梅雨の季節に思い出す、タイ王国のバイクのある風景 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.101~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、梅雨の季節になると異国の地、タイ王国でのバイクがある風景を思い出すと言います。どういうことなのでしょうか?

バイクが庶民の移動手段として活躍している国

 微笑みの国、タイ王国はバイク天国である。自動車は関税が高く、恵まれた富裕層の乗り物だから、庶民の多くはバイクを利用する。日本メーカーの現地法人もあり、ホンダのバイクはまるで国民車であるかのように人気の的だ。

タイ王国では都市部でも郊外の山奥でも、バイクが庶民の移動手段として活躍している

 けして裕福ではない現地の若者はバイクに乗り、バイクを大切にしている。東南アジア各国の例にならって、トラックや乗用車をあまりきれいに乗っているようには見受けられないし、解体寸前のクルマが往来しているのだが、バイクに対する愛情は格段に増しているようで、泥だらけのバイクを見かけることが少なく思えるのだ。

 かといって頻繁に洗車をしているとは思えない。日本のバイク乗りのように、高品質なカーケア用品「シュアラスター」の消費を競うほどピカピカに磨いている場面を見かけることはない。だというのに、バイクはそれほど汚くはないのである(ボロボロであることは多いが)。

 ひとつ合点がいくのは、スコールがあることだ。雨季ともなれば、一日に数度は激しい豪雨に見舞われ、雨宿りしていると数分でピタリと止む。郊外に行けば道は荒れているし、泥道も少なくない。そんな環境でスコールに見舞われるのだから、バイクがドロドロになるのも納得なのだが、それは同時に、天然シャワーでキレイさっぱり泥が落ちるということでもある。

 さらに、バイク専用の洗車場を発見したことがある。生活環境があまり良好とは思えない地方の村を通過した時のこと、若者がバイクでたむろしているから、何か集まりでもあるのかと覗いてみたら、そこは浅瀬の川だった。そこにバイクをつけている。大人の膝頭ほどの水深に、バイクをスタンドアップ。ジャバジャバと水洗いをしていたのだ。

 ジャマイカを旅していた時、河原を利用した自動車の洗車場を目にしたことがある。だがタイではそれがバイクに変わっていた。

「錆びないのかなぁ」なんて心配したけれど、そもそも塩水ではないし、スコールが少なくないわけで、河原で洗ったところで錆が進む大きな原因ということはないだろう。

 日本も今は梅雨の季節。近年は雨の降り方が暴力的のように思えるが、雨を見ると、異国の地で日本とは違うバイクの姿を思い出してしまう。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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