バイクのホイールを軽量化するメリットとは

バイクのホイールを換装して軽量化を図ることに、如何なるメリットがあるのでしょうか。見た目も格好が良くなる社外品の軽量ホイールに交換すると、旋回性や操縦性にどんな効果が現れるのか、大いに気になります。体感できる効果だけでなく、ホイールを軽量化することで起こる幾つかのデメリットについても確認します。

バイクのホイールを軽量化する大きなメリット

 バイクのホイールを軽量化するメリットとは、バネ下重量が軽くなることで慣性モーメントが軽減され、ホイールを回転させるために必要なトルク量が少なくて済むようになることです。そのため具体的には、換装以前に比べ「加速・減速性能」が向上するだけでなく、好燃費にも寄与します。また、ジャイロ効果の軽減によって「旋回性能」の向上やグリップ力が上がります。さらにブレーキの効きや操作性が向上するなど、バイクの基本的な運動性能がアップするメリットが数多くあります。

マルケジーニ製の専用アルミ鍛造ホイールを採用しているカワサキ「Ninja ZX-10RR」

 バイクは同じ出力&トルクのエンジンならば、車重が軽いほうが加速や旋回性能に優位に働くことは容易に想像できると思います。有名な話で「バネ下重量の1kgの軽量化は、バネ上重量を10kg軽量化したことに等しい」などと言われることもあるのです。バネ下に備わるホイールの軽量化がもたらすバイクの運動性能への効果は非常に大きいのです。

 ただ、この件について具体的な数値を示した明確な検証結果があるわけではなく、あくまでもそれらしい効果が期待できるという意味での「例え話」でしかありません。が、ヤマハでも公式サイトで「バネ下重量は軽ければ軽いほど路面の影響を受けにくくなる」と、路面追従性の向上について前向きな見解を示しています。

路面追従性を保つためにMotoGPなどのレースでは軽量ホイールを使用しています

 路面追従性とは、簡単に言えば「タイヤが路面を捉えている」状態を保ちやすいことで、この性能が高いものほど路面のアンジュレーションの変化にタイヤが柔軟に追従し、安定した走行が続けられやすくなるのです。MotoGPなどのバイクレースなどでも、加速・減速・制動・旋回性能の向上のためだけでなく、この路面追従性の向上を目的としたバネ下重量の軽減を目的に、軽量ホイールをはじめ、サスペンションアームなども軽量パーツを多用し、サスペンションセッティングと合わせて高性能タイヤの能力を最大限発揮できるようにセッティングします。

 ほかにも、重いものを動かすより、軽いものの方が動かすトルクは小さくても良いという、単純な理屈からもわかるように、ハンドリングの軽さや操作に対する反応の良さなどで体感できるメリットがあるのです。そのため、軽量ホイールへの換装は、メリットだらけのように感じますが、もちろんデメリットも存在しています。ユーザーは、この両面をしっかりと把握した上で交換については検討しなければなりません。

ホイール換装のデメリットおよび、その交換に関する注意点

 ホイールの軽量化におけるデメリットは、「直進安定性の低下」「乗り心地の悪化」「高価である」ことが代表だと前述しました。直進安定性については純正ホイールに比べて悪くなってしまいますが、これは重たいホイールであればジャイロ効果の働きで、直進安定性は高まります。しかし、軽量ホイールに換装するとその効果が薄れてしまうのです。

 軽いホイールの敏感な路面追従性は、そのまま乗り心地の悪化につながります。路面への追従性が良くなることで道路のわずかな凹凸のショックも拾ってしまうため、ライダーが体感する振動が多くなってしまい“乗り心地が悪い”と感じる状態になるのです。軽量化のためにスチールよりもコストのかかる鍛造アルミやカーボン、マグネシウムなどの素材を使用しているために、ホイールの価格自体も1本10万円程度から、それ以上と高価なこともデメリットと言えるかもしれません。

 ところで、バイクの運動性能はあくまでもトータルバランスで決まります。メーカー出荷した状態のバイクにおける純正ホイールを前提にしたサスペンションのセッティングでは、軽量ホイールに交換することでのメリットを全て享受できるとは限りません。ホイールを交換しただけで、必ずしも価格に見合う効果が得られる保障はないのです。

NSR500でレースに参戦したフレディ・スペンサー選手(1985)

 1984年の南アフリカでのWGP開幕戦予選での出来事です。当時ロードレース界の世界最高峰レースの最年少記録保持者でもあった天才ライダー、フレディ・スペンサー選手が駆るホンダの最新鋭マシン「NSR500」に装備されていたホイールは、世界GP初登場のカーボン素材のコムスターホイールでした。しかし、なんと走行中に割れてクラッシュしてしまうというアクシデントが起こり、“軽量ホイールは割れやすい”と言われた時期もありました。このときの症状は、リムとスポークの連結部分が破損したことが原因で、噂された路面との衝撃などで割れたということではありませんでした。

 ホイールの強度は、単純な素材の違いで「スチール」よりも「アルミ」の方が強度は高くなるのはもちろんです。また、同じアルミ素材であっても、型に流し込んで製造する「鋳造ホイール」と加圧して成形する「鍛造ホイール」では、後者の方が外部からの圧力変形が戻りにくい「可塑性」の効果で、分子密度の高い製品となり、高価ではありますが、圧倒的に軽く高剛性のホイールとなります。

 とはいえ、素材がスチールであれ、アルミやカーボンであれ、やはり縁石や段差などで強い衝撃を与えれば、曲がったり割れたりしてしまうことは避けられません。純正ホイールと同じような注意を払うことは忘れてはいけません。

 軽量ホイールのような社外品ホイールについても、国土交通省の定める「JWL(乗用車用系合金製ディスクホイールの技術基準)」の検査に合格している刻印がある製品以外、車検が通らない(競技用:公道走行不可)こともあります。そのため購入・交換前によく確認しておかねばなりません。

 何度も記しましたが、ホイールの軽量化は、バネ下重量が軽くなることで、さまざまな性能の向上が期待できます。しかし反面、直進安定性や乗り心地で、必ずしも交換費用に対する対効果のバランスを保証するものでは無いなど、問題も若干あります。また純正サスセッティング次第で効果が限定的であるため、見た目の格好良さだけでなくトータル面で自分のバイクに必要な装備かどうか、事前に十分な検討が必要でしょう。

※ ※ ※

 ホイールの軽量化は、バイクの見た目が格好良くなる効果もあります。本来、ファッション性の追求よりも運動性能での効果や変化に期待して実施すべき改造である筈です。メーカー純正ホイールは純正のサスセッティングと合わせて最良な性能を発揮するように設計されています。そのため、社外品のアイテムには、一般道の走行では細かいセッティングを必要としない、運動性能の追及ではなく、スタイリッシュで汎用性を狙っただけの製品も商品として流通しています。

 また、軽量ホイールの弱点である「直進安定性の低下」を防ぐのに、ホイールのリム幅をワイド化するという手段もあります。この場合、フレームやスイングアームとの干渉の問題だけでなく、旋回性能とのバランスもあるため、見た目の良さだけで安易に交換してしまうことは避け、プロショップなどでセッティングも含めた綿密な相談を専門家と行ってから実施するようにしましょう。

【了】

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