奥多摩の山中に突如現れる現役トロッコ!! その正体とは? ツーリング先で見かけた不思議な光景を解明する

ツーリング中に「こんなところにナゼこんなものが!?」という思わぬ光景を目にすることがあります。今回は東京都奥多摩で遭遇した「無人トロッコ」をご紹介しましょう。

奥多摩ツーリングで見た、無人で動くトロッコの正体

 ツーリングをしていると、たまに「こんなところにナゼこんなものが!?」という思わぬ光景を目にすることがあります。今回は東京都奥多摩で遭遇した「無人トロッコ」をご紹介しましょう。

奥多摩の都道204号線日原街道をバイクで走っていると、突如頭上に現れる大きなアーチ橋が視界に入る。そこには無人のトロッコが走っている

 その光景に遭遇したのは、奥多摩ツーリングのメインルートである国道411号線を西へ向かい、JR青梅線「奥多摩駅」を過ぎたあたりで右折し、都道204号線日原街道を北上してかなりの距離を走った場所です。もうすぐ川苔山の登山口に差し掛かろうというあたりでしょうか。

 右コーナーを曲がった瞬間、視線の上のほうに大きなアーチ橋が見えてきました。「こんなところに鉄道なんか通ってたっけ?」そう思いながらバイクを停めると、何やらガタゴトと大きな音がします。橋をよく見てみると、箱状の物体が一定間隔で規則正しく動いていました。どうやら無人で動くトロッコのようです。

 この線路を調べてみると「奥多摩工業曳鉄線(おくたまこうぎょうひきがねせん)」という路線で、奥多摩工業という石灰石を採掘・加工販売する会社のもの。採掘場である氷川(ひかわ)鉱業所のある日原地区から、加工場のある奥多摩駅近くまで約5kmを結んでいます。ほとんどが山中のトンネルで、一部鉄橋部分のみ見ることができるそうで、この鉄橋はそのレアな場所のひとつなんですね。

 路線はいわゆる「曳索(えいさく)鉄道」で、トロッコは曳索と呼ばれるケーブルにつながれており、それを引っ張ることで無人で運行する仕組みだということです。だから一定間隔、等速でトロッコが動いていたというわけです。

JR青梅線の終着駅である「奥多摩駅」の周囲には飲食店なども多く、ハイカーで賑っている

 奥多摩駅周辺に戻ってきた際、地元の人に聞いてみると「駅の裏の工場の先に行けば、もっと近くから見られるよ」と教えてもらいました。その工場とは曳鉄線の終点でもある、奥多摩工業氷川工場です。ここは工場の中を公道が通っていることで一部のマニアには有名な場所ですが、そこをさらに進んで行くと、どうやらトロッコを間近に見られるポイントがあるとのこと。

 早速工場へと向かい、敷地に挟まれた細い公道の周囲は石灰岩の粉なのか、白い埃に覆われた工場施設。公道の終点の先には、細いダートが続いていました。地元の人は「カブなら行けるんじゃない?」と言っていましたが、少し進んだところで道が荒れてきたので、その先は徒歩で進んでみました。

奥多摩駅のすぐ北側にある奥多摩工業氷川工場。右に伸びている道は公道で、この奥の山道をかなり進んで行くと、トロッコを近くで見ることができる

 すると、杉林の向こうから「ガタガタガタ……」という断続的な金属音が聞こえてきました。と、次の瞬間、ガタゴトと鉄橋を渡る無人のトロッコが木々の間から見えたのです。どうやらここは、先ほどバイクで下から見上げた鉄橋と同じ場所のようです。

 番号が振られたトロッコは、片方が石灰石らしき荷物を積み、もう片方は空荷。静かな山中に突然現れ、まるでロボットのように淡々と動き続けるトロッコの様子はシュールですが、何か秘密基地を覗き見しているようで、とてもドキドキしました。

 山の中の道は簡単にたどり着ける場所ではないですが、下の都道からトロッコを見るだけでも感動ものです。

ダートの小道を進むと鉄橋を見下ろせるポイントに到達。静かな山の中、ナンバリングされたトロッコがガタゴトと無人で行き交う光景はとてもシュール

 トロッコは基本的に土日は稼働せず、平日の午前中に動いている場合が多いそうでちょっとハードルは高めですが、奥多摩ツーリングの際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

【了】

【画像】東京都奥多摩にある光景、無人で動くトロッコを見に行くには!?(9枚)

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Writer: 野岸“ねぎ”泰之(ライター)

30年以上バイク雑誌等に執筆しているフリーライター。ツーリング記事を中心に、近年はWebメディアで新車インプレッションやアイテムレビューも多数執筆。バイクツーリング&アウトドアを楽しむ『HUB倶楽部』運営メンバーの1人。全都道府県をバイクで走破しており、オーストラリア、タイ、中国など海外でのツーリング経験も持つ。バイクはスペックよりも実際の使い勝手や公道での走りが気になるキャンプツーリング好き。

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