素直にカッコイイ!! 低く構えたコンパクトなハーレー・ダビッドソン「Forty-Eight」に乗る

ハーレー・ダビッドソン「Forty-Eight」は、2010年から発売開始となった低くコンパクトなスタイルが特徴の、排気量1200cc空冷Vツインエンジンを搭載する大型モデルです。そのルックスと走りにはどのような魅力があるのでしょうか。

古き良き時代の名車の資質

「やっぱりカッコイイな……」撮影時に編集スタッフがボソッとつぶやいた言葉を聞いたとき、私(筆者:中村友彦)もそう思いました。と言っても2010年から発売が始まったハーレー・ダビッドソン「Forty-Eight(フォーティエイト)」は、もともとはスポーツスターファミリーの派生機種にして異端児だったのです。

ハーレー・ダビッドソン「Forty-Eight(フォーティエイト)」(2021年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 でもシンプルにしてコンパクト、低く構えたスタイルは、確かに素直にカッコいいと思えるし、改めてじっくり眺めると、全体のシルエットは1930年代から1940年代に生産された、フラット/ナックル/パンヘッドに似ていなくもないような?

 もっともハーレー・ダビッドソンは、1930年代から1940年代ではなく、1950年代に流行したボバーカスタムを意識して「フォーティエイト」を生み出したようです。とはいえ、排気量1202cc、車重252kg、ホイールベース1495mm、タイヤは前後16インチというスペックは、じつは1930年代から1940年代の空冷45度Vツインに通じるところがあって、そういった古き良き時代の名車の資質を、無意識のうちに察知したからこそ、編集スタッフと私は冒頭で述べた印象を抱いたのかもしれません。

マシンとの一体感が得やすい

 ゴーカートと言っては言い過ぎですが、実際に「フォーティエイト」を走らせたら、誰もが新鮮に感じるのは重心の低さ、そしてライダーと路面の近さでしょう。その主な原因は現行ハーレー・ダビッドソンで最も低い710mmのシート高で、ライダーと路面が近い「フォーティエイト」は、どんな場面でも絶大な安心感と意外なスリルを味わわせてくれます。“直線を走っているだけで楽しい”とは、ハーレー・ダビッドソン各車を語る際によく使われる言葉ですが、このバイクは市街地のちょっとした移動でも、なかなかの充実感が得られるのです。

シート高710mmの車体に身長182cmの筆者(中村友彦)がまたがった状態。地面が近く感じる

 それに加えて、低めのハンドルとフォワードコントロール式ステップを採用しているため、マシンとの一体感が得やすいことも、「フォーティエイト」の美点です。もっともこのバイクのライディングポジションは、決して長距離向きとは言えませんし、小柄なライダーには乗りづらさを感じる一因になるのですが、全身を使ってパワーユニットを抱え込むような姿勢で走っていると、なんだか自分の心臓とエンジンの鼓動がリンクしているかのような気分になってきます。

 また、一般的なミッドコントロール式と比べると、フォワードコントロール式ステップは乗り手の荷重・抜重に対する反応が素早く、この要素もマシンとの一体感に貢献しているようです。

排気量1200ccの空冷V型2気筒「Evolution(エボリューション)」エンジンを搭載

 なお、「エボリューション」と呼ばれるエンジンには、さすがに「ミルウォーキーエイト107」(1746cc)や「ミルウォーキーエイト114」(1868cc)のような迫力は備わっていません。ただし、排気量の小ささとパワーの少なさは、見方によっては前述した一体感の得やすさにつながっている気がしますし、不等間隔爆発特有のリズムや、重くて大きなフライホイールが回っている感触は、空冷45度Vツイン全車に共通する要素なので、少なくとも1台で乗っているぶんには不満を感じません。それどころか、アメリカとはまったく異なる日本の道路事情を考えると、気軽に充実感を得やすいのは、「エボリューション」のほうかもしれません。

スポーツモデルの復活を期待

 さて、そんなわけで「フィーティエイト」に好感触を抱いている私ですが、一方で近年の「ストリート」ファミリーの展開には不満を感じています。と言うのも、2020年までは「スポーツスター」ファミリーと呼ばれていたこのシリーズは、その名が示す通り、本来はスポーツ性を重視したバイクが主力でした。ただし、車高とシートを低く設定したローダウンモデルが世界中で支持を集めたことで、ハーレー・ダビッドンはスポーツモデルのラインナップを徐々に縮小し、2021年にはついに廃止してしまったのです。

ハーレー・ダビッドソン「Forty-Eight(フォーティエイト)」(2021年型)

 おそらくその決断の背景には、スポーツモデルの販売が芳しくないという事情があったのでしょう。ただし、1996年に初めて乗った「XL883」と「XL1200S」で、ハーレー・ダビッソンが作るスポーツバイクに感銘を受けた身としては、峠道で車体をバンクさせると、いとも簡単にステップやマフラーなどを擦ってしまう現代のストリートには、そこはかとない物足りなさを感じます。

 もちろん私としては「フォーティエイト」、そして兄弟車と言うべき「アイアン1200」「アイアン883」のキャラクターを、否定するつもりはまったくありません。とはいえ、1957年に発売したXL以来、約60年に渡って熟成を続けて来たハーレー・ダビッドソンのスポーツモデルが、市場から姿を消してしまったことを、残念に感じる人は少なくないでしょう。

 なお現在のハーレー・ダビッドソンマニアの間では、ストリート/スポーツスターは近いうちに廃止されるかも……という噂が流れていますが、私は今後のこのシリーズが、2004年以来となる全面新設計車として生まれ変わり、ローダウンモデルとスポーツモデルの両方がレベルアップを果たすことを期待しています。

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 ハーレー・ダビッドソン「Forty-Eight(フォーティエイト)」のベース価格(消費税10%込み)は153万7800円、取材車両のカラーオプション「ビリヤードティール」は156万7500円です。

【了】

【画像】ハーレー・ダビッドソン「Forty-Eight」(2021年型)の詳細を見る(11枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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