普通自動二輪免許で乗るスポーティな電動バイク SUPER SOCO「TC MAX」ってどんなバイク?

便利な移動手段として向くスクーターのみならず、スポーティな走りを楽しめる電動バイクも存在します。オーストラリアのバイクブランド、SUPER SOCOの「TC MAX」を走らせる機会を得ることができました。その印象をお届けします。

電動バイクにもライトウェイトスポーツモデルが!?

 オーストラリアに本社を置くVmoto社の電動バイクブランド、SUPER SOCO(スーパーソコ)の「TC MAX」は、日本では複数の電動バイクブランドを輸入、販売している「XEAM(ジーム)」にラインナップされています。運転するにはAT普通自動二輪免許以上が必要になります。

SUPER SOCO「TC MAX」

 XEAMの試乗会にて走らせる機会を得られたので、その印象をお伝えしましょう。

 外観はネオレトロといった印象です。横から見るとバッテリーやモーターを搭載する車体の中心部にボリュームを感じますが、横幅はすっきりとしています。定格出力3900W、定格容量3240Wh(72V45A)のバッテリーは、内燃機関のバイクで言う燃料タンク部分に収納されています。

 バッテリーは取り外しが可能ですが、その重さは約23kgあります。試しに持ってみると、身長153cm、体重40kg(筋力少なめ)の筆者(伊藤英里)の場合、腰にズシリと来る重さでした。

 また、その重さから取り外しも容易ではありません。外したバッテリーにアダプターをつないで充電も可能ですが、車体に直接アダプターをつなぎ、充電する方が現実的でしょう。なお、充電は家庭用の100Vコンセントが利用可能です。

 バッテリー自体の重さはあるものの、車体は軽量クラスの約103.5kgとなっています。またがってみると、その足つき性の良さにびっくり。シート高は770mmながら、両足のつま先がしっかり地面に届き、踏ん張ることができます。

定格容量3240Wh(72V45A)のリチウムイオンバッテリー1個を搭載。充電時間は8時間から9時間

 サスペンションの動きもよく、40kgの体重でも停止状態でまたがると沈み込みを感じることができました。また、内燃機関のバイクのようにエンジンを搭載していないため、車体がスリムで足を地面へ下ろしたときに干渉する部分が少なく、これも足つき性の良さに貢献しています。小柄なライダーにとって、足つき性は大きなチェックポイント、「TC MAX」はなかなかの好印象でした。

 走行モードは「1・2・3」の3段階あり、最も抑えめなモードが「1」になります。ハンドル右のスイッチで選択すると、丸型のメーターにはそのモードで走った場合の走行可能距離が表示されます。ちなみに、このときはバッテリー残量約75パーセントで走り始めたのですが、XEAMのスタッフから「そろそろ最高速度に影響が出てくるバッテリー残量ですよ」と説明を受けたのが印象的でした。電費を考えながら走る、電動バイクならではの走り方でしょう。

丸型メーターはアナログとデジタルの組み合わせ。デジタル表示では走行モードやバッテリー残量、走行可能距離などを表示

 今回試乗したコースは、片道7kmほどの緩やかなワインディングロードです。SUPER SOCO「TC MAX」は、加速については驚くほどスムーズな印象です。ドンという急激に湧き出るトルク感ではなく、発進からの加速まで安心できるものでした。

 走行モード「1」は確かに控えめですが、モード「2」では過敏ではなく物足り無くもない心地よい加速感です。カーブの出口でスロットルを開けると、リニアな反応を感じられました。モード「3」はもう少しスピードの伸びが急になる印象です。楽しんで乗る範囲であれば、モード「2」でも十分走りを楽しむことができるでしょう。

 あえて違和感を挙げるならば、ブレーキ時の感覚です。SUPER SOCOは回生ブレーキのない電動バイクになっています。このため、スロットルを戻してもエンジンブレーキに相当する減速が得られません。そのスピードを保ったままブレーキをかけていきます。4ストロークの内燃機関のバイクに慣れている筆者にとって、この感覚は斬新でした。

 重量物であるバッテリーとモーターは、車体のほぼ中心部に集められています。車体を起こす、寝かせるという動きの中で、この重さを感じることになりました。車体重量約103.5kgを考えれば「もっとヒラヒラと動いてもよさそうなのに……」と走りながら疑問に感じたほど。

 また、サスペンションの動きが良すぎるきらいもありました。ライダーがある程度の体重であれば、荷重をかけることで車体が安定したのかもしれません。

 一方で、こうした車体の動きやトルクの特性、回生ブレーキの有無などが電動バイクのそれぞれの個性なのかもしれない、とも感じました。おそらく、内燃機関のバイクとは違った走らせ方を追求することで、おもしろさが深みを増していくはずです。

足元のペダル(リアブレーキ、シフト)は存在しないが、体験レベルの試乗ではとくに違和感はなかった

 SUPER SOCO「TC MAX」のような電動バイクには、バイクを楽しむ新しい可能性があるのかもしれません。価格(消費税10%込み)は49万2800円です。

■SUPER SOCO「TC MAX」スペック
定格出力(最大出力):3900W(4500W)
最高速度:95km/h以下
航続距離:110km以下(体重75kgのライダーが45km/hで定地走行した場合)
車体重量:約103.5kg(バッテリーを含む)
充電時間:8時間から9時間
バッテリー重量:約23kg
バッテリー定格容量:3240Wh(72V45A)
最大登坂角度:17度
モーター:SUPER SOCO製
ブレーキ方式:前後ディスク
タイヤサイズ:90/80-17(前輪)、120/70-17(後輪)
バッテリー着脱:可能
サイズ:1982×740×1031mm
シート高:770mm
最低地上高:189mm
アプリ対応:不可
充電:100V対応
バッテリー:リチウムイオン
製造国:中国

【了】

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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