ホンダ「CRF250L<s>」が喚び起こすオフロードの楽しさ!! ホンダの軽快デュアルパーパスが帰ってきた!!

吸排気系を見直し、フレームも新設計。フルモデルチェンジし、2020年12月17日に発売された「CRF250L<s>」をモーターサイクルジャーナリストの青木タカオさんが試乗しました。躍動感あふれるスタイルが、アグレッシブな走りを予感させます。

これぞホンダ4ストトレール!!

 今回は車名に<s>とつく、サスペンションストロークの長い「CRF250L<S>」に乗りました。飛んだり跳ねたり、オフロードバイクと呼ぶに相応しい身のこなしと軽さ、扱いやすさに感激です。

ホンダ「CRF250L<s>」に試乗する筆者(青木タカオ)

 1972年に本格的な4サイクルオフロード車として「SL250S」を発表して以来、その後の「XL」&「XR」シリーズに脈々と受け継がれてきたホンダ・トレール車の伝統。“プレイ&エンデューロ”の思想、すなわち「より楽しく軽快に」「より幅広いライダーに」「長時間のライディングでもストレスなく」という開発コンセプトを「CRF250L<s>」に乗ると強く感じてなりません。ホンダの軽快デュアルパーパスが帰ってきました!

「XR230(MD36)」の生産終了を受け、初代「CRF250L」が登場したのは2012年のこと。2017年には「CRF250 RALLY」がラインナンプに加わり、世界累計約13万台を販売する人気シリーズとなりました。

 8年越しのフルモデルチェンジとなった「CRF250」シリーズですが、従来型はモトクロス競技車“CRF”の名を冠するもののトータルバランスが重視され、オンロードでの扱いやすさや安定性に優れる反面、ダートでは操縦性に若干の重さを感じていました。

ホンダ「CRF250L<s>」(2020年12月発売)カラーリングはエクストリームレッドのみ

 新型はそこを見事に解消し、ダートも軽快に操れるではありませんか。もっとも感心したのは、横剛性が高すぎないシャシー。滑り出してからも車体の挙動が穏やかで、ストローク量に余裕のある前後サスペンションとの組み合わせでコントロールがしやすいのです。コーナリングでテールスライドしても流れ方が一定かつ落ち着いていて、マシンが一気に起き上がってハイサイドなんてこともありません。

 エンジンもローギア化され、駆動力が欲しいところでガツンと押し出してくれます。またトラクションの良さが際立ち、グリップしにくい路面の上り坂もスルスル進み、旋回も前輪を地面に押し付けるようフロントを沈めてクイックに曲がったり、フロント荷重を少なく大きくターンしたり、状況に応じた走り方が選べてコーナーへのアプローチにバリエーションが増えています。

踏ん張る足まわり、縦の動きも軽快!!

「CRF250L<s>」は従来型(CRF250L)より4kgの軽量化を実現していますが、感覚的にはもっと軽くなった印象で立体的な縦の動きに対しても挙動が掴みやすくなっています。

ホンダ「CRF250L<s>」に試乗する筆者(青木タカオ)

 ボディアクションに対して反応が良く、サスペンションの伸び縮みもイメージ通り。動き出しはしなやかなストロークですが、負荷がかかったら奥でしっかり踏ん張ってくれるので、ジャンプの着地もシャシーとともに衝撃をしっかり吸収してくれます。

 最低地上高を30mm上げて285mmとし、前後サスペンションのストローク量をフロント10mm、リア20mm伸ばして260mmに延長。リンクレシオの見直しもあって、ストローク量は十分に余裕があるという印象です。車体が軽くなったからこそ、ストロークの増えた足まわりも活かされ、バランスに優れたデュアルパーパスへと進化しています。

シート高は880mmと高いものの……

 足つき性が気になる人も少なくないでしょう。シート高は<s>の場合880mmとオフ車らしく高めですが、スリムに絞り込まれたシート形状と、ライダーの着座によって沈み込むソフトなサスペンション設定のため、身長175cm/体重67kgの筆者だと両足を地面におろしてもカカトが若干浮く程度。オフロードバイクに慣れたライダーなら、880mmのカタログ値に怯む必要はなさそうです。

身長175cm/体重67kgの筆者(青木タカオ)がシート高880mmの車体にまたがった状態(モトクロスブーツを装着)。片足であればブーツの底全面が地面に届く

 気軽な乗り降りや足つき性を重視するなら、<s>のつかない「CRF250L」がシート高830mmと低く設定されているのでオススメです。開発責任者の杉山栄治さん(本田技研工業株式会社 二輪事業本部ものづくりセンター)によると、「こちらもトータルバランスに優れ、オフロード性能にも自信があります」と胸を張ります。

 杉山さんはプライベートでも「CRF250L」に乗り込み、2017年には「CRF250RALLY」でアジア最大のクロスカントリーラリーである『アジアクロスカントリーラリー』など海外レースにも参戦する根っからのオフロード好き。新型のダート走破性が高いことも頷けます。

デュアルパーパスとしてオン/オフでレベルアップ!!

 オフロード性能を向上した一方で、市街地での乗りやすさや普段の使い勝手の良さはスポイルされていないのが見事としか言いようがありません。多用する低中回転域で力強さが増し、パルス感のある排気音も心地よいものに。振動が軽減されたことも目を見張りますが、トップ6速がハイレシオ化され、高速道路での走りもスムーズです。

 クセのないニュートラルなハンドリングで、ワインディングも苦にしません。車体全体の軽量化がオンロードでも好影響を及ぼし、林道へ至る狭く舗装の荒れた滑りやすい道では、新搭載のアシストスリッパークラッチがシフトダウン時のエンジンブレーキによる後輪ホッピングも軽減してくれ、大きな安心材料に。また、クラッチレバーの操作荷重が従来比20%低減し、左手がとてもラク。良いこと尽くめとなりました。

 フロントマスクも「CRF450L」のようにモトクロスマシン直系の本格派をイメージさせるもので、シャープに跳ね上がるリアカウルまで贅肉がそぎ落とされています。スタイルも多くのバイクファンが納得するところでしょう。

 熱いオフロードファンが主眼を置くダートでの走りを飛躍的に向上させつつ、日常の市街地走行から高速道路、ワインディングや林道へ至る荒れた山道も得意なものとした新型「CRF250L<s>」は、先代を凌ぐ人気を獲得すること間違いなしです!!

■車両価格(消費税10%込み)
CRF250L:59万9500円
CRF250L<s>:59万9500円
CRF250RALLY:74万1400円
CRF250RALLY<s>:74万1400円

【了】

【画像】ホンダ「CRF250L<s>」の詳細とアジアンラリーを走った開発責任者を見る(19枚)

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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