カワサキ「Ninja ZX-25R」足つき性は? 身長161cmのライダーでも楽々届く?

2020年9月10日に発売されているカワサキ「Ninja ZX-25R」は、4気筒250ccエンジンを搭載した唯一無二のスーパースポーツです。ここではジャーナリストの和歌山利宏さんに足付き性にスポットを当て解説してもらいます。

2気筒のNinja 250よりも10mm低いシート高

 カワサキ「Ninja ZX-25R」(以下ZX-25R)の足着き性は良好です。シート高785mmは同じカワサキの2気筒車、ニンジャ250よりも10mm低く、両車の足着き性そのものに大差はないと感じたとは言え、良いことに変わりはありません。

カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」と身長161cmの筆者(和歌山利宏)

 そうであっても、30年前のカワサキの250cc4気筒車「ZXR250」のシート高は750mmでしたし、当時のライバル車には730mm程度のものもあったぐらいですから、さらなる低シート高を望む方もおられたかもしれません。ただ、当時の250ccクラスが女性ライダーも照準にしていた背景があったことはともかく、昨今は全般にシートが高くなってきたことは事実です。

競技車両である「ZXR-7」「ZXR-4」のレプリカとして登場したカワサキ「ZXR250」

 これは多分に、マシンの運動能力、旋回性の向上に起因していると思います。マシンが曲がると言っても、その能力を引き出すのはあくまでもライダーなのです。上体をダイナミックに動かし、積極的に荷重コントロールしなければならず、ライポジの前傾度が強くなってくるのです。ライダーの位置が高いほうが効果的に荷重コントロールしやすいこともあり、着座位置も高くなるのです。

カワサキ「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」と身長161cmの筆者(和歌山利宏)。ライダーの位置が高く、ライポジの前傾度が強くなることで荷重コントロールしやすくなっています

 また、超高性能マシンでは、上体が前傾していないと、強烈な加速Gによっていとも簡単にウィリーしてしまいます。25Rがウィリー対策でシート高を高めたわけではないでしょうが、ハンドリング面で今日のマシンをコントロールするに適したシート高と上体の前傾度が与えられていると考えていいでしょう。

 ライポジの基本はニンジャ250に準じながらも、ハンドルはグリップ1本分ぐらい低く、ステップは20mmほど後退している印象です。車両の性格は同じくオールマイティ路線であっても、ニンジャよりもややサーキット寄りであることを、ライポジが物語っているのです。

ライディングポジションとその変遷

 ここで、ライディングポジションとその変遷について考えてみましょう。

 70年代前半期までのレーシングマシンのライポジは、細長い燃料タンク後方の比較的に低い位置にシートがあって、ライダーはそこから遠く前方のハンドルに手を伸ばすフォームを取っていました。空気抵抗を小さくする狙いもあったでしょうが、かなりの後荷重ポジションで、デリケートなフロントに負担を掛けず、リヤへの荷重でタイヤを潰し、旋回性を高めていく乗り方に合っていたのです。

1970年代に活躍したカワサキ「H1R」。昨今のスーパースポーツと違い、細長い燃料タンク後方の比較的に低い位置にシートがあります

 これが80年代に入ると、着座位置が高く、タンクは短くなり、前方への積極的な体重移動が可能になり始めました。スリックタイヤの出現でコーナリング性能が高まり、マシンの高性能化も手伝って、ライポジに変化が生じてきたのです。そして、さらなるマシンの進化に合わせ、近年、その傾向を強めてきたというわけです。

 こうした変遷に関わらず、マシンの重心に対し、ライダーの重心がその後方に位置していることに変わりはありません。ライダーが基本姿勢において何もせずGも受けない状態では、やや後荷重になるようにできているのです。それが自然で、必要に応じて適時前荷重を高めてやるのがライディングには好都合なのです。

 だからと言って、ライダーとマシンの重心が離れ過ぎても問題です。ライダーのGが抜けた抜重状態になったとき、荷重状態のときと著しく重量バランスが変化し、コントロールしにくくなるからです。ですから、今日のようにマシンの運動性能が高まると、以前よりもライダーとマシンの重心は接近せざるを得なくなります。

現在カワサキがレースで使用する「Ninja ZX-10RR」。着座位置は高く設定されています

 そのため、着座位置は高く、前方に移動することになります。着座位置が高いと重心位置が離れるようにも思われますが、ライダーは体幹をより前方低くに移動しやすくなるわけで、マシンとの重心位置が近づくと考えることができるのです。

 もし、ZX-25Rをサーキット専用車として楽しむなら、もっとシート高を高め、ハンドル位置を低くしたほうがいいかもしれません。そのほうが旋回性を引き出しやすくなる期待があります。でも、ノーマルのライポジは、多くの人が街乗りからサーキット走行までを楽しめる設定になっているのです。

【了】

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Writer: 和歌山利宏

1954年2月18日滋賀県大津市生まれ。1975年ヤマハ発動機(株)入社。ロードスポーツ車の開発テストにたずさわる。また自らレース活動を始め、1979年国際A級昇格。1982年より契約ライダーとして、また車体デザイナーとして「XJ750」ベースのF-1マシンの開発にあたり、その後、タイヤ開発のテストライダーとなる。現在は、フリーのジャーナリストとしてバイクの理想を求めて活躍中。

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