スズキ新型「ハヤブサ」は“知性を備えた狂気” デザインと空力のせめぎ合いで生まれた3代目アルティメットスポーツ
スズキは2021年2月5日に全面改良したアルティメットスポーツ「Hayabusa(ハヤブサ)」の新型モデルを公開しました。デザイン面においてはどのような苦労があったのでしょうか。
スズキのスピリットを表している最高傑作
スズキは2021年2月5日に全面改良したアルティメットスポーツ「Hayabusa(ハヤブサ)」の新型モデルを公開しました。
初代・二代目モデルのスタイルを彷彿とさせながらデザインを一新した新型のハヤブサの開発時にはどのような苦労やこだわりが込められているのでしょうか。
スタイリングデザイナーの小川 和孝さん、髙野 拓美さん、カラーデザイナーの川口 健さん、クレイモデラーの内山 茂さんは次のようにコメントしています。
■スタイリングデザイナー 小川 和孝さん
「この新しいハヤブサは今、スズキが持てる最高の技術とパッションを盛り込んで作られたスズキのスピリットを表している最高傑作だと考えています。
膨大な数のトライ&エラー、デザイン的にも色々繰り返してきました。今までの初代(1998-2007)、2代目(2008-2020)のハヤブサがフラッグシップとして、レジェンドとして、今あるものが最高だ、これが素晴らしいんだという風潮になりがちだったんですね。
ですけど、“殻を打ち破ってまったく新しい魅力を備えたものにする”という、その一点に関しては気を使いました。
みんなが思う“ハヤブサ”のイメージっていうのをあまり変えない中でも新しく見えるような、そういうスタイリングっていうのを色々と試行錯誤しながら作り上げていったんで、日の目を見なかったプロトタイプがいくつもあってようやく今の形になっているんです」。
狂気を備えたスタイリング
■スタイリングデザイナー 髙野 拓美さん
「デザインコンセプトは“The Refine Beast”(リファインド・ビースト)なんですけど、“知性を備えた狂気”というのをスタイリングの中で表現しています。
ハヤブサの溢れ出るパワーとかエンジンを掛けた瞬間に感じるパッション、怪物のようなパワーのタガを外さず、なおかつすべて手の内でコントロールする、そういう理性と狂気を備えたスタイリングっていうのを目指しました。
サイドに入っているメッキモールですが、もちろんハヤブサとして空力にも寄与するパーツになっています。また、薄暗い中でもキラッと光る特徴にもなっていますし、“アルティメットスポーツ”という孤高のジャンルで売っているからこそメッキの別体パーツにして“所有感のためのデザイン”というのを施しています。
お客さまに驚いてもらう、喜んでもらうために用意したディテールっていうのは絶対に譲らないぞと。空力のためにデザインで苦労したところでいうとミラーですかね。今回のハヤブサでは見た目の速さも追求して空力との整合性をとって作っています。
ほんとは自分たちがデザインしたところなんで変えてほしくはないんですけど、使う人によって色々、好き好きに乗ってもらえばいいかなと思っています」。
空気の流れを表現するデザイン
■カラーデザイナー 川口 健さん
「“ハヤブサ”っていうのはすごくパワーを持っていますが、それをサイドのメッキパーツからマフラーに流れる、エンジンの力を見えるようにしたっていうのが、今回のCMF(※Color/色、Material/素材、Finish/加工、それぞれの頭文字をとったもの)から考えたデザインコンセプトになります。
あともう一つはパワーをアシストするために空気の流れを表現するデザインを施しています。
また、新しくなるということを考えると“隼”っていう漢字は変えていこうということで、スピード感を殺さないようにしつつ強弱をつけて“らしさ”を出しているロゴにしました」。
“いいところ”を狙いながら造形
■クレイモデラー 内山 茂さん
「空力はCdAというはっきりとした数字に現れますが、いくら空力がよくてもハヤブサと思われない形になってしまえばどうしようもありませんから、“いいところ”を狙いながら造形も仕上げてあります。
テール周りもそうなんですけど、ちょっとふくよかなハイライトの通るラインは何回も試行錯誤して作り上げて行きました。ハヤブサの特徴で空力は欠かせないと思っています。
フロントから流れる風が集中するフィンなども空力の一つで、これが有ると無いとでは全然変わってきます。そういう細かいところも何度も何度も繰り返して風洞実験を行って仕上げて行きました。
※ ※ ※
デザイナーと設計、そしてその間を取り持つクレイモデラーの力を集結して生まれ変わった「ハヤブサ」。唯一無二の「アルティメットスポーツ」が市場にどれほどの活気をもたらしてくれるのか期待が高まります。
【了】