反映されています。

ピレリ製の新タイヤ「ディアブロ・ロッソスポーツ」「ディアブロ・ロッソIII」を試す筆者(和歌山利宏)

 バイアス構造は、タイヤを補強するカーカスのコード(糸を織り合わせたもの)が周方向に対し25~40度の角度で互い違いに重ね合わされます。そしてブレーカーと呼ばれる部材でトレッドが補強されます。とは言え、タイヤ全体が撓むことで情報を返してくれる傾向になります。タイヤの状態変化が自然で、気負わずに走れる持ち味があるのです。

ラジアルタイヤとバイアスタイヤの違い(※写真はイメージ)

 一方のラジアル構造は、カーカスは真横方向、90度の角度でコードが配されます。ただ、70度程度に角度を付けて、いくらかバイアスに近付けたセミラジアル構造が、昨今のバイク用ラジアルでは多くなっています(ピレリのラジアルは一貫してこれです)。いずれも、そのままではトレッドは剛性不足で、ベルトという補強材(コードをトレッドに巻き付ける0度構造が多い)で固められます。そのため、固められたトレッドが安定したグリップ力を発揮しながら、柔軟なサイドウォールの撓み(これがいわゆるつぶれ感)が豊かな情報を提供。高水準のコーナリングが可能になります。

 選択に当たって気になるのは価格ですが、ラジアルのほうが高価です。でも、それは単にラジアルが高性能だからというわけではありません。ラジアルは作るのにコストと手間暇がかかるのです。

 バイアスだと、ゴムやカーカス、ブレーカー、ビードワイヤーを1枚の板状にしたものを型に入れれば出来上がります。対してラジアルは、トレッドがベルトで固められるので、膨らませてタイヤの形状に仕上げることはできません。そこで、タイヤの形状に成型した後、ベルトを巻き付け、さらに成型という2段工程が必要になるのです。

ロッソスポーツに感じる見事なキャンバースラスト特性

 両タイヤは軽量級向きにアレンジされ、さらに今日的なスポーツ性を具現化するための開発を受けています。

ピレリ製の新バイアスタイヤ「ディアブロ・ロッソスポーツ」

 バイアスのロッソスポーツは、シャープにコーナーに切り込んでいく旋回性が魅力です。トレッドプロファイルはセンターの曲率が小さめで、ハンドリングを軽快にしながら、曲率が大きめのショルダー側でグリップを稼いでいるようです。そして、適度な剛性感で保たれたトレッド形状が崩れることなく、プロファイルに忠実に沿った旋回特性を感じます。

 トレッド剛性の絶妙さに感心し、聞くと、2枚のポリエステルブレーカーと2枚のナイロンブレーカーが重ねられているとのこと。おそらくは、こうした造り込みがシャープな旋回性に寄与しているのでしょう。

 さて、ここでタイヤの曲がる力というものについて考えてみますと、まず一つにキャンバースラストなるものがあります。円錐形のものを転がしたとき曲がっていく力と考えればよく、バイクはこれによって曲がり始めます。でも、掛かる荷重によってタイヤが撓(たわ)むと、タイヤの向きと進行方向にズレ角が生じます。このスリップアングルによって、もう一つの曲がる力であるコーナリングフォースが生じると考えることができるのです。

 このロッソスポーツが期待通りにしっかり曲がってくれるのは、フルバンクに向かってキャンバースラストがリニアに立ち上がってくれるおかげとの印象を受けました。

ロッソIIIに感じる見事なコーナリング特性

 ラジアルのロッソIIIでは、一次旋回が終わるタイミングでタイヤのツブレ感とともに接地感が高まります。

ピレリ製の新ラジアルタイヤ「ディアブロ・ロッソIII」

 そのツブレ感は、これまで経験したことがないほど柔軟です。そのときは車格に合わせてアレンジされているとは思ったのですが、試乗後にリリースを見て納得です。ピレリは一貫してベルトはスチール製ですが、何とこれはアラミド製なのです。
 
 しかも、その接地感を保ったままフルバンクとなるクリップを目指すことができます。今日のレーシングスタイルよろしく上体をイン側に入れて旋回性を引き出す可能性を思わせます。

 こうした特性は一昔前だとあまり期待できませんでした。これは、フルバンクに向かっても、スリップアングルに対してコーナリングフォースがリニアに高まってくれるおかげでないかと感じた次第です。

 タイヤの著しい進歩をまたしても実感させられたのでした。

【了】

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Writer: 和歌山利宏

1954年2月18日滋賀県大津市生まれ。1975年ヤマハ発動機(株)入社。ロードスポーツ車の開発テストにたずさわる。また自らレース活動を始め、1979年国際A級昇格。1982年より契約ライダーとして、また車体デザイナーとして「XJ750」ベースのF-1マシンの開発にあたり、その後、タイヤ開発のテストライダーとなる。現在は、フリーのジャーナリストとしてバイクの理想を求めて活躍中。

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