スズキのスーパーキャリイ用、ヨシムラ「Slip-On Oval サイクロンマフラー」について聞く!

バイク用の高性能マフラーを開発・販売するヨシムラ。実はスズキの「スーパーキャリイ」用マフラーも開発し、販売しています。あまりに気になるので、神奈川県にあるヨシムラの本社にジャーナリストの伊丹孝裕さんが真相を突き止めに行きます。

ヨシムラ製マフラーを装着した「スーパーキャリイ」について聞いた

 ヨシムラの「サイクロン」と言えば、高性能・高品質・レギュレーション対応を謳うリプレイスマフラーの代名詞です。国産4メーカーはもちろん、BMWやKTMといった海外メーカー向けの製品も多数ラインナップしているわけですが、実は4輪用のマフラーもあるって知ってました? しかも、その対象モデルがスズキの「スーパーキャリイ」。 そう、いわゆる軽トラックで、もはやこれだけでツカミはバッチリ! あまりに気になるので、神奈川県愛甲郡愛川町にあるヨシムラジャパン本社に行ってきました。

ヨシムラ製マフラーを装着した「スーパーキャリイ」が待っていた

 ヨシムラに到着すると、シルバーのスーパーキャリイが待っていました。今にも雨が降り出しそうな生憎の天候にもかかわらず、ボディも内装もピッカピカに磨かれています。「4輪の取材なんてめったにありませんからバッチリきれいにしておきました!」と広報担当も前のめり。早速、お話を伺ってみましょう。

——そもそも、なぜ4輪用のマフラーを作ることになったのでしょう?

「あまり知られていないかもしれませんが、ヨシムラと4輪とのかかわりは60年代にまでさかのぼります。創業者である吉村秀雄がチューニングしたホンダS600/800はレースで活躍していましたし、エキゾーストパイプを1本にまとめる集合管は、航空機関士でもあったPOP吉村が飛行機や自動車のエンジンからヒントを得て軽量化と排気効率を考えてオートバイのマフラーに応用したと聞いています。1971年、世界で初めてヨシムラ がバイクレースで集合管を使いました。」

——なるほど。そういえば以前、ケーターハムのスーパーセブンにヨシムラのマフラーが装着されているのを見たことがあります。

「あくまでも2輪がメインなっていますが、近年、ダカールラリーに参戦するトラック「日野レンジャー」のパーツでも技術協力しています」

ダカールラリーに参戦している日野レンジャーのマフラーやカムの設計に関わっているヨシムラ(写真:日野自動車株式会社)

――駐車場にジムニーが置いてありました。バンパーの下を覗くと、そこにもヨシムラのロゴが見えましたが?

「そうなんです。あれはジムニーの専門ショップ・APIOさんから発売しているマフラーで、コラボレーションが実現したものです。ストリート用だけでなく、海外ラリーでも弊社製品をご使用頂くなど、おかげさまでご好評を頂いております」

――日野レンジャーはトラック、ジムニーはスズキ。そういう意味では、まったくかけ離れているわけでもないでしょうが、だからと言って「そうだ、スズキの軽トラック用マフラーを作ろう!」とはなりませんよね?

「確かにそうですね(笑) 最初はスズキのグループ会社からの依頼でした。軽トラックのカスタムが流行り始めていたようで、中にはサーキット走行を楽しんでいる人もいるとか。だったらヨシムラでもなにかできませんか? と相談されたことがきっかけです。ちょうどその頃、キャリイが13年振りのフルモデルチェンジを受けて新型に切り換わったタイミングでもあり、まずは弊社の得意分野でもあるマフラーを開発してみよう、ということになりました」

――なるほど。現行のキャリイが登場したのが、2013年9月のこと。この「Slip-On Ovalサイクロン」が発売されたのは、いつのことですか?

「その翌年、2014年4月のことです。でも、最初はエイプリルフールのネタだと思われたらしく、誰も信じてくれませんでしたね。ところが徐々に認知され、結果的にかなりの反響を頂きました」

キャリイ用「Slip-On Ovalサイクロン」は、発売当初ヨシムラのエイプリルフールのネタだと思われていた

——お客様の反応は良かったという事ですね?

「おかげさまで鈴鹿8耐のヨシムラ参戦ニュースに負けない反応になりました」

――軽トラックはモデルチェンジのサイクルが長く、キャリイの年間販売台数目標は5万台以上。マーケットの規模はかなりものですね。

「基本的には仕事の道具ですから、カスタムを楽しまれるユーザーがどれくらいいらっしゃるかは未知数です。とはいえ、オーダーはコンスタントに頂戴していますし、特にこの数年で大きかったのは、派生モデルとして「スーパーキャリイ」が発売されたことですね。これによって利便性と快適性が格段に向上。趣味クルマとして乗られる方が一気に増えました」

スーパーキャリイのオーナーでもある筆者(伊丹孝裕)

――それには100%納得です! 実際、僕はスーパーキャリイのオーナーですが、購入の決め手がまさにそこ。室内空間がキャリイと比較して大幅に広がり、荷物の収納力が比較にならないだけでなく、シートもリクライニングできて長距離移動も楽々。もちろん、そのぶん荷台は狭くなりましたが、リッタースーパースポーツ程度なら余裕で積載できる頼もしさがメリットです。スーパーキャリイにGSX-Rを載せて、その両方にヨシムラのマフラーが装着されていたら、絵的にかなりいいですね(笑)

「ぜひ、お願いします。弊社としても、こうして開発車両を持っているわけですから、新しいパーツに挑戦していきたいと思っています。なにはともあれ、今日はまずマフラーの性能をご体感ください」

スーパーキャリイのオーナーである筆者が、ヨシムラ「Slip-On Ovalサイクロン」装着車に試乗します

――ありがとうございます。それでは行ってきます!

ヨシムラSlip-On Oval サイクロンマフラー【オンラインショップ限定品】
https://shop.yoshimura-jp.com/syouhin/syousai.php?id=20093

【了】

【画像】ヨシムラ「Slip-On Ovalサイクロン」を見る(9枚)

画像ギャラリー

Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。鈴鹿8耐、マン島TT、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムといった国内外のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

最新記事