潰れて守る! 自転車とバイクの両方で「頭を守る」カブト流安全理論とヘルメットの選び方

自転車用もバイク用も、用途は同じ「頭を守ること」なはずのヘルメットですが、様々な形状や価格帯、デザインのものが数多くラインナップされています。いったい、何を基準に選べばいいのでしょうか。そもそも、自転車用とバイク用ヘルメットは、何故まったく違うのでしょうか。

なぜ違う? 「頭を守る」自転車用とバイク用ヘルメット

 自転車とバイク用ヘのルメットの形状は、それぞれまったく違います。動力がエンジンか人力かなどの違いはあるものの同じ2輪車な上に、道路交通法でも車両に分類されているにも関わらず、頭を守るためのヘルメット形状がまったく違うのは、いったいなぜなのでしょうか。また、数多くラインナップされているヘルメットのなかから、何を基準に自分に合った商品を選べばいいのでしょうか。

 バイクと自転車用ヘルメットの両方で、日本の市場を牽引する「オージーケーカブト」に、聞いてみました。

開発部 企画・広報課 主任の柿山昌範さん

 答えてくれたのは、同社開発部で、企画・広報を担当する柿山さんです。

―――自転車用とバイク用ヘルメットの両方をラインナップすることで、なにかメリットはありますか?
 
 最近の自転車用ヘルメットでシールド付きのものを見かけたことはありませんか? Kabutoではトライアスロン用などにすでにラインナップはしていましたが、オートバイ用のシールドのノウハウを、そのまま自転車用ヘルメットのシールド製作に活かしたり、例えば赤ちゃん用の自転車ヘルメットは内装が洗えるようにしなきゃいけないということで制菌加工素材とタイアップし、それを同時にバイク用のヘルメットにも採用したり。バイク用のノウハウを自転車用に、自転車用のノウハウをバイク用にと、ふたつのカテゴリでやり取りしながら、製品の開発ができる点です。

 とくに弊社では、コンマ単位で争う自転車用ヘルメットの空気力学を追求してきた歴史があって、そこからもバイク用ヘルメットに繋がっています。

 バイク用ヘルメットの新製品「SHUMA」のベンチレーションにも、空気を操るノウハウは活かされています。例えばクルマのデフロスターのように、空気がシールドの内側の面をしっかり上に流れるように作っていて、口元からは顎下に流れていく状態にするなど、形状を工夫することで空気が直接目に当たらない構造となっています。

 そのため、風がめちゃくちゃ入ってかぶり心地は快適なのに、目に直接当たる量は少なく、キレイに通り抜けていくという製品になっているんです。しかもユーザーが3年ごとに買い替えやすくと考え、価格はかなり頑張って比較的抑えました。

オージケーカブトの最新モデル「SHUMA」

―――バイク用ヘルメットは、値段によって安全性の違いはありますか?

 基本的には値段による安全性の違いはありません。値段の違いは、どういう用途に使うかによっての快適性やデザインなど、特性や機能の部分での差が大きいです。だから、値段の差は安全性ではなく、軽さや涼しさ、空力など、特性の部分、そして実質的なパーツ、シールドやベンチレーション機構、その数やインナーサンシェードのあるなしなど、おもに機能面の差と考えて頂いて問題はありません。

 基本的に自転車用・バイク用に限らず、ヘルメットついては安全性を担保する規格があって、その試験に合格をしないと市場には出せないので、安全性が値段で左右されることは無いんです。

 とは言っても、すべてのヘルメットが一律の安全性という訳ではなく、その製品の用途や販売する市場に応じてどの規格に合わせるかは変わってくるので、厳密にいうと製品ごとに付いている安全規格のマークごとに一律となります。

オージーケーカブト製のヘルメットに備えられたPCSマークやSGマーク。レーシングモデルでは、さらにMFJ規格公認やFIM規格公認などのマークが付けられています

 例えば、レーシングモデルとツーリングモデルの場合、レーシングモデルはサーキットで使うとなると300㎞/hで走ることもデフォルトで想定するので、内装、チークパッドなどの密着度を最初から上げておいた方が良いし、一般公道が前提のツーリング用モデルの場合は、内装をややゆったりめに作っておくというように、用途に合わせて内装の素材やチューニングが変わってきます。

 そして、基本的に弊社の製品は、PCSマークやSGマークが付いているのですが、レーシングモデルでは、さらにMFJ規格公認やFIM規格公認などのマークが付けられており、その安全規格に適合する安全性を持つヘルメットとなっているのです。
 
 そのため、製品をかぶり比べてみると重量や通気性に差を感じたり、値段や前提の用途によってかぶり心地は大きく変わることもあるので、どこで使うのかを考えて、自分に合ったモノを選んで頂ければと思います。

用途にあわせ、様々な仕様のヘルメットを用意するオージーケーカブト

―――ヘルメットの安全性についての考え方は、自転車用とバイク用に違いはあるのですか?

 ヘルメットはおおまかに言うとシェルと衝撃吸収ライナー、それにあごひもで構成されています。衝突による外部から加わる衝撃を、まず外殻であるシェル部分が受け止め、衝撃吸収ライナーで吸収する、という考え方において基本的には同じです。メーカーによって安全性についての考え方は色々とありますが、弊社は簡単にいうと、そのシェルとライナーのどちらもが衝撃を吸収しながらうまく潰れるように設計して、脳にできるだけ衝撃を与えないように考えています。

オージーケーカブトの製品はシェルとライナーのどちらもが衝撃を吸収しながらうまく潰れるように設計。脳にできるだけ衝撃を与えないように考えられています

―――同じ安全性の考え方で作っているのに、自転車用ヘルメットにはフルフェイスが無いのは、なぜですか?

 ヘルメットはそもそも競技から始まっていて、MTBダウンヒルやBMXレーシング用にフルフェイスは存在しますが、自転車ロードレースではヘルメット自体、例えば100年以上歴史のあるツール・ド・フランスで着用し始めてまだ16~17年くらい。身体能力、運動パフォーマンスを損ねてもいけないので安全面と運動性の折り合いをつけている、と言えばいいでしょうか。
 
 ただ一般公道で言えば交通事故総合分析センターが発表した自転車事故による死亡数の割合は、ヘルメットをかぶっている場合4分の1に減るというデータもでています。自転車事故での死亡原因の7割ちかくは頭部損傷によるものなので、直接命を守るという意味で自転車ヘルメットはやはりできるだけ着用して欲しいですね。フルフェイスでなくても(笑)。

 ちなみに、バイク事故での死亡原因は胸部へのダメージによるものが大半を占めています。つまりヘルメットが頭部の保護にかなり貢献している、といえるようです。

自転車用ヘルメットにおいては国内シェアNo.1のオージーケーカブト。自転車競技の日本代表チームも仕様するなど、その性能、安全性は折り紙付きといえます

※ ※ ※

 世界的に見ても数少ない、バイク用と自転車用、両方のヘルメット開発を手掛けるメーカー「オージーケーカブト」。ふたつの2輪カテゴリのヘルメットを同時に開発することで、低速域から高速域まで両方のメリットを生かした様々な製品を世に送り出し続けています。
 
 そんな同社が教えてくれた安全性についての考え方や、製品価格の違いの意味。それらが明確になるだけで、自分に合ったヘルメットが選びやすくなったのではないでしょうか。
 
 用途に合ったヘルメットをGETして、安全で楽しいバイク&自転車ライフを送りましょう。

【了】

【画像】自転車とバイク、両方で頭を守るオージーケーカブトのヘルメットを画像で見る(11枚)

画像ギャラリー

最新記事