ヤマハの大型クルーザー「BOLT」のツーリングでの使い勝手と魅力を確かめてみた!!

2013年に登場したヤマハ「BOLT(ボルト)」は、シンプルなスタイルと力強い走りが特徴のクルーザーモデルです。ツーリングでの使い勝手はどうなのか? 実際に走って確かめてみました。

ヤマハ「BOLT」でクルーザーの魅力を発見、ツーリングで感じた気持ち良さ

 ツーリング雑誌を中心に、2輪メディアに携わって30年以上、さまざまなバイクで取材や試乗を行なってきた筆者(野岸“ねぎ”泰之)ですが、ことクルーザーモデルに関しては乗る機会が少なめ、どちらかと言えばアドベンチャーモデルなどに乗る機会が多く、今回はそんなバイク乗りが、高速道路で千葉県方面、一般道で神奈川県から山梨県方面をヤマハ「BOLT(ボルト)」で走り、ツーリングでの使い勝手を体験してみました。

神奈川県丹沢山系の東に位置する宮ヶ瀬湖周辺は首都圏のライダーが集う人気のエリア。湖の北東には牧場もある

「BOLT」を目の前にして真っ先に感じたのは「シンプルでカッコイイな」です。最近のアドベンチャーモデルの多くは電子制御など多くのデバイスが搭載され、メーターやスイッチ類も複雑なことが多いのですが、「BOLT」にはそれが無く、可能な限り装備や飾りを排した「ボバースタイル」が取り入れられ、カラーリングも黒一色で潔さを感じます。

 ハンドルに手を添え、車体を起こしてスタンドを払うと、ずっしりと重さを感じます。「そう簡単には乗りこなせないゼ」とマシンに言われているような気がして、気持ちが引き締まる思いがしました。

 ただ、シート高が690mmで足つき性がとても良いので不安はありません。エンジンを始動すると、排気量941ccのVツインエンジンは、地面と平行に配置されたサイレンサーを介して低く野太い排気音を放ち、空気を揺らします。アメリカ製のクルーザーのように不均等な爆発音ではなく、規則正しいドッドッドッという音と鼓動感は、どこか安心感があります。

 東京都内の一般道を走ると、交通量の少ない直線道路ではとても快適です。しかし混雑する場面では、ホイールベースの長さもあり当然ながらスクーターのようにクネクネと身軽に渋滞をかわせるものではなく、じっと我慢の運転を強いられます。ただ、地面に近いシートと、操作感の軽いクラッチのおかげで、ストップ&ゴーが続いても意外と疲れない印象です。

ヤマハ「BOLT」のツーリングでの使い勝手を確かめる筆者(野岸“ねぎ”泰之)

 まずは高速道路で千葉方面へ。その時に実感したのが、抜群の安定感です。東京湾アクアラインの海上部分は強風だったのですが、カウル付きのスポーツバイクが横風に煽られて苦戦する中、「BOLT」は車体の重さやホイールベースの長さ、そしてスリムな車体幅のためか、それほど怖い思いをせずに走ることが出来ました。

 続く館山道では、トンネルの中で結構な排気音を響かせます。もちろん迷惑になるような音量ではなく、存在感のある歯切れのいい低音で、乗り手はテンションが上がり、音だけで楽しめました。

一般道からワインディングのツーリングでは?

 では一般道でのツーリングはどうでしょうか。神奈川県から山梨県にまたがる国道413号(通称:道志みち)と周辺の県道を走ってみました。

トルクフルなエンジンはたいていの上り坂ならパワーで難なく走れる。しかしタイトコーナーではステップの接地に気を付けて、あまり速いスピードで突っ込まないよう注意が必要

 フラット気味のハンドルバーはコントロールしやすく、直線やRが緩い大きなコーナーではとても安定感があり、何も気にすることなく走れます。その反面、ちょっときつめのコーナー進入ではすぐにステップを擦ってしまうので、いつも以上に十分な減速が必要でした。

 上り坂の深めのコーナーでは、手前でシフトを落としてひとつ低めのギアで進入すると、マフラーから聞こえるドコドコという低音と力強いトルク感を味わうことができます。細い道でのUターンは、両足が地面に届くので不安はありませんが、ホイールベースの長さとハンドルを切ったときに外側のグリップが遠くなるので、あまりやりやすいほうではないな、と感じました。

 乗っていて「いいな」と思ったのは、視界の中の空が広いことです。ふだん乗っているアドベンチャー系やロードモデルに比べると、クルーザーは着座位置が低く、上方向に視界が開けています。そのため空や山肌の上方などがよく目に入り、通いなれた道でもとても新鮮に映りました。

日帰りはともかく、宿泊ツーリングでは荷物の積載に工夫が必要

 荷物の少ない日帰りツーリングなら問題はありませんが、気になったのが荷物の積載性です。もともとスリムでリアシートも小さいため、キャンプツーリングなどで大きめのシートバッグを積むには苦労しそうです。

ヤマハ「BOLT」はスリムな車体と地面に近いシート高で安心感がある一方、荷物の積載には工夫が必要

 ストレッチコードのフックなどを引っ掛ける場所も見当たらないので、ボルト(ねじ)を交換してフック代わりにするなど、工夫が必要になるでしょう。宿に泊まるツーリングなど、それほど大荷物にならない場合はサドルバッグの装着で事足りると思います。

 また、燃料タンク容量が13リットルと少なめなので、早めの給油を心がければガス欠の不安から解放されるでしょう。

※ ※ ※

 総じて、ヤマハ「BOLT」はシート位置が低く、安定感のある走りにパワフルなエンジンと鼓動感たっぷりの排気音を聴かせてくれる上に、空と景色が広く見える気持ちの良いツーリングマシンでした。そして、旅バイクとしてクルーザーの人気が衰えない理由が、このマシンに乗って少しわかった気がしました。

【了】

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Writer: 野岸“ねぎ”泰之(ライター)

30年以上バイク雑誌等に執筆しているフリーライター。ツーリング記事を中心に、近年はWebメディアで新車インプレッションやアイテムレビューも多数執筆。バイクツーリング&アウトドアを楽しむ『HUB倶楽部』運営メンバーの1人。全都道府県をバイクで走破しており、オーストラリア、タイ、中国など海外でのツーリング経験も持つ。バイクはスペックよりも実際の使い勝手や公道での走りが気になるキャンプツーリング好き。

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