爽快な走り!! スズキの油冷単気筒ロードスポーツ「ジクサーSF250」が秀作なワケ

スズキ「ジクサーSF250」は、排気量250ccの油冷単気筒エンジンを搭載する、同クラスのモデルラインナップでは独自路線を貫くロードスポーツモデルです。その特徴をライターの伊丹孝裕さんが解説します。

これぞスズキの真骨頂!! 2輪にも貫かれたメーカーの姿勢

 スポーツシングルやライトウェイトスポーツ、ボーイズレーサーという言葉を思い浮かべ、キュンとしてしまうのは例外なく元ボーイズ、つまりは現オッサンでしょう。パワーを持て余しているビッグバイクを軽量マシンで追い回し、タイトなコーナーでインをズバッと刺す。実際に公道でやってはダメですが、スペックより腕で優位に立つシーンを想像すると心躍るものがあります。

スズキ「ジクサーSF250」に試乗する筆者(伊丹孝裕)

 こんなことを思ったのは、スズキの250ccスポーツ「ジクサーSF250」(以下、ジクサー)に乗ったからです。このバイクには、そういうイメージを掻き立てる一体感があり、爽快そのもの。250ccクラスの在り方として、とても健全なものに感じられました。

 実際、車重は158kgに過ぎません。この数値は、ホンダ「CBR250RR」=168kgや、ヤマハ「YZF-R25」=170kg、スズキ「GSX250R」=178kg、カワサキ「Ninja ZX-25R SE」=184kg、カワサキ「Ninja250」=166kgといった同排気量モデルより圧倒的に軽く、ヒラヒラと軽快なハンドリングを披露。その様は、ホンダ「CB250RS」(1980年)や、ヤマハ「RZ125」(1982年)、「SDR」(1987年)といった往年のコーナリングマシンを彷彿とさせます。

 搭載されるエンジンは単気筒です。それゆえ最高出力は26PSと控えめながら、低回転域から厚みのあるトルクが引き出されているところが好印象です。スロットルを開けるとすぐさま「タタンッ」と力強く反応し、力不足を感じる場面はありません。その冷却方式には油冷が採用され、水冷に対してシンプルな構造を実現。軽さとスリムさを追求することによって高い機動力が確保されているというわけです。

新開発の排気量249cc油冷単気筒エンジンを搭載するスズキ「ジクサーSF250」

 そして、なにより見逃せないポイントが48万1000円という価格(消費税10%込み)ではないでしょうか。車重同様、他モデルを引き合いに出すと次の通りです。

■車両価格(消費税10%込み)
ホンダ「CBR250RR」 85万4700円
ヤマハ「YZF-R25」 65万4500円
スズキ「GSX250R」 54万8900円
カワサキ「Ninja ZX-25R SE」 91万3000円
カワサキ「Ninja250」 65万4500円

 ご覧の通り、イニシャルコストのお得感はぶっちぎり。2020年のヒット作、ホンダの「CT125・ハンターカブ」が44万円なことを思えば、スズキのがんばりは大いに評価されるべきでしょう。

 いつぞや、スズキの鈴木修会長は「軽は貧乏人のクルマ」とぶちかまし、物議をかもしたことがあります。もちろんこれはユーザーをさげすむものではなく、「軽は人々の足として手に入りやすい価格であるべき。付加価値をつけてやたらと高く、重くなっていくのはいかがなものか」というのが真意でした。中小企業のおやじを自称する会長らしく、ユーザーの立場に寄り添った発言だったのです。

装備重量158kgのスズキ「ジクサーSF250」はコンパクトなエンジンとフレームにスポーティなデザインのフルカウルを装備。スイングアームマウントリアフェンダーを採用

 そういう姿勢は2輪にも貫かれていて、例えばジクサーの燃費は37.7km/l(WMTCモード値)を公称。超高回転型の4気筒エンジンを搭載する「Ninja ZX-25R SE」は18.9km/lですから、ほぼ2倍なのです。それぞれのモデルの立ち位置は異なるとはいえ、 ランニングコストの面でも企業努力が伺えます。

 単気筒という形式上、それほど高回転までは回りませんが(レブリミットは10000rpm強で作動)、6000から8000rpmあたりの鼓動感はとても心地よく、小まめなシフトチェンジでその領域をキープする醍醐味はスポーツライディングそのもの。のんびり走りたい時は力強いトルクに任せておけばよく、いかように応えてくれる懐の深さが魅力です。

 切削加工が施されたホイール、上質な塗装を持つエンジン、グリップ力に優れたラジアルタイヤの採用、クラス唯一のスイングアームマウントフェンダーなど、その仕上げや装備にも見どころが多く、「この価格だからこんなもの」というあきらめを必要としません。

スズキ「ジクサーSF250」に試乗する筆者(伊丹孝裕)

 ビギナーが初めての1台に選んでも、ベテランが手軽なセカンドバイクとして手に入れても不満のない、秀作スポーツバイクが「ジクサー」なのです。

【了】

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。鈴鹿8耐、マン島TT、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムといった国内外のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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