ドゥカティが持ち込んだ新型カウルの狙いとは? J・ミラーがラップレコード、J・ザルコが史上最高速度を記録!

カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで2回にわたって行われたMotoGPプレシーズンテストが終了しました。このテストでは新型のカウルを持ち込んだドゥカティ勢が好調な仕上がりを見せました。

公式テストでラップレコード&史上最高速度を記録!

 カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで2回にわたって行われたMotoGPプレシーズンテストが終了したが、昨季、2勝に終わったドゥカティ勢が好調な仕上がりを見せている。

ドゥカティ・レノボ・チームのジャック・ミラー

 ラップタイムは、ジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)が非公式ながらマルク・マルケスを上回る1分53秒183を記録し、総合トップ。トップスピードについても、ヨハン・ザルコ(プラマック・レーシング・ドゥカティ)がこちらも非公式ながら史上最高速度となる357.6km/hをマーク。デスモセディチGPを駆るライダーがトップ5を独占した。

 ゼネラルマネージャーのジジ・ダッリーニャが「ストレートでのオーバーテイクは、コーナーでのそれよりはるかに容易であり、レースのマネジメント面でも大いに役立つ」と語るように、強力なエンジンパワーはドゥカティのストロングポイントであり続けてきたが、F1出身のアラン・ジェンキンスをテクニカルディレクターに据えてMotoGPに参入した2003年以来、常に一歩先を行くエアロダイナミクスもイタリア・ボローニャに本拠地を置くメーカーの大きな特長だった。先日のプレシーズンテストでは、さらなる進化がうかがわれた。

 今回、カタールでテストしたフェアリングには、アッパーカウルのエアダクト両脇、サイドカウル上部に加え、新しくサイドカウル下部にもウィングレットが付けられていた。

 フロントホイール両側を通過した空気を地面に向けておよそ90度方向転換するこのパーツには、リアタイヤの前に装着された“スプーン”と呼ばれる空力付加パーツの効果を向上させる狙いがあるのでは? との憶測を呼んだ。 

 通常、フロントホイール脇を流れた空気はマシンの下で乱気流となるが、新たに付けられたサイドカウル下部のウィングレットは、ドラッグ(空気抵抗)を減らして直進安定性を向上させ、マシン後方へと向かう空気を整流する役割を持つと考えられている。

エスポンソラマ・レーシングのルカ・マリーニ

 ミラーも「新しい空力パーツは確かにバイクをより安定させているようだ」とその効果を認め、バレンティーノ・ロッシの異父弟で、今季からサテライト・チームのエスポンソラマ・レーシングでMotoGPを走るルカ・マリーニも「ストレートで何の違和感も無い。コーナーに入る時にバイクが少しだけ楽なので、メリットは大きいと思う」と評価している。

新型カウルの狙いはさらなるトップスピードの向上?

 エアロダイナミクスの専門家は、新しいフェアリングは以前よりもスリムになっており、ダウンフォース(走行するマシンを路面に押し付ける空気の力)ではなく、ドラッグ(空気抵抗)を減らしてトップスピードを上げることを重視していると分析する。

プラマック・レーシング・ドゥカティのヨハン・ザルコ

 マスダンパー(振幅のいちばん大きい箇所にウエイトをつけて振幅を相殺して振動を小さくするもの)を内蔵するとされる、テールカウルの通称“サラダボックス”が小型化され、形状も変わっていたが、もしかしたらこれも空力的な見地からの設計変更だったのかもしれない。

 そもそもウィングレットは、ウィリーを抑制することで、コーナー出口でアクセルをより早く開けられるように、また、ブレーキング時にフロントタイヤを食い付かせ、コーナー入り口でマシンの安定性を高められるようにという目的で開発されていたが、近年ではトップスピードやコーナリングスピードの向上にも寄与するようになってきている。

 今回のテストでは装着しなかったが、ドゥカティは、前後ホイールを覆う扇形のカバーもすでに持ち込んでいる。このパーツは直進している時にはホイールまわりの気流を整え、コーナーでは路面近くで空気の圧力差を発生させることでグランドエフェクトを得ていると一部の専門家は見ている。

 多くのMotoGPマシンはバイクが直立している時にダウンフォースを発生するように設計されているが、リーンアングルが45度を超えると、ダウンフォースよりもサイドフォース(横向きの力)の方が大きくなり、タイヤへの負担が増える。しかし、このホイールカバーはコーナリングでバイクが傾いた時にもダウンフォースを発生するということだ。

 ダッリーニャは「エアロダイナミクスはいつも特別な側面を持っている。どのフェアリングでスタートするかは全てのデータを分析してから決める」と煙に巻くが、今シーズンもドゥカティがMotoGPの空力をリードしていくことに違いないだろう。

【了】

【画像】ドゥカティ「デスモセディチGP」を駆るライダーたちを画像で見る(10枚)

画像ギャラリー

Writer: 井出 直人

ロードレース専門誌時代にMotoGP、鈴鹿8耐、全日本ロードレース選手権などを精力的に取材。エンターテインメント系フリーペーパーの編集等を経て、現在はフリーランスとして各種媒体に寄稿している。ハンドリングに感銘を受けたヤマハFZ750がバイクの評価基準で、国産リッターSSと昭和スクーターを所有する。
Twitter:@naoto_ide

最新記事