ベネリ「レオンチーノ250」 柔軟にして従順な、単気筒オールラウンダー

イタリア生まれの老舗バイクブランド「ベネリ」から、往年のモデル名を冠した「レオンチーノ250」が日本でも販売開始されました。どのようなバイクなのでしょうか。試乗しました。

往年の名車の再現……ではない?

 日本市場の本格的な開拓はこれからですが、近年の「Benelli motorcycle(ベネリ・モーターサイクル)」(以下、ベネリ)はさまざまなジャンルのバイクを手がけています。では現在の同社を代表するモデルは何かと言うと、2021年から日本に導入される排気量250ccクラスのモデルに加えて、海外では3種の500ccと2種の800ccが販売されている「LEONCINO(レオンチーノ)」でしょう(以前は125ccも存在しました)。

ベネリ「レオンチーノ250」に試乗する筆者(中村友彦)

 イタリア語で「小さなライオン」を意味する「レオンチーノ」は、トライアンフにとっての「ボンネビル」、BMW Motorradにとっての「GS」に相当する重要な車名で、1950年代から1960年代に販売された元祖「レオンチーノ」は、ベネリの屋台骨を支える存在でした。

 もっとも現代の「レオンチーノ」は、往年の名車を再現したモデルではありません。かつての「レオンチーノ」は、排気量が125ccと150ccのライトウェイトシングルで、デビュー当初は公道レースの「モトジロ・デ・イタリア」や「ミラノ・ターラント」で大活躍しましたが、現代の「レオンチーノ」にそういった資質は期待できないでしょう。

 ただし、かつての「レオンチーノ」に、エンジン腰上を除く多くの部品を共有する2サイクルと4サイクル仕様、スポーツモデルに加えてツアラーや3輪車、スクランブラーなどが存在したことを考えると、そもそも「レオンチーノ」の構成やスタイルに、明確な定義はないような気もします。

現代的でありながら、レトロな雰囲気

 ベネリ自身はスクランブラーというカテゴリーに分類していますが、ロードバイク然とした足まわりから察すると、現実の市場で「レオンチーノ250」のライバルになるのは、ホンダ「CB250R」やスズキ「ジクサー250」、KTM「250デューク」、ハスクバーナ「スヴァルトピレン250」など、単気筒を搭載するネイキッドモデルでしょう。もちろんエンジン形式は異なりますが、ヤマハ「MT-25」やカワサキ「Z250」なども、競合車になり得るモデルです。

独創的なルックスのベネリ「レオンチーノ250」

 そしてそれらと比較した場合、「レオンチーノ」のわかりやすい美点は独創的なルックス……ではないかと思います。現代的でありながら、どことなくレトロな雰囲気を感じるデザインは、250ccネイキッドに限らず、既存のどんなオートバイとも似ていないのですから。

 もっとも、スペックに注目すると25.8psの最高出力はライバル勢にやや劣り、162kgの車重はライバル勢より重いのですが、今回の試乗で初めてこのバイクを体験した私(筆者:中村友彦)は、動力性能は必要にして十分と感じました。

常用域で感じる操る手応え

「レオンチーノ250」の試乗を開始して、私が最初に感心したのはエンジンです。開け始めのトルクはなかなかに太く、歯切れの良い排気音を奏でながら、車体をグングン前に進めてくれますし、その気になってスロットルを大きく開ければ、10000rpmのレブリミットまでスムーズに回転が上昇します。

排気量249ccの水冷単気筒DOHC4バルブエンジンを搭載

 前述したライバル勢と比較するなら、デュークやスヴァルトピレンほどアグレッシブではなく、CBやジクサーよりは抑揚に富んだフィーリングで、この特性ならシングル特有の軽快で実直な資質を味わいつつ、どんな場面にも柔軟に対応できそうです。

 なおエンジンに関して、私が意外と感じたのはボア×ストロークです。72×61.2mmというレオンチーノの数値は、72×61.1mmのデュークやスヴァルトピレンとほぼ同じですが、実際のフィーリングは、レオンチーノは低中回転域重視、デュークやスヴァルトピレンは中高回転域重視で、街乗りではレオンチーノに軍配が上がりそうです。

 ちなみに日本車の数値は、CBが76×55mm、ジクサーが76×54.9mmですが、海外勢よりショートストロークでも、この2機種は高回転域に特化した特性ではありません。そのあたりを考えると、かつてはエンジンのキャラクターを決定すると言われたボア×ストロークは、現在の250ccクラスでは、あまり重要ではないようです。

 続いては車体に関する話で、こちらもエンジンと同様に至って従順でした。もっとも、コーナー進入時のバンキングは意外に穏やかで、前後サスペンションはちょっと硬めですが、フロントブレーキタッチがわかりやすく、スロットルを開けた際にリアから伝わるトラクションがハッキリしているので、乗り手としては自信を持っていろいろなアクションを起こせます。なお試乗車はメッツラーの一世代前となるスポーツタイヤ「M5」を履いていましたが、これを最新の「M7RR」、あるいは、同じメッツラーでツーリング指向の「ロードテック01」に変更すれば、現状より上質なハンドリングが味わえるでしょう。

ベネリ「レオンチーノ250」

 ところで、近年の250ccネイキッドでワインディングロードを走っていると、私はエンジン回転数を制御するレブリミッターの作動に遭遇する機会が多いのですが、今回は確認のための1度だけでした。その事実をどう感じるかは人それぞれですが、ムキになって飛ばさなくても、常識的なペースで充実感が得られる「レオンチーノ250」に、今の私はかなりの好感を抱いています。

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 ベネリ「レオンチーノ250」の価格(消費税10%込み)は54万8900円で製造国は中国です。日本では「PLOT」が輸入元となっています。

【了】

【画像】ベネリ「レオンチーノ250」の詳細を見る(12枚)

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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